音ゲー好き女性が選んだメタル10曲
「非メタラーに選んでもらったメタル10曲」3回目です。過去の連載はこちら。今回は下記の手順で選んでもらいました。
1.最初に10曲ほどメタル曲を聴いてもらって「これなら聴ける、好き!」という曲を選んでもらう。
2.「好き」と言った曲に雰囲気が近い曲を40~50曲ほど選んで聞いてもらい、「好き!」といってくれる曲を集める。
3.集まった曲の中から10曲に絞る。
今回のゲストは音ゲー好きの女性です。下記のようなプロフィールに近い方にメタル入門として聞いていただき、好みを探るプレイリストとして活用していただければ幸いです。
ゲストプロフィール:アラサー、女性
・日頃メタルは聴かないし、アーティスト名は知らない。
・コナミの音ゲー(ギタフリなど)が好き。ゲーム音楽でハードなものやヘヴィなものがあるので耳は慣れている。
・好きなアーティストはあさき(ゲームミュージッククリエイター)
今回は、基本的にメタル耳なので選ぶのは楽でした。むしろ気に入ってくれた曲が多かったので絞るのに頭を使うぐらいでした。ただ、その中でも好みというのは出てきますね。今回はゲスト2名をまとめてセッションしたのですが、2名ともそこそこメタル好きながら好きな曲が分かれました。もう1名の分は第4回「TM Network好き男性が選んだメタル10曲」で公開中です。
基本、ゲームミュージックやアニメソング的な曲が好みで、あまりグロールやデスボイスが入ったりすると苦手な様子。ただ、スラッシュメタルはけっこう行けたんですよね。逆にパワーメタルはダメとか、「なるほど! 違って聞こえるのか!」という驚きはありました。一番気に入った曲がドイツのPOWERWOLFのDemons Are A Girl's Best Friend。メロディアスなジャーマンメタルが好きなのかなと思ったらRAGEはダメだったんですよね。TESTAMENTはOK。なるほどなぁと思いました。改めて聞き直すとどこかゲーム感、アニメ感がある曲が多いかもしれません。ボス戦とかで使われそう。
それでは、プレイリストをどうぞ。
以下、メタラー向けの解説です。
1.POWERWOLF / Demons Are A Girl's Best Friend
一番気に入ってくれたのがこの曲。ジャーマンながらちょっと北欧っぽい(Ghostとか)メロディーの曲だと思っているんですがどうでしょう。ただ、かっちりしているのはドイツ的。リズムの重さとか、テンポの速さとか、Ghostに比べると質実剛健で幽玄さは薄れます。以前POWERWOLFについて取り上げた記事はこちら。しかしこういう「淑女(修道女)がメタルを聴いて堕落していく」系のPVけっこう多いですね。Ghostもそうですし、Alestormも酒を飲みまくるビデオで同じモチーフがありました。お約束パターンの一つです。ゲームのボス戦の音楽にありそう、かも。
2.TESTAMENT / Children Of The Next Level
なぜかTESTAMENTがお気に入り。「なぜか」というのは、メタル初心者が好むバンドだという印象がないからですが、こうして聞くとボス戦の音楽みたいですね。リズムが適度に跳ねていて、ものすごくブラストブラストしていない、しなやかな感じがいいのかもしれません。PVのアニメーションも印象に残った様子。リフと声の絡みが心地よく、ベテランならではのしっかりした構築力が感じられる曲で、ギターソロもおなかいっぱいになるまで味わえます。来てほしいところ、痒いところに手が届く流石の貫禄。曲が展開していく感じが最近のゲーム音楽っぽいかもしれませんね。
3.KREATOR / 666
今度はジャーマンスラッシュの大御所、KREATOR。スラッシーに突撃し、吐き捨て型ボーカルながらサビではArch Enemyばりのメロディアスなギターメロディーが耳に残ります。改めて聞くとけっこう音作りはすっきりしているし極端に圧迫感のあるヘヴィな音像ではないですね。やはりこの曲もバトル曲っぽいかもしれません。以前、「疫病と戦うためのメタル音楽」でも取り上げました。心地よく疾走する、オールドスタイルなメタラーなら気に入るであろう佳曲です。
4.Armored Saint / End of Attention Span
まさかのArmored Saintもお気に入り。まぁ、こういうスラッシーなパワーメタルは意外と激しめのゲームミュージック好きにも刺さるのかもしれません。勢い・疾走感があり、適度に展開し、リフとボーカルの絡み合いで緊張感を作っていくパターンの曲、と言えるでしょうか。ちなみに変拍子が増えすぎるたり、ヘヴィすぎるとお好みではない様子。いわゆるゲームミュージックは究極的にはBGMなので、変拍子が入りすぎたり、あまりにもシリアスだったりヘヴィなムードだと音楽の主張が強すぎるのかもしれません。メタル耳ではありますが、ゲーム音楽好きの「いい曲」「ダメな曲」の差は、そのあたりに手がかりがありそうです。
5.OPETH / Syekets Prins
北欧の誇るOPETHもお気に入り。OPETHも昔は極端な主張がありましたが、最新作では主張が薄れたというよりは洗練の度合いが飛躍的に増して、アグレッションと心地よさが共存するようになりました。かつてのような極端な複雑さやデスパートのアグレッション、静と動のコントラストを求めると物足りないかもしれませんが、極端すぎない静と動のコントラストでミドルテンポながら適度な緊張感と心地よさを保って曲が進行していきます。手を止めて耳を奪われるシーンは少なく、心地よく聞けるのでゲーム音楽に使われていてもいいかも。
6.BATTLE BEAST / No More Hollywood Endings
BATTLE BEASTもお気に入り。メタル初心者にも好まれそうなバンドだと思っています。なお、他のプレイリストにいろいろと入れているので今回は省きましたがBEAST IN BLACKの曲もたいていお気に入りでした。この曲はゲーム音楽・BGMというよりはアニメの主題歌に使われそうな曲ですね。ゲーム・アニメなど10年代のジャパニーズコンテンツで許容される”激しめの曲”の範囲を逸脱しない曲ながら、北欧メタルらしい美メロが印象に残ります。
7.Perfect Plan / Time For a Miracle
この辺りから毛色が変わってきます。話を聞いてみるともともと吹奏楽部に入っていてDEEP PURPLEを吹いたりしていたそう。だからこういうどっしりしたミドルテンポのハードロックも行けるんですかね。ブルースベースを感じさせる曲で、これはあまり日本のゲームでは聞かない雰囲気かもしれません。ハードロックのルーツ・王道的な曲なのでこういう雰囲気の曲を作れる作曲家は多いでしょうが、歌モノでこういう曲はかなり歌唱力が必要なので数が少ない気がします。
8.Bring Me The Horizon / Obey
イマドキのメタルを聴かせてみたらお気に召したとのこと。メタルの範疇だけで語られるバンドではないですが、ここ2曲ぐらいのBMTHはヘヴィさを取り戻している気がします。かなりスクリームもあるし、静と動の展開もいいですね。これはジャパニーズアニメの主題歌でも全然ありな感じです。できそこなったジャイアントロボみたいなPVだし、特撮など日本文化を意識しているのかもしれません。
9.Poppy / Concrete
Kawaii Metal界にUSから殴りこんできたPoppy。これなんかまさにアニメの主題歌ですね。ポプテピピックの主題歌がこれでも何の違和感もありません(ポプテピピックを「まさにアニメ」と言っていいのか不明ですが)。このわけの分からなさはまさにジャパニーズコンテンツ好きに馴染みやすいものではないでしょうか。説明しがたい感じがします。すごく邪悪でもシリアスでもアングラでもありませんが、やはりヘヴィパートはアメリカのメインストリームで勝負しているだけあって迫力ある本格的なヘヴィさです。
10.Deep Purple / Throw My Bones
吹奏楽部で吹いていたというDeep Purpleを。ラスト・アルバムからのリードトラックです。ラストアルバムが出た、と話したら興味を持ってくれました。やはり「名前を知っているバンド」が増えてくれるのは良いことですね。アーティストに興味を持ってもらえると、そこからいろいろな興味が広がっていくきっかけになります。普段なじんでいるゲーム・アニメというコンテンツの音の幅に加えて、吹奏楽から入ったハードロック・ルーツもたどってもらえれば色々なアーティストの扉が開けると思います。ちなみに、吹奏楽部で吹いていたのはFireballやHighway Starだそう。顧問の先生がいい仕事をしていたのでしょう。
以上、今回の10曲でした。世にメタラーの増えんことを。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?