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Extreme The Dojo Vol.35 Cavalera Melt-Banana SIGH @ Spotify O-EAST 2025/1/27

夜の渋谷、道玄坂を上りSpotify O-EASTへ。今夜は復活したExtreme The Dojo。ブラジルのレジェンド、Sepulturaの創設中心メンバーであるカヴァレラ兄弟(Gt+VoのマックスとDrのイゴール)率いるCavarleraがヘッドライナーです。ベースはマックスの息子のイゴール・アマデウス・カヴァレラ。どっちもイゴールなのがややこしい笑。まぁ、「イゴール」といえば叔父の方で、息子は「アマデウス」と呼ばれているのでしょう。リードギター、つまりアンドレアス・キッサーのポジションにはPig Destroyer のトラヴィス・ストーンが参加という布陣。

物販

SIGH

今日は3バンドによる対バンというかイベント。トップバッターはSIGH。なんだかんだSHIKIリリース後、これで見るのが3回目な気がする。Violent Attitude(レポ)と、、、あれ? 2回目かな。前回ライブ観た後、あまりに良かったのでスタジオ配信ライブのBlu-Rayを買って観たんだった。それが1回にカウントされてますね。リアル体験は2回目。

前回と布陣は同じ。男女ボーカルがフロントで、左右にお子様。右手にギター、左手にベース、後ろにドラム。左右には「極楽」「浄土」の立て板があり、篝火のようなセット。後ろには菩薩。和風儀式感。

SIGH

フロントのお二人は夫婦で、お子さん二人は娘さんだと思うんですよね。はっきりどこかに書かれていたわけではないけれど、なんとなくそうなのかなと。ステージ上の空気感とか、物販の時の雰囲気とか(ライブ後は物販ブースにいらっしゃる)。これ、初回見たときは「なんじゃこりゃ」と思いましたよ。DDTの親子プロレスを見たとき「SIGHやん」とも思いましたもん。

でもこれ、考えると本当に「預けることができない」というか、ライブで海外ツアーも多いと両親ともでかけるなら子供を連れていくしかないと思うんですよね。で、単に連れて行っても旅費がでない。から「スタッフ、演者として扱ってしまえ」という素晴らしい(というか必要に駆られた)発想なんじゃないかと思いました。バンドで暮らすってそういうことだし、確かに演者として奇妙な空間を演出することに成功している。ずっとヘッドホン(というか耳栓)して立っているだけなんですが、存在感があるしなんだか奇妙な感覚があるんですよ。奇妙さってフックで、記憶に残ったり話題にしたくなりますから、演者としては成功。今回は前回見た時よりステージ慣れしたのか、基本無表情(緊張している)ながらも刀を抜いたり頭蓋骨を持つパフォーマンスが少しこなれていました。メタル英才教育ですね。彼女たちが将来メタルバンドでデビューしたりしたら応援しそう。推しというものがよくわからなかったのですが、これは推しの萌芽かもしれません。スティーブハリスの息子がバンドやっててドニントンUKで観たんですが、メイデンファンが暖かく見守っていたのと同じような壮大な親子二代にわたるメタルストーリーを夢想したり。

今回のライブは前回よりよかった。女性ボーカルの音量が良かったですね。男性と女性でどうも声量が違うのか、前回は最後まで女性の声があまり聞こえなかったんですよ。ほぼ同等にパートを分け合う曲が多いので、同じぐらいの音量で聞こえてほしい。今回、3曲目ぐらいからミックスが良くなって理想的なバランスでしたね。ドラム、ベース、ギターも前回よりもさらにこなれていてツアーで鍛えられている感じがします。SHIKI収録曲中心。改めてライブで聴いて、SHIKIは非英語(日本語)メタルの名盤だと思う。

意外と観客が少なかったんですが、個人的にはとても素晴らしいバンドだと思います。見世物小屋的な妖しさに加えて、演奏もさすがのキャリアと知名度に恥じないクオリティでした。前回よりスケールアップしている。

30分のステージ。その後20分ぐらい転換。そういえばポスターだとSxOxBがありましたけど、大阪だけなのか。4バンド出るのかと思っていた。

SOBから連想して転換中「SODといえばStoomtrooper Of Deathだし、CoDと言えばChildren Of the Damnedだよなぁ、じゃあFODはFujitv Of DeathかFujitv Of the Damnedか」とか考えていました。こんな余計なこと考えていたらこの時10時間も会見していたんですね…。帰ったらまだやっていた。驚き。

Melt-Banana

2組目は初見のMelt-Banana、名前だけは知っていたけれどこんなユニットだったのか。男女二人組で、女性ボーカル、男性ギター、あとは打ち込み。

女性の方がスマホ持ってるなぁと思ったらこれが制御装置らしい。リズムパターンをこれで制御していました。なるほど、面白いパフォーマンス。

そぎ落とされた構成。人力では不可能なビート。なんだか生音っぽさとデジタルっぽさがまじりあって不思議な雰囲気です。やっぱり日本のバンドで90年代から活動している人は特異性、ユニークな世界観がありますね。SIGHもMelt-Bananaも特異。Melt-Bananaは知らなかったので終わってから情報を調べたらインタビュー記事を見つけました。

だんだん2人になった、と。でもツアーも2人だから回れる、全部自分たちでやる、みたいなことも書いていて、そうだよなぁ、と。SIGHも一族移動というか家族サーカスみたいにやっているし、移動費とかの捻出、経営的なことも大事。少ない人数でできるってのも一つの戦略ですよね。Avexに所属しながらも弾き語りでツアーできる大森靖子はやっぱりコストが低いからライブの本数入れられるし、春ねむりだった演者一人(+マニピュレーター兼マネージャー)のミニマム編成だから海外ツアーに出やすいのでしょう。そうした少人数バンドは経済合理性も立てやすいし、音楽活動を芯を持って長年続けやすくなっている気がします。バンドで続けるって大変。

曲は高速ハードコア、ボーカルが声が高くて抜けてくる。声にピッチシフターかけて高くしてるのかとも思ったけれど普通の声っぽい。独特。音源ではどんな感じなんだろうと思ったら音源は音源でまた違う完成度でした。

理屈とか技術とかすっ飛ばして表現してる感じが素敵。姿勢に共感します。アルバム聞こうと思ったアーティスト。

Cavalera

また転換。この転換中はMelt-Bananaについて調べていました。30分ぐらいの展開を経て、ついにCavalera登場。

CavaleraはSepulturaの作品をリレコーディングしてリリースしており、もともとはCavalera Conspiracy名義でオリジナル作をリリースするも、Cavalera名義ではSepulturaのカバーのみ。現在最初期の3枚「Bestial Devastation」(EP)、「Morbid Visions」、「Schizophrenia」をフィジカルではCavalera名義でリリース(ストリーミングだとCavalera Conspiracy名義のままというややこしさ)。

でも、Sepulturaって不思議なバンドですよね。現在メンバーでもっとも長く在籍しているベースのパウロ・ジュニアはChaos A.D.まで名前はクレジットされているものの実際には弾いていないし(ギタリストがだいたいベース兼任していた)、その割には作曲クレジットはバンド全員名義だし。誰がメインコンポーザーだったのかわかりづらい。カヴァレラ兄弟が中心だったと思うんですが、最初にマックスが抜けて、その後イゴールも抜けている。バンドというのもある程度の規模になると会社になることが多いので、会社の株主は誰なんだろう。誰が所有しているのか謎ですが、現在Cavaleraが「Sepultura」と名乗っていないところからするとアンドレアスキッサーとポールジュニアが持っているのでしょうね。この辺りはメタル史でまた掘り下げようと思います。

いずれにせよ、Cavaleraというプロジェクトはカヴァレラ兄弟がSepulturaの曲を演奏するプロジェクト。今回のライブでも最初の方に「今日はSepulturaの曲しかやらないぜ」宣言が出ました。途中にも「東京にいるのがオリジナルのSepulturaだぜ!」と連呼。もうすぐSepulturaが解散するはずだから、その後は名前引き継ぐのでしょうか。もしかしたらそういう契約なのかもなぁ。

Cavalera名義でSepulturaのカバーアルバムをリリースし始める少し前(2018年頃)にSepulturaとCavelera Compiracyで一緒にツアーを回る、といううわさがあったんですよね。結局立ち消えたんですけど、もしかしたらその時に再結成、再結集の話し合いがあったのかもしれない。そこで決裂したから、Sepulturaの名義について争いが起きて、結局「いつまでは現在のSepulturaが使い、その後はCavalera兄弟に戻す」みたいな話? あるいは両者とも「Sepulturaの名前は使えなくなる」みたいな。Sepulturaは現在解散ツアーの真っ最中ですが、「なぜこのタイミングで解散?」に対して明確な回答がないんですよね。ちょっと不思議。まぁ、ブラジルの法律とか商習慣が分からないので何とも言えませんが、、、。Angraも今年活動休止しますし、何か起きているのだろうか。

さて、ライブは基本的にすでにカバーアルバムを出している初期3枚からの曲が多め。だいたい1985~7年の曲ですね。今連載しているメタル史では1985年に入ったところですが、その少し先、Thrash Metalが従来のHeavy Metal(N.W.O.B.H.M.の影響が大)からスタイルが拡張して、より邪悪さを感じさせる和音や暴虐性に向けて拡散している時期ですね。エクストリームメタルの萌芽。その頃の曲らしく、メロディはあまりなくひたすら疾走、モッシュといった形。メロディ的にはハードコアに近く、演奏のタイトさはメタルをつき進めている、といった楽曲構造です。フロアではずっとモッシュが起きる。

なお、Melt-Bananaでもモッシュが起きていたんですが、Cavaleraになって客層が変わりました。Melt-Bananaは日本人多めでしたがだんだん海外の方(ブラジルなのかな)が増えてきて、体格も巨大化。70キロ以上眼鏡なしじゃないと厳しい感じに。吹っ飛ばされますからね。8割以上の参加者がそんな感じ。いかつい。

ほとんど曲間なく、初期曲をゴリゴリ演奏していきます。デスメタル初期の雰囲気。1980年代当時のライブハウスにいるような感覚。まぁ、当時に比べれば当然演奏者は落ち着いているし、演奏も円熟しているのでしょうけれど。イゴール・カヴァレラのドラムがパワフル。マックスは以前、Soulflyの公演をラウドパークで観ていたのでその時とあまり変わらない(というか、衣装も同じ気がする、金属鋲付きのジャケット)。イゴールがやはり存在感がありましたね。テクニックとかうんぬんより、ドラマーとしての存在感や音の迫力。

1980年代マナーで激烈スラッシュを演奏し終えたあと、転換をはさんでアンコール的な感覚でスタートしたのが90年代、Chaos A.D.のパート。ここで急にスケール感が出ます。やっぱり初期3曲はライブハウスで熱狂を生むような曲構成。Chaos A.D.の曲はアリーナ、スタジアム対応というか、曲のスケールが大きくなる感じ。リズムがキャッチーです。

久しぶりにTerritory聞きましたが、やはりいい曲ですね。

Chaos A.D.リリース時にはB!誌の表紙にもなったんですよね。1993年10月か。

1993年10月5日発売

若い!

この時はリアルタイムでしたね。クロスレビューされているから買ったものの、当時ハロウィンとかメロパワ好きだったのでそんなにはまらなかった記憶が。だけれど冒頭2曲は印象に残っています。改めて聞くとこれもメタル個人史にしっかり残っている名盤、名曲だなぁと認識。会場のボルテージも一気に上がった、祝祭感が出た気がします。それまでもモッシュはずっと起きていましたが、ちょっとノリが変わって、祝祭的な解放感が出たんですよね。グルーヴメタルの力。

そしてGodzillaでウォールオブデスをやり、会場大盛り上がりで終了。素晴らしいライブでした。個人的にはChaos A.D.のキャッチーさを再発見できたのが最大の収穫。Refuse/Resistが始まり、「Chaos A.D.!」と叫んだところがクライマックス。

終演10時、6時半から始まって3バンド3時間半。大満足のイベントでした。

今回のセットリストはこちら。

The Curse
Bestial Devastation
Antichrist
Necromancer
O Fortuna
Morbid Visions
Mayhem
Crucifixion
Black Sabbath
Funeral Rites
Interlude
From the Past Comes the Storms
To the Wall
Inquisition Symphony
Escape to the Void
R.I.P. (Rest in Pain)
Encore:
Refuse/Resist
Territory
Troops of Doom
Black Magic / Morbid Visions / Dead Embryonic Cells / R.I.P. (Rest in Pain)
Biotech Is Godzilla

アルバムごとに集計すると、以下のようになります。
• Morbid Visions: 7曲
• Schizophrenia: 4曲
• Bestial Devastation: 3曲
• Chaos A.D.: 3曲

リレコーディングしている初期3枚+Chaod A.Dでしたね。この後もリレコーディング続けていくのかな。

会場内には5月のBloodywood公演の告知ポスターがありました。

こちらも楽しみです。

帰路

それでは良いミュージックライフを。

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