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新しい音楽頒布会Vol.14 ジャーマンシンフォニックメタル、北欧オルタナティブメタル、イタリアングラムロック、フィンランドポップ、USインディーロック、東欧プログレ
年末年始でしばらく滞っていたら新譜が溜まっていました。今回は6枚紹介します。英語4枚、フィンランド語1枚、英語とイタリア語が1枚。USからは一枚のみ、UKからはゼロで他は欧州各国から。それではどうぞ。
Beyond the Black/ Beyond the Black
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2014年にドイツのマンヘイムで結成されたビーストインブラック。シンフォニックメタルに分類されるバンドですが、ボーカルがガールズバンド(4人組のポップバンド、サフィール)出身のジェニファー・ハーベンを擁しているのが話題性。いわゆるゴリゴリのメタルボーカルではなく、それなりに力強いもののあくまで「ポップスの歌手出身」と言われたら納得できる歌唱力。歌心があるんですよね。本作はけっこうベタな作りで、欧州フォークメタルの語法(トラッドなメロディとグロウルっぽい男声ボーカルとクリーントーンの女性ボーカルの掛け合わせ)の王道なのですが、メロディが良質。ドイツのバンドってかっちりしているのが特徴で、メロディにしてもきちんと折り目正しく展開していくんですよね。先述のようにそこまで超絶ボーカルではないのでボーカルの音域も常識的な中で「歌心あるメロディ」が展開されます。ゴリゴリのエクストリームメタルではないけれど、メタル風味の良質な欧州ポップスといった作品。ギターやドラムのアタック、勇壮なコーラスはきちんとメタル的なエッジが立っています。5作目にしてセルフタイトルなのも「自分たちの音楽性が確立した」という自負故か。
Katatonia/Sky Void Of Stars
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スウェーデンのゴシック/オルタナティブメタルバンド、カタトニアの3年ぶり、12枚目のアルバム。変わらずダークでどこかメランコリックなメロディを届けてくれます。同じくスウェーデンのOpethの近作やSoenにも近い、初めて聴くのにすごくしっくりくるメロディ展開なんですよね。妙な懐かしさというか。その中ではKatatoniaはメタル色は薄目。オルタナティブロック感が強いというか、そこまでギターのエッジは立っていませんしドラムのアタックも強くありません。プログレッシブな展開もありますが極端な展開ではなく一定の酩酊感が続く。心地よい緊張感の中で流れていくドラマ。ジャケットの通り音像にもダークSF感があります。
Måneskin/Rush!
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イタリアから現れスターダムを駆け上がったマネスキンの世界デビュー作。けっこう先行シングルが切られていましたがついにアルバムがリリース。予想通りほぼ英語曲になっていますが3曲はイタリア語曲もあります。「新たなロック界のヒーロー」の待望論にこたえるような快作。レッチリやホワイトストライプスやアークティックモンキーズの若い頃のようなエネルギーがあります。シンプルなバンドサウンドでしっかり盛り上がりがあり、どの曲もキャラクターが立っているのは凄い。個人的にはイタリア語の曲のままで世界をとってほしかったですがまだ時期尚早でしたかね。マニアからは不評(RYMでは2点台)なのもむべなるかな。なんというかメタ化された「いかにもなハードロック」なんですよね。ハッタリ気味というか。だけれど、その虚飾の「ロックスター」をこれだけの純度で演じられる存在が2020年代に現れたことが驚き。ヘドバン誌でも表紙に抜擢、ということでメタル界隈からも「自分たちのバンド」感がある久しぶりのバンド。クィーンみたいに巨大になっていくポテンシャルを秘めています。
Litku Klemetti/Asiatonta oleskelua
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フィンランドの女性SSW。こちらのNote「2022年 フィンランド音楽のベストアルバム トップ20」で知ったアルバム。素晴らしいリストでした。こういう日本語web空間(どころか英語web空間にも)にほとんど情報がない音楽をDigる姿勢には感動を覚えます。感謝。
たびたびこのブログで書いていますが、一口に「北欧ポップス」と言っても各国には違いがあります。スウェーデンはけっこう洗練されていてABBAとか完成されたポップス。ノルウェーはちょっと暗黒的、アングラ。デンマークはスウェーデンとドイツ(かっちりしている)の中間。アイスランドは浮遊感がある。そしてフィンランドは人懐っこく個人的には一番好きなメロディセンスがある国だと思っています。人種的にフィンランドだけスラブ民族で、ロシアに近いんですよね。泣きのメロディなんだけれどどこかユーモラスというか、不思議なセンス。同じものをフランスのミシェルポルナレフにも時々感じます。ほかのフランスの歌手からはあまり感じないのですが。そんなフィンランドメロディの粋を感じた作品。もっと多くの人に聞いてみてほしい。
Guided By Voices/La La Land
1984年から活動するUSインディーロック界の老舗、ガイデッドバイヴォイシズの新譜。とにかく多作なバンドで、フランクザッパやキングギザードアンドリザードウィザードみたいにどんどんアルバムをリリースしています。中心人物のロバートポラードだけが固定メンバーで、彼がソングライター。曲が湧き出てくるんでしょう。ワイルドハーツのジンジャーにも近いのかも。XTCのようなひねくれたポップセンスにUSらしいおおらかさ、USインディーズ感が加味されてそこまで肩肘張らずに聞ける良作に。こういうベテランの技は聴いていて心地よいですね。1曲1曲が短めでどんどん展開していくのも好印象。
Riverside/ID.Entity
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ポーランドで2001年に結成されたプログレッシブロックバンド、リバーサイドの5年ぶり8枚目のアルバム。7曲ながら全53分。軽やかに舞うマリリオンを想起させ、空間の広がりはRushを想起させます。13分にも及ぶ「The Place Where I Belong」は美しいドラマ。エネルギッシュな曲も収められており、ロック的な醍醐味も十分。プログレッシブ「メタル」ではない、プログレッシブロックの良作です。
以上、今週のおススメアルバム6枚でした。それでは良いミュージックライフを。
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