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連載:メタル史 1985年⑥Exodus / Bonded by Blood 情報編

ベイエリアスラッシュを代表するバンドの一つ、Exodusのデビューアルバム。Exodusは1983年までMetallicaのカークハメットが在籍したことでも有名です。

ベイエリアスラッシュビッグ6

スラッシュメタル四天王(MetallicaMegadethSlayerAnthrax)とは別にベイエリアスラッシュのビッグ6というくくりがあり、それはExodusTestamentDeath AngelLȧȧz RockitForbiddenVio-lence

BIG8まで行くといろんな意見が出てきます

他にBig8というくくりもあり、英語版wikiだとMetallicaMegadethSlayerAnthraxTestamentExodusOverkillDeath Angelとのこと。これは人によって言うことが違いそうですね。US以外のバンドを含めるとさまざまな括りがありますが「Big4以外のスラッシュメタルの代表的なバンド」を挙げる時にはExodusの名前がまず上がってくるようなバンドです。

Exodusの元型は、1979年にカリフォルニア州リッチモンドでGtカーク・ハメットとティム・アニェロ、Dr兼Voのトム・ハンティング、Voのキース・スチュワートによって、高校在学中に結成されたバンド。1980年にBaのカールトン・メルソンが加入し、バンドとして活動開始。初期の音楽性はほかのスラッシュメタルバンドと同じようにJudas PriestIron MaidenMotörheadなどのN.W.O.B.H.M.の影響を色濃く受けたもので、リフ主体のヘヴィな楽曲が特徴でした。しかし、地元の音楽シーンに触れるうちに、より速く、攻撃的なスタイルへと進化を遂げていきます。

1982年になると、ベイエリアのメタルシーンは急速に成長し、多くのバンドがしのぎを削るようになります。Exodusも地元のクラブでのライブ活動を本格化させ、次第にその名を知られるようになっていく。この頃、メタリカがハメットに接触し、彼をリードギタリストとして迎え入れることを決定。Metallicaのデビューアルバム『Kill 'Em All』のレコーディングが迫っていたため、急遽ハメットはExodusを離れることになります。バンドにとってハメットの脱退は大きな痛手でしたが、幾人かの加入と脱退ののち、リック・ヒューノルトが加入。ホルトとヒューノルトによるツインリードギター体制が確立します。

1985のExodus

1983年には、Voのポール・バーロフが加入。これにより本作のラインナップが完成します。アグレッシブで荒々しいボーカルスタイルがバンドの個性を決定づけ、ライブでは観客を煽り、壮絶なモッシュピットを生み出す。彼のエネルギッシュなパフォーマンスはExodusのライブの象徴となり、彼がMCで叫ぶ「Good Friendly Violent Fun(友好的に暴力的に楽しむ)」というフレーズは、後にバンドのライブアルバムのタイトルとして使われるほどファンの間で定着。この頃、MetallicaSlayerMegadethなどと頻繁に共演し、ベイエリア・スラッシュシーンの最前線に立つようになります。

1983年、Exodusはデモ『Whipping Queen』や『Die By His Hand』をレコーディングします。これらのデモが話題となり、1984年、ついにバンドはTorrid Recordsと契約、デビューアルバムである本作のレコーディングを開始します。タイトルは、バーロフが頻繁に使っていた「俺たちは血で結ばれている(Bonded by Blood)」というフレーズに由来していました。

しかし、レコーディングが完了したにもかかわらず『Bonded by Blood』のリリースは遅れることに。本来は1984年に発売されるはずだったが、最終的に1985年になってようやくリリース。メジャーレーベルと契約できず、インディーズであるTorrid Recordsとしか契約できなかったことや、Torrid Recordsが提携先・配給先をうまく見つけられなかったこと、アルバムのアートワークについてバンドとマネジメントの意見が分かれたことなどいくつかの問題が重なります。この遅れがなければ、彼らはMetallicaSlayerと並ぶスラッシュメタル界のトップバンドとして、より早い段階で世界的に名を馳せていたかもしれません。それでも、『Bonded by Blood』は当時のスラッシュメタルシーンにおいて過激性が群を抜いており瞬く間に熱心なメタルマニアの間で話題になり、多くのフォロワーバンドに影響を与え、スラッシュメタル界のクラシックアルバムとなっています。

バンドメンバーのタイムライン

ただ、本作リリース後にラインナップは崩壊。アルコールや薬物の問題でボーカルのバーロフが解雇。他にもメンバーチェンジが多いバンドです。現在まで活動は続いていますが、基本的に不動のメンバーはゲイリーホルトのみ。オリジナルメンバーだとドラマーのトム・ハンティングは一時期バンドを離れたこともあるものの現在も活動中です。2015年以降はラインナップが固定しているので、2025年現在のラインナップがバンド史上最長のラインナップですね。歴史にifはないですが、ラインナップが安定していたらより大きなバンドになっていたかも。

当時のMark Whitaker

本作のプロデューサーは Mark Whitaker(マーク・ウィテカー), Ken Adams, Todd Gordon。アダムスとゴードンはTorrid Recordsの経営者ですね。エクゼクティブプロデューサー扱い。実質的にはマーク・ウィテカーが音作り面での主導者でしょう。ウィテカーはMetallicaの作品にもサウンドエンジニアとして参加しています。ウィテカーは当時のExodusのマネージャーであり、Metallicaのローディー、サウンドエンジニアでもありました。デイブ・ムステインが抜けた後のギタリストについてラーズ・ウルリッヒはウィテカーに相談し、ウィテカーがハメットを推薦したとされています。スラッシュメタル史において重要な役割を果たした人です。

※はじめて当連載に来ていただいた方は序文からどうぞ。

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1980年から2009年までの30年間のメタル史を時系列で追っていきます。各年10枚のアルバムを選び、計300枚でメタル史を俯瞰することを…

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