ワイズカンパニー 第1章 知識から知恵へ
こんにちは。
さて、今回から野中郁次郎氏/竹内弘高氏のワイズカンパニーを読んでいきたいと思います。
この本は、25年前に発表された名著「知識創造企業」の続編と位置づけられています。本書のまえがきに「橋を架ける者」という詩とともに、「若い研究者やマネージャーにわれわれが架けた橋を渡って、どこまでも知識、そして知恵を追求してほしい」と書かれています。まえがきから、野中先生は本書を研究の集大成と位置付けられているようです。まだまだこれからも刺激を与えてくれる研究を期待しておりますが、野中先生の研究の愛読者としては心して読まなくてはと思いました。
ちなみに、先日は、共感経営を読みました。
野中先生は80歳を超えられても、SECIモデルを追求、進化させて現場を回り続けて経営者との「知的コンバット」を続けられていると伺いました。それだけに非常にアカデミックであるにも関わらず、実務の世界にいる私にとっても理解しやすく明日からの仕事への取りにも刺激を与えてくれます。あらゆるビジネスに関わる方におすすめしたいです。
今回は、第1章の内容と考察を行なっていきたいと思います。
本書の全体としての課題
まず、世界が知識を活用できていない3つの大きな問題点が指摘されます。
① 正しい知識が活用されていない。数値的データといった形式知頼み。
② 未来を創ろうとしていない。どういう未来を創造したいのかがわかっていない。
③ 時代にふさわしいリーダー=賢明な変革者を育成していない
この3つの問題を解決するために、
❶ 知恵
❷フロネシス(実践知)
❸「場」
❹持続的なイノベーション
❺社会的なSECIスパイラル
を促進して、よりよい未来を構築していくべきだと本書で論じられます。
ここのキーワード❷フロネシス(実践知)とは、型式知と暗黙知の間にあるもので、現場の環境における「いま、ここ」での実践から得られた知識のことで、そこから新しい暗黙知が生まれます。
❺これまでのSECIにスパイラルが付けました。本書のフォーカスである持続性です。
より良い未来を構築する=長期的に生き残れる企業とは、
・ライバルには築けない未来を築ける
・顧客に競合企業よりも大きな価値を提供できる
・社会と調和できる
・道徳的な目的意識を持っている
・生き方として共通善を追求する
持続的なイノベーション
どんなに革新的なイノベーションも時間が経てばありふれたものとなります。長期的に繁栄するには絶えずイノベーションを起こさなくてはなりません。そのような持続的なイノベーションを実現している企業のモデルとして上げられているのがホンダです。
本書では、創業者の本田宗一郎と小型ジェット機「ホンダジェット」(表紙写真)を開発した藤野道格の2名を取り上げています。創業以来何度もイノベーションを成し遂げたまさにエンジンとも言える本田宗一郎氏と、宗一郎氏の夢でもあった飛行機開発を達成した藤野氏。性格的にはかなり両極端ですが、二人にはイノベーションを起こす上で共通点があると指摘しています。その共通点とは、
1. 物事を成し遂げるためには、直接的な経験と人と人との相互交流が重要であると信じている
2. 未来を築くことにこそテクノロジーの役割があると考えている
3. 自社のためでなく社会への貢献という高次の目的を持つリーダーである
宗一郎が掲げた三現主義(「現場」「現物」「現実」)。藤野氏はこの三現主義を実践し、歴史に残るホンダエアクラフトをデザインする組織を築きました。
2人が共通して持っていた夢「世界の住み心地を良くする」が、イノベーションの動機付けとなっています。
長期的な繁栄
ここでホンダの事例から得られた教訓として、以下の3つが上げられます。
1 使命、ビジョン、価値観を明確にする
自分たちの会社は何のためにあるのか(使命)、どういう未来を築きたいのか(ビジョン)、大事にしていること(信念)
2 知識を実践することの重要性
知識を実践するとは、今、持っている知識を活用せよ。ということです。現在、どういう行動を取るかで未来が築かれます。だから、未来の可能性を高められるように「今、ここ」を生きよというメッセージです。
3 リーダーシップの役割
リーダーは実践知を持たなくてはなりません。実践知とは、経験によって培われる暗黙知のことです。
ワイズリーダーとワイズカンパニー
組織の中でメンバーの知恵を育もうとする取り組みが絶え間なく続けられる人のことをワイズリーダーと呼びます。そして、知識を創造し、実践し、イノベーションを起こすのは人間であり、ワイズカンパニーには、知恵を育み、持続的なイノベーションを起こす社員がいます。
考察
第一章からかなり重い内容ですが学びもたくさんあります。実践知の重要性と未来を築くために「いま、ここ」に集中すること。これは、現在、現場で働くすべてのビジネスマンにとって自分たちの活動の重要性を認識する上で非常に大事な考え方だと思います。現場での「いま、ここ」にいるからこそ「知的コンバット」によって知識を創造し実践できるのだと言ってくれています。イノベーションは現場でおきるのです。
そして、経営者も現場で得られる知識を尊重し生かすことに取り組まなくては組織が連続的にイノベーションを起こすことなでできようはずもありません。
本書においていは、前著「知識創造企業」でやり残した3つ課題に取り組むと言われています。
1つ目は、知識創造と知識実践の隔たりを埋めること、
2つ目は、理論と実践の隔たりを埋めること、
3つ目は、SECI行き詰まり症候群に解決策を提案することです。
これから読み進めながらまとめていきますが、私自身非常に楽しみしながら読みそしてこちらに書かせてもらっています。
最後までお読みいただき有難うございました。