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HELLOWEEN / UNITED FORCES 2023 @ 日本武道館 2023.9.16

来日ラッシュの2023年9月。ジャーマンパワーメタルを追ってきた人にとっては歴史的な一日とも言えるハロウィン武道館公演がやってまいりました。90年代、メタラーの中で一世を風靡したジャーマンパワーメタル。日本での呼ばれ方はジャーマンメタルやメロスピ(メロディックスピードメタル)。その筆頭格とも言えるハロウィンながら武道館公演は初。ハロウィンアクセプトU.D.O.ブラインドガーディアンガンマレイランニングワイルドヘヴンズゲイトクローミングローズエドガイグレイブディガーetc…ジャーマンパワーメタルの炎。80年代~90年代前半に燃え盛り、90年代半ば以降は一つの様式が確立されたサブジャンルとして新人バンドも継続的に生まれてきたものの、00年代以降は新しい大きなムーブメントは生まれませんでした(UKからDragonForceが現れたぐらい)。そんなジャーマンパワーメタル界に起きた大ニュースが2016年のハロウィンユナイテッド。黄金期を支えたマイケルキスク(Vo)とカイハンセン(Gt)が復帰してトリプルギター、ダブルボーカルの7人編成に。ひと時の夢で終わらず継続活動して2018年に来日、2021年にアルバムリリース、そして2023年に待望の再来日となりました。2018年の来日時はZepp Tokyo(キャパ2,709名)だったんですよね。今回は武道館(キャパ14,501名/音楽ライブ時は約10,000名)と4倍のキャパに。一気にグレードアップです。

「日本人はメロスピ好きが多い」と言う印象がありますが、案外そんなに絶対数がいなかったんですよね。80年代~90年代の限定された期間のムーブメントであり、コアなファンはいるものの武道館を埋めるほどではなかった。今回の武道館公演は、いわばそうした「メロスピ好き」「ジャーマンメタラー」達が何十年の雌伏期間を経て集結する最大規模の宴。

待機列、今回は約2時間半待ち

15時過ぎに到着。長蛇の物販列。今回の物販列は流れが遅かった…。約3時間待ちました。好きで並んでるし、並んでるのも楽しみの一つと言えるんですがちょっと今回は長かったですね。暑いし…。並んでいるから欲しくなる、手に入れた時の喜びがあるという面もあるから列を作ること自体は一概に否定しないけれど、もっとオペレーションは改善してほしい。Knotfestみたいに事前予約しておいて受け取る形式が一番スマートだと思うんですけれどね。それだと待機列ができないから売れ行きが減るのだろうか。

ただ、今回の物販で良かったことは数量が豊富だったこと。売り切れているだろうなと思っていた御守りと湯呑が買えました。過去、長蛇の列に並んでも売り切れが多くて欲しいものが買えなかったことが多いんですよね。今回は売り切れが比較的少なくてそれは嬉しかったです。長時間並んだ上に売り切れはきつい。長蛇の列と席の埋まり具合を見る限り物販の売れ行きが悪かったとは思えないので単純に準備した数量が多かったのでしょう。

開演前の会場

この日は事前にソールドアウトは出ていなかったものの当日券は早々に売り切れたようで、結果としてソールドアウトになっていました。実際に会場は3階席まで満席。英語で歌っているとは言え、非英語圏のバンドが武道館を埋めるってすごいことですよ。英米のバンドに比べるとやっぱりどうしたって情報が入ってこないし。ことメタル音楽に限ってですが90年代にドイツの情報がUKやUSと同じように入ってきていた日本市場というのはかなり特異。Burrn!誌や和田誠氏の奮闘と紹介あってのことでしょう。

オープニングから守護神伝キャラでテンションが上がる

この人はWowwowの中継があり、ほぼオンスケ(だいたい5分遅れぐらい)でスタート。冒頭はSkyfall。カイハンセン作曲の大曲で、7人編成で作られた初のアルバム「Helloween(2021)」のリードトラックです。

全体として感じたことは「メタル音楽のアリーナクラスのエンターテイメントショーとして今まで見た中で最高の完成度だった」ということ。中だるみがほとんどなく、ずっとテンションが高くて楽しいんですよね。

・冒頭から代表曲(Eagle Fly Free、Powerなど)で畳みかけてテンションを上げた、選曲が良かった

・トリプルボーカルであり、それぞれのメインボーカル曲があって1バンドなのにフェス感があった、また、それによって各ボーカルの喉が最後まで温存されてパフォーマンスが最後まで落ちなかった

・ボーカル3名に加えて各プレイヤー(ギターとドラム)のソロパートもあり、アコースティックセットもありと引き出しが多くバリエーションに富んでいた

・10分超えの複雑な大曲からポップでキャッチーなナンバーまで、音楽性のバリエーションが多い

・冒頭に大盛り上がり曲を連発しておいて、最後にまた大盛り上がり曲(I Want Out)で締める構成もGood

前回(2018年)の来日の時も「トリプルボーカルの迫力、ライブパフォーマンスのテンションの高さ」に感動したんですが、今回はさらに輪をかけてよくなっていました。欧州ツアーでは明らかに会場規模が大きくなり、アリーナクラスの盛り上げ方を熟知したこともあるのでしょう。うしろのバックスクリーンに流れる映像も凝っていました。

あと、特筆すべきはカイハンセンの成長というか調子が出てきたというか、前回の来日時はちょっとご愛嬌も含めてのカイハンセンコーナーだったのが、今回はトリプルボーカルの一端をしっかりと担い、むしろMCなども含めると一番存在感があるぐらい。声の調子もいいし、過去最高にキレッキレのカイハンセンが観れました。メドレー形式だったカイハンセンコーナーも含めると、今回「Walls of Jericho(1986)」収録曲が一番多く演奏されたんじゃなかろうか。そうした「ジャーマンパワーメタルの黎明期」から最新作まで、結果として「初期衝動で突っ走ったころの曲」と「作曲家として熟成された最近の曲」が混在したセットリストも感動的でした。

今回のセットリストはこちら。
後ろの凡例は(収録アルバム / 作曲者 / メインボーカル)です。メインボーカルはややうろ覚え。

1.Skyfall (Helloween / Hansen / AM)
2.Eagle Fly Free (KotSK2 / Weikath / AM)
3.Mass Pollution (Helloween / Deris / AM)
4.Future World ( KotSK1 / Hansen / M)
5.Power (The Time of the Oath / Weikath / A)
6.Save Us (KotSK2 / Hansen / AM)
(SE):Walls of Jericho
7.Metal Invaders (WoJ / Hansen / K) ~ Victim of Fate ( Helloween 1986 / Hansen / K) ~Gorgar (WoJ / Hansen+Weikath / K) / Ride the Sky (WoJ / Hansen K)
8.Heavy Metal (Is the Law) (WoJ / Hansen+Weikath / K)
9.Forever and One(Neverland) (The Time of the Oath / Deris / AM)
Guitar Solo(Sascha Gerstner)
10.Best Time (Helloween / Gerstner+Deris / AM)
11.Dr. Stein (KotSK2 /  Weikath / M)
12.How Many Tears (WoJ / Weikath / AMK)
Encore:
13.Perfect Gentleman (Master of the Rings / Weikath+Deris / A)
14.Keeper of the Seven Keys (KotSK2 / Weikath / AMK)
Encore 2:
Drum Solo(Dani Löble)
15.I Want Out (KotSK2 / Hansen / AM)

全15曲。メドレーを含めれば18曲。2時間超えの長尺ライブ。こうして見るとかなり初期曲、そしてハンセン作の曲が多く演奏されたことが分かります。

アルバム別
Helloween(1986のEP) 1曲(メドレー内)
Walls of Jericho(1986) 5曲(うち3曲はメドレー内)
Keeper of the Seven Keys, Pt. 1(1987) 1曲
Keeper of the Seven Keys, Pt. 2(1988) 5曲
Master of the Rings(1994) 1曲
The Time of the Oath(1996) 2曲
Helloween(2021) 3曲

メドレーを含んでいるとはいえWalls Of Jericho(WoJ)からの曲が多いですね。5曲。そして実に大半が80年代の曲という。80年代の粗削りだったハロウィンの曲を今の完成された状態で演奏すると普遍性を持つということなのでしょう。00年代、10年代が丸ごと抜けていますがその時代も継続していたからこその今であり、その間それぞれが行っていた様々な音楽的挑戦が今の表現力に繋がっているのでしょう。

作曲者別に見てみます。

作曲者別
Hansen 7曲(うち3曲はメドレー内)
Weikath 5曲
Hansen+Weikath 2曲(うち1曲はメドレー内)
Deris 2曲
Weikath+Deris 1曲
Gerstner+Deris 1曲

見事に作曲者のパワーバランス通りというか、メドレー内も含めればハンセンが一番多いですがメドレーを1曲と考えればハンセンとヴァイカートが(共作も含めて)同数。そしてデリスがかかわった曲が4曲とそれに次いでいます。きちんとデリスとの共作ながらサシャ・ガースナーの曲も1曲入っています。ハロウィンを支える2大ソングライター、ハンセンとヴァイカート。そして少し違う色を加えるデリス。成長中のガースナーというところが現在の力関係ですね。

最新作「Helloween(2021)」ではハンセンは1曲しか提供していないのですが、次作(おそらく作るはず)ではもっと曲提供するのでしょうか。とにかくカイハンセンが元気。ハンセンってとにかく陽性というか、場を明るくするカリスマ性があります。

降り注ぐかぼちゃ

あとはマイケルキスクのルックスがちょっとウド・ダークシュナイダーに似てきた気がします。身長はだいぶ違うけれど。ファッションとかむしろ寄せてるのかしら?

マイケルキスク
ウドダークシュナイダー

それでは良いミュージックライフを。



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