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【フリーコラム】BEAST IN BLACKライブ(2019.5.24)雑感

BEAST IN BLACKの2nd ALBUM「FROM HELL WITH LOVE」を未聴の方はまずは聞いていただきたい。

別コラムでも取り上げたが、BEAST IN BLACK(以下BIB)は非常に面白いバンドだ。2019年5月22日から初来日ツアーがあり、24日の赤羽Reny公演に参加したがそこで実際にライブを見て気が付いた。

「ああ、これはディスコミュージックだ」

特に2ndからの曲に顕著で、DIE BY THE BLADEからFROM HELL WITH LOVEの流れはヴァースでリズム隊とボーカルラインだけになるところなどディスコサウンド満載。HEART OF STEELのサビもあの繰り返し感はどこかで、、、と思ったらABBAかしら。UNLIMITED SINはサビを最初聞いたときQUEENのI WANT IT ALLじゃんと思ったが、まぁサビの入りが近いだけでその他の展開は別物。たぶんQUEENオマージュじゃないんだろう。やるならもっとわかりやすくなりそうだし、たぶんたまたま似ただけ。曲のコアになる「観客と短くて力強いフレーズを合唱できる曲」という着想は同じなんだろうけれど。QUEENよりはシンフォニックメタル系の影響が(歌メロは)強い。間奏部でこれもめちゃディスコサウンドになるけれど。

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アルバムでも音作りとかでディスコっぽさはあったが、ライブの笑顔で皆が口ずさみ、弦楽器隊が笑顔でユニゾンしまくる(いわゆるアクセプトやスコーピオンズ的なフォーメーション)動きをみると、ああ、これはヘヴィメタルディスコなんだな、と。日本ではそこまで一般的でないが(ツバキハウスとかあるけれど)、フィンランドではたくさんあるのかも。何しろ(人口当たりメタルバンド数が)世界一の国ですから。もっと生活に入っているんだろう。

とにかく楽しかったんですよ、ライブ。これは上り詰めるなぁと思いました。HELLOWEENの守護神伝2章にもそうした、なんというか陽性でポップなんだけれど、ひねくれた曲展開と、HEAVY METALとして聴ける編曲の妙、胸熱の瞬間がめくるめく展開というごった煮を若さと勢いと天賦の才で押し切った奇跡的なバランスがあったんだけれど、FROM HELL WITH LOVEにもそれを感じたし、ライブからは今はバンドの状態がものすごく(人間関係含め)良いことがひしひし伝わってきた。ただ、この奇跡的なバランスを維持するのは難しいけれどね。人間関係はどうかわからないが、音楽的バランスはなかなかこれ以上のものは出てこないだろう。実際、1stにくらべて2ndはより制作がタイトで、ツアーの合間を縫って作られた、とあるし、なかばトランス状態で生み出されたのだろう。偶然の産物で再現性がどこまであるのかわからないけれど、このバランスをさらに掘り下げてほしいなあ。

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フィンランドは世界一のメタル大国である。人口10万人あたり52組のバンド。まぁ、人口の問題があるので絶対数は限られるが、ここはコミュニティの密度の方が問題になるので、フィンランド、特に都市部はかなり濃いメタルコミュニティができていると予想される。そこにどれだけメタル音楽のエコシステムがあるか。ハリウッド、たとえばディズニー、ピクサー、マーベル、ユニバーサルあたりの大手スタジオは個別の作家性というよりエコシステムで良作を作るノウハウが溜まっている。規模は違えど、勢いのあるコミュニティはそうしたシーンの底力というか、たとえば曲想が浮かんだ時にいい編曲をしてくれる才能とか、ライブで演奏してみたときに得られるフィードバックだとか、スタジオのエンジニアの持っている情報だとか、そういうもので良作を量産できるようになるんじゃないかと思っている(それが2010年代以降の音楽業界に起きている)。BIBの今作も、守護神伝2章のように1作かぎりの奇跡的なバランスで終わるのか、それともこのクオリティのものを数枚続けて出せるのか。当時のジャーマンメタルシーンより、今のフィンランドメタルシーンの方がエコシステムとして完成されていると思うんだよね、推測だけど、フィンランドメタルのアーティストたちがコンスタントに良作(傑作とは言わない、傑作は少ないから傑作)を出してくるのはそうした背景があるからだと思っている。引き続きフィンランドメタル界とBIBをファンとして追っていこうと思う。

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あ、ちなみに「北欧メタル」と言わずに「フィンランドメタル」と言っているのは意識的で、ノルウェー・スウェーデン(・デンマーク)とフィンランドって歴史的に成り立ちが違うんだよね。地理的にも山脈とかで断絶されてるし。ちょっと文化圏が違う。なので、フィンランドはフィンランドとして考えた方がいい。と思っている(もちろん、双方に影響は与えあっているけれど)。


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