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USハードロックの王道、tremonti / The End Will Show Us How

マーク・トレモンティのソロプロジェクト、tremontiの新譜が出ました。tremontiのバイオはこちら。

Tremonti(トレモンティ)は、アメリカのロックバンド「Alter Bridge」や「Creed」のギタリスト、マーク・トレモンティ(Mark Tremonti)が率いるソロプロジェクトの名前です。彼の名を冠したこのプロジェクトでは、彼がメインボーカルを務め、これまでのバンド活動とは異なる音楽性やクリエイティブな表現が特徴です。

Tremontiの特徴
1. 音楽スタイル
• 力強いリフ、キャッチーなメロディ、そして彼自身の情熱的なボーカルが特徴。
• Alter BridgeやCreedよりもヘヴィでアグレッシブな音楽性を追求。
2. バンドメンバー
• マーク・トレモンティ(Mark Tremonti):ボーカル&リードギター
• エリック・フリードマン(Eric Friedman):ギター&ベース
• ライアン・ベネット(Ryan Bennett):ドラム

マーク・トレモンティについて

マーク・トレモンティは、グラミー賞を受賞した経験を持つギタリストで、彼の卓越したギタープレイは世界的に評価されています。また、Tremontiのプロジェクトを通じて、彼の音楽的なビジョンや多様性をファンに届けています。

CreedはUSで大人気だったバンドで、彼らのセカンドアルバム「Human Cry(1999)」はUSだけで1100万枚を売り上げる大ヒット。ポストグランジ世代のロックバンドを代表する存在です。作曲はトレモンティが主体ですが、トレモンティはCreedではギタリスト。ボーカリストはスコット・スタンプで作詞は全てスタンプ。スタンプは敬虔なクリスチャンで歌詞は宗教、信仰的なテーマが多かったのが特徴です。

アメリカにはCCM(Contemporary Christian Music)と呼ばれるジャンルがあり、いわゆるクリスチャンメタルなんかもここに入ります。伝統的なゴスペルや讃美歌ではなくポップ、フォーク、ロック、メタルなどの要素を取り入れたものがこう呼ばれる。Creedも当初は歌詞のテーマからCCMとして扱われたもののバンド自身は「ボーカリストはクリスチャンだけどバンドメンバー全員がクリスチャンというわけではないし、バンドとしてキリスト教の教えをテーマにしているわけではない」と否定。これ、エヴァネッセンスも同じことを言っていましたね。意外とUS音楽シーンにおいてCCMは存在が大きい。

で、なぜかCreedはそれだけビッグバンドながら日本では全然知名度がない気がします。あと、音楽マニアからの評価が妙に低い。RYMのレビューとかかなり低評価です。

これ、90年代後半から00年代頭に出てきたポストグランジバンド全般に言えるんですよね。当時のロックシーンのある意味王道というか、一番売れていたバンド達だったのに評価が低い。Linkin Parkだってレビューは基本的に低いです。Creed、Nickelback、3 Doors Down、Matchbox Twentyとか、みな500万枚以上USでセールスを挙げていますが日本での知名度がかなり低い気がします。

でも、改めて聴くとCreedやNickelbackってUSハードロックの王道の進化系だったと思うんですよね。音楽マニアの評価が低い理由は「それほど新規性がないから」だと思われます。すでに出来上がった型、グランジっぽいサウンドに、なんかキャッチーな歌メロが載っているからで、新しいサウンドを生み出したわけではない。CreedがRYMで評価されない理由は次の通りです。

Creedが音楽マニアや一部の批評家から低評価を受けることがある理由は、主に以下の要素が絡み合っていると考えられます。特に、音楽マニアが集まるサイト(例:Rate Your Music, RYM)では、そうした批判が顕著です。

1. 商業的成功と「オーバーエクスポージャー」
• Creedは1990年代後半から2000年代初頭にかけて、爆発的な商業的成功を収めました。一部の音楽マニアにとって、過度に露出するバンドは「大衆向けで薄っぺらい」と見られることがあります。

2. 歌詞の内容と真剣さ
• Creedの歌詞は、スピリチュアルで哲学的なテーマを扱うことが多く、これを魅力と感じる人もいれば、「自己陶酔的」や「説教臭い」と感じる人もいて、特に音楽マニアには嫌われやすいです。

3. スコット・スタップのボーカルスタイル
• ボーカリストのスコット・スタップの低音でドラマチックな歌い方(特に「喉を絞るような声」や「張り詰めたトーン」)は、Creedの象徴的な特徴ですが、時にパロディの対象にされることがあり、批評家や音楽マニアの間で「わざとらしい」と揶揄されることもあります。

4. ポストグランジのジャンル的な偏見
• ポストグランジは、グランジ(例:Nirvana, Pearl Jam)の影響を受けた音楽スタイルですが、より大衆的で商業化されたサウンドが特徴です。そのため、「オリジナルのグランジに比べて薄っぺらい」「個性がない」といった批判を受けがちです。Creedはポストグランジの代表的なバンドの一つと見なされており、このジャンル自体への偏見が評価の低さにつながっている可能性があります。

5. バンドのイメージとスコット・スタップのトラブル
• Creedは「クリスチャンバンド」と誤解されることが多く、特定の宗教的メッセージを押し付けているように感じる人がいます(バンド自体はこれを否定しています)。また、スコット・スタップはバンドの成功後に薬物依存やトラブルを抱え、一部のファンや批評家から「偽善的」と見なされる要因になりました。

6. 音楽の革新性への疑問
• 音楽マニアの間では、バンドの「革新性」や「芸術性」が高く評価される傾向があります。Creedの音楽は、NirvanaやAlice in Chainsなどの先駆的なバンドと比較すると、「既存のスタイルを繰り返しているだけ」という批判を受けることがあります。

「売れ過ぎた」と言うのもありますね。日本のB’zみたいな扱いかも。ちなみに音楽的にもB’zも2000年代はポストグランジに近かった気がします。いずれにせよ、CreedはUSハードロックの王道にいたバンドでした。解散しましたが再結成したり断続的に活動中。

Creed解散後、トレモンティが組んだバンドがAlter Bridgeでこちらはボーカルがマイルズ・ケネディ。ガンズのSlashのソロプロジェクトにも参加していますね。Alter Beidgeでもコンスタントに活動しながら、ソロ活動もしているのがtremonti。一応バンド扱いですがここではギターだけでなくボーカルも兼任していて、フロントマンとして活動しています。Alter Bridgeに比べるとtremontiの方がギターが前面に出ていますね。

この人の作る歌メロやギターは正に王道というか、90年代のUSハードロックをそのまま少しづつ進化、拡張させたような音なんですよね。多作なのも才能の証。tremonti、Alter Bridge、Nickelbackはもっと日本で人気が出てもいい気がします。目新しさはないけれど売れた、それはつまり単純に曲がいい、分かりやすいからで、分かりやすい歌メロと歌うギターソロがある、いわゆる90年代に日本独自の市場を作った「日本人好みのサウンド」だと思います。90年代USハードロックが好きで未聴の方はぜひ。

他にもShinedown、(最近の)Nickelbackも「王道洋楽ハードロック」感があってオススメです。

なお、ポストグランジがなぜ日本で知名度を得られなかったか。興味がある方は下に載せておきます。個人的には、ポストグランジ時代がいわゆるJ-ROCK確立期にあたり、そこで邦楽ロックが洋楽ロックのある程度の影響下から別の分化を遂げたタイミングだと思っています。

ポストグランジが日本で受け入れられなかった理由について、当時の邦楽ロックのトレンドや日本独自の音楽文化の発展の流れを踏まえて考えると、以下の要因が挙げられます。

1. 邦楽ロックのトレンドと洋楽の影響

1990年代後半から2000年代初頭の日本の音楽シーンでは、以下のようなトレンドが見られました。

邦楽ロックの主流
• J-POPとロックの融合: 例えば、Mr.Children、GLAY、L’Arc〜en〜Cielなどが活躍しており、ロックバンドでもキャッチーでメロディアスな楽曲が求められていました。
• ビジュアル系の隆盛: X JAPANやLUNA SEAを中心に、視覚的な要素と感情的な表現が重視される「ビジュアル系」が人気でした。
• インディーズ・ロックの台頭: ELLEGARDENやASIAN KUNG-FU GENERATIONのような、青春感や日本独自のポップ感覚を持つロックが支持を得ていました。

これらの音楽は、キャッチーなメロディや感情表現を重視しており、アメリカのポストグランジが持つ「深刻なトーン」や「スピリチュアルなテーマ」とは異なる方向性を持っていました。

洋楽ロックの影響
• 当時の日本では、洋楽ロックのトレンドとしてはオルタナティブロック(Nirvana、Radiohead)やニューメタル(Linkin Park、Limp Bizkit)の影響が強く、ポストグランジよりも実験的で独自性のあるスタイルが好まれていました。

2. ポストグランジの商業的性質

ポストグランジは、グランジのエッジや反骨精神を薄め、より洗練された大衆向けのサウンドに進化したジャンルです。この商業的なアプローチが、以下のように日本での受け入れに影響を与えました。
• 日本では、洋楽ロックに対して「アーティスティックで個性的」というイメージが強く求められるため、ポストグランジの「商業ロック」的な印象がネガティブに捉えられることがありました。
• また、歌詞の内容がスピリチュアルや宗教的要素を含むことが多く、日本のリスナーにとっては感情移入が難しかった可能性があります。

今改めて聴くと、ポストグランジにUSハードロックの進化を感じるのは面白いですね。20年の月日が経って客観性が持てるようになったのか。なお、ポストグランジ、ニューメタル(どちらも1990年後半から2000年代初頭)以降、USでも大きなハードロックのムーブメントは起こっていません。オルタナティブハードロック(shinedownなど)、メタルコア/ポストハードコア(Avenged Sevenfoldなど)、ジェント/モダンメタル(Peripheryなど)、アリーナロックの復権(Foo Fightersなど)はありますが、500万枚、あるい数億ストリーミングに届くような大きなヒットはハードロック界からは出てきていない。そろそろ次世代のスターが複数生まれるような大きなムーブメントが起きると面白いのですが。日本から生まれたりすると面白いなぁ。K-POPの次はJ-ROCKだったら胸熱。

それでは良いミュージックライフを。

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