32.HeavyMetalの生きる歴史 = Ozzy Osbourne
10年ぶりのソロアルバム「Ordinary Man」をリリースしたオジー。とはいえ、途中にサバス復活の「13」もあったのでそれほど久々感はないが、「13」に続けてキャリアの中でも傑作と言える素晴らしい作品を出してきたのはさすが。ラッパーのPost Maloneと組むという異種格闘的な試みも面白い。
この曲は「Ordinaly Man」の一曲目を飾っていて、いわゆるサバス的な「13」の流れをくむ名曲だが、アルバム全体を通してみると時代時代で変遷してきたオジーの音楽史を俯瞰しつつ新たな展開も見せるような作りになっている。サバスがデビューしたのは1978年。そこからオジーのソロまで含め、まさにHMの黎明期からずっと時々のシーンに合わせて音楽性を変えてきた。デビュー時はドゥームでありヘヴィだったのだが、80年代のソロ時代はヘア・メタル(LAメタルと言うべきか)的な派手なリフやルックスになったし、そこからグランジオルタナ時代のちょっとシリアスで歌メロ中心な感じを経て、サバス回帰から今作。今作は1曲目がサバス風で2曲目は80年代を感じさせるリフ、そのあともいろいろと過去を感じさせながら新機軸(今風の低音の効いた音作りだったり、ポストマローンのラップだったり)を打ち出している。
余談だが、HMってそんなに低音の音楽じゃないんだよね。むしろ中音域の音楽で、低音だと最近のR&Bとか黒人音楽系の方がはるかにすごい。ビヨンセとかスーパーヘビー(音の帯域だけで言えばね。100ヘルツ以下の超低音みたいな)。メタルは音の情報量が多いから(速弾きとかツーバスとか)、そんなに低音を強調すると埋もれちゃう。サバスというのはスローだから低音が出せたわけで、それが今でも一つのジャンルを形成しているわけだけれど、本家本元のオジーはやはりそうした音作りがうまい。その上で今のヒップホップとかR&Bのトップランナーを連れてきているから、完全に今風のスーパー低音のバックの上に、重低音に合ったメタル的な歌メロが乗るわけだ。ありそうでなかった、元祖がさらにメタルを進化させた素晴らしい作品。
エルトンとの共作も良い。オジーはジョン・レノン的な声と言われるけれど、なかなかどうしてエルトンと相性がいい。最初の歌メロはオジー的だけれど(音程が跳ねる感じとか)、盛り上がるにつれてエルトン印がくっきりと。エルトンジョンと言う人はなんというか歌メロに癖があるよなぁ。それほど奇抜なことはしていないのだけれど、しっかりと聞かせ切るというか。考えてみると不思議な組み合わせなのだけれど、あるべくして生まれたような安定感がある。大きな括りで言えば、両方とも数十年に渡って英国音楽を牽引してきた二人だよね。