13歳~22歳のためのヘヴィメタル入門③
この企画も3回目。第1回で書いたように、以下3点の条件でアルバムを選んでいきます。「これからメタルを聞いてみようかな」とか「ちょっと興味があるな」という若い方向けです。
1.リリース時のアーティストの年齢(フロントマン)が25歳以下。
2.時代・地域は問わず。1970年代~現在までのアルバムを幅広く紹介。
3.Apple Musicにあるものを紹介。
これ、やってみて気づいたんですが「25歳以下」ってけっこう厳しい条件ですね。「30歳以下」だと増えるんですが、25歳までにデビューしてるバンドってそんなに多くない。若いうちから才能が開花するバンドって少ないんですね。今回は王道中の王道のバンドを選んでみました。ボーカル(フロントマン)の年齢で選んでいるので、ボーカル交代して若返ったバンドも含みます。
それでは今回も5組、行ってみましょう。
SKID ROW / SKID ROW:21歳
早熟の天才ボーカリスト、セバスチャン・バックを擁したスキッドロウのデビューアルバム。バハマで生まれた後、カナダのオンタリオ州で育ったカナダ人のバックは14歳の時に初めてのバンドに参加。そして19歳の時にバックの歌を聴いたジョン・ボン・ジョビの両親によってシンガーを探していた息子(ジョンボンジョビ)の友人のバンドに紹介され、ニュージャージーで結成されたスキッドロウに参加します。上記はデビューアルバムからの曲でまさしく10代の心を歌った「18 And Life」。アルバムリリース時、バックは21歳の若さです。
当時は華やかなルックスも相まって「ポップメタル」と揶揄されたりもしましたが、音は予想以上にしっかりヘヴィなんですよね。パーティー感はあるものの、しっかり骨太な感じがある。ある意味、こういうシーンを総括するような完成度の高いバンドでした。このアルバムはメインソングライターがベース(レイチェル・ボラン)とギター(デイブ・サボ)のコンビで、ベーシストがしっかり作曲に関与している分コード進行がカッチリしていてメロディアス。ベースはコードを支える楽器ですからね。ギタリストだけで曲を作るとリフ主体とかメロディ主体になりがちですが、ベーシストが曲を作るとコード進行がしっかり展開する場合が多い。ギターも適度に華やかなリフやソロを披露しますが、全体としてはどこかの楽器やボーカルだけが突出せず、バンドのアンサンブルを優先していて曲全体にまとまりとグルーヴがあります。
Led Zeppelin / Untitled Album:23歳
「音の魔術師」レッド・ツェッペリンの4作目。正式なタイトルがない「題名のないアルバム」で、便宜的に「4」と呼ばれています。ボーカルのロバートプラントはこの時23歳。豪華なブロンドがライオンのようです。黒魔術や神秘主義をうまく散りばめながら特異な世界観を作っていたバンドで、サーカス的でもありました。
音楽的な頭脳であるギタリストのジミーペイジと、作詞面の頭脳であるロバートプラント。ジミーペイジはもともとセッションギタリストとしてさまざまなアーティストのアルバムに参加。ペイジの最大の才能はギタリストとしての純粋な演奏技術というより「さまざまな音楽をロックンロールに取り込む」ことだったように思います。それが結果として”ロックの領域を拡張”し、”ビートルズの次”のバンドになりえた。時が流れさまざまな派生が生まれていっても「あるアイデアが生まれた瞬間」はスリリングで魅力的。ここで生み出された化学反応または音楽の魔法が姿を変え形を変えて表現され続けています。
METALLICA / RIDE THE LIGHTNING:21歳
「メタル」の代名詞ともなったメタリカ。ボーカルのジェイムス・へットフィールドとドラマーのラーズ・ウルリッヒを中心に結成され、幾多のメンバーチェンジを経てデビュー。バンド結成時に二人は18歳、デビュー時に20歳とかなり早熟なバンドでした。若者による若者のための音楽というか、ライブハウスに通っているメタルファンの中から次代のメタル音楽が生まれてきたイメージがあったバンド。本作は2枚目のアルバムでリリース時へットフィールドとウルリッヒは21歳。
彼らの音楽は「欧州メタルと米国メタルの融合」と言われていましたが、改めて聞いてもまさにその通りの音。ウルリッヒはデンマーク人でもともとヨーロッパ育ちなので北欧メタルやUKメタルに触れて育ってきた。かたやヘットフィールドは典型的なアメリカ人なので、それぞれのバックグラウンドがうまく混ざりあっているんですよね。そしてギタリストのカークハメットはフィリピン系のハーフであり、ベーシストのクリフバートンはジャズやクラシックの素養もあった。様々な多様性がごった煮にされたバンドサウンドが魅力です。メタリカについて掘り下げてみたい方はこちらの記事もどうぞ。
Helloween / Keepers Of The Sevens Keys Part 2:20歳
パワーメタルの父ことハロウィン。いわゆるジャーマン(ドイツの)メタルの代表的なバンドであり、独特のユーモアのセンスを持ち合わせた音楽性で日本でも市民権を得ました。ボーカルのマイケル・キスクは18歳の時にハロウィンに加入。本作は加入後2枚目のアルバムでリリース時20歳。驚異的にハイパワーなボーカルを響かせています。
当初は2枚組としてリリースしたかった「Keepers Of The Seven Keys」は2枚のアルバムに分けられ、本作が2作目。前作はキスクの加入後初のアルバムということで今聴くと多少粗削りなところもありますが、本作は完成された一つの到達点を感じさせる出来。ボーカルパフォーマンスもより一層堂々としたものとなり、音楽的にも他にない独自性を確立しています。こちらもこの後の「ジャーマンパワーメタル」の発火点となり、原典として多大な影響を与え続けているアルバム。メロディの人懐っこさとスリリングな演奏が欠け合わさり、親しみやすく勇壮という大衆性を得ています。
Deep Purple / Burn:23歳
「拡散美」のレッド・ツェッペリンに対して「様式美」のディープ・パープルと呼ばれたバンド。確かに多様な音楽性を飲み込み、ロックンロールの領域を拡張していったツェッペリンに比べると、パープルは「クラシックとハードロックの融合」を掘り下げていった印象が強いバンドです。ただ、ライブでは一つの曲を延々と即興演奏で伸ばすことでも知られ、ジャズ的な側面も。決して「型にはまったバンド」ではありませんでした。バンド内部の衝突により若手ボーカリストであったデヴィッド・カヴァーデイルとベーシスト兼ボーカリストのグレン・ヒューズを迎えて作られたのが本作。リリース時にメインボーカルであるカヴァーデイルは23歳です。
ギタリストのリッチー・ブラックモアはクラシックとハードロックを融合させたギタースタイルのパイオニアであり、その後に広がる「ネオクラシカル」の原点的なアーティストです。ただ、誰かひとりだけが主導権を握るタイプのバンドではなく、ライブで即興演奏を繰り広げることから分かるように各プレイヤーがせめぎあうジャズロック的な要素も持ったバンドでした。そのため、各プレイヤーの見せ場がそれぞれ曲のなかに用意されているし、アルバム全体を通してみても曲調は多様。ブリティッシュロックの名盤でもあります。
以上、5枚のアルバムを紹介してみました。気に入ったアルバムがあれば幸いです。
それでは良いミュージックライフを。
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