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連載:メタル史 1982年⑩Pagan Altar / Pagan Altar (Judgement of the Dead)

謎多きバンド、Pagan Altar。Witchfinder Generalと並び、N.W.O.B.H.M.におけるDoom Metalの先駆けとされるバンド。日本ではほとんど知名度がないんじゃないでしょうか。僕も今回、メタル史を追っていて初めて知ったバンド。いわゆる「N.W.O.B.H.M.の名盤特集」といった記事でもあまり見かけた記憶がありません(見落としていただけかもしれませんが、少なくとも大きな扱いではなかった)。英語圏では知名度も評価も高いアルバムのようでRYMでは評価数2500弱、評価3.74と件数も点数も一流。

本作は彼らが1980年代、N.W.O.B.H.M.時代に出した唯一のアルバムで、自主製作盤。そのためリアルタイムので流通量はかなり少なく、後に再評価されて再発されます。今一つ印象に残っていなかったのはジャケットのせいもあります。ジャケットが複数あるんですね。Diamond HeadのLightning To The Nationと同じようなもの(あのアルバムも自主製作盤として作られたので最初は無地のジャケットで、再販のたびにジャケットが変わった)ですが、Pagan Altarはこのアルバムを出した後しばらく沈黙してしまうので(本作が再発されるもの90年代半ばだし、彼らが復活するのは00年代になってから)、このアルバムの方がより「幻の名盤」であった期間が長かったアルバム。タイトルも複数あり、Pagan Altar/Pagan Altarとセルフタイトルの表記もあれば、オリジナルの「Judgement of the Dead」としているものもある(現在、ストリーミングではこの表記が多い模様)、後は1998年に初めて(デモではなく)公式リリースされたときは「Pagan Altar/Volume.1」という名前でした。中身はすべて同じ。

Judgement Of The Dead表記のLP
1998年の再発盤、Volume.1というタイトル
現在、ストリーミングで使われているのはこのジャケットが主

…振り返ってみるとN.W.O.B.H.M.って、あまりDoom Metalとは親和性がなかった。メロディアスでスピード感があるものが好まれており、Doom Metalの祖たるBlack Sabbathもロニージェイムスディオ時代。Heavy Metal=疾走感とか派手さ、高揚感が求められ、「ヘヴィネス」というものが1980年初頭はそれほど重視されていなかった印象があります。時代背景的に大不況の中で若者の不満がパンク、メタルといった激しい音楽として現れ、ライブでもビールを飲んでヘッドバンギングして激しく発散した。この頃はあまり暗鬱なものは求められなかったのかもしれません。ただ、時代が経つにつれてだんだん「ヘヴィさの表現」としての遅さや、表現テーマとして悪魔的、異教的なものが再評価されていくようになります。Doom Metal的なもの、暗鬱だったり酩酊感といったものが重視されていくにつれて本作もWitchfinder GeneralのDeath Penaltyも再評価されている印象です。

バンドは本作を制作、自主リリースした後、成功を収めることはできず解散。ただ、時代と共に再評価され、1998年に本作が再発。そしてバンドも2004年に復活し、バンド結成当初に書かれた未発表曲を収録したアルバムを再録音。「Lords of Hypocrisy(2004)」をリリースし、そこから現在まで活動を続けています。

バンドの中心人物はボーカルのテリー・ジョーンズとギターのアラン・ジョーンズ。これ、兄弟ではなくなんと親子です。テリーが父親、アランが息子。親子バンドってメタル界では珍しいですね。カントリーだとファミリーバンドって一定数いますが、メタル界で結成当初から親子って他に思い当たりません(長年続けていて、息子世代がメンバーに入る例はいくつかありますが)。

当時のバンド写真、真ん中がジョーンズ親子と思われる

「親子バンド」だからこそ、当時そこまでデビューやレコード契約に熱心ではなかったのかもしれません。プロを目指してはいたでしょうが、親ということはボーカルがしっかりとした大人だったと思うので。やっぱり、成功するには右も左も分からない中で熱意だけで突っ走る、みたいな時期が必要な気がします。本作のプロデューサーはバンド自身とPhil Hearne。この人は他で名前をみかけないので、地元のスタジオのエンジニアなのかな。録音はホームスタジオ。自宅を改造してスタジオにしてしまったようで、Pagan Stduioというスタジオを持っていたようです。さすが大人。

ボーカル(父親)のテリーは2015年に病没。息子のアランジョーンズは活動を続けています。

晩年のテリー(Vo)と息子のアラン(Gt)
ずっと親子でバンドを続けるっていいですね
2004年の復活時点でテリーは60歳になろうかとしているところだったので
セカンドキャリアで再デビューみたいな側面もあったのかも

2023年のライブ

※はじめて当連載に来ていただいた方は序文からどうぞ。

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1980年から2009年までの30年間のメタル史を時系列で追っていきます。各年10枚のアルバムを選び、計300枚でメタル史を俯瞰することを…

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