衝撃の邦楽プレイリスト - Part1
印象に残っている邦楽の曲10曲をプレイリストにしてみました。ジャンルも知名度もいろいろですが、全曲知っている人も、全曲知らない人もあまりいないだろう、という選曲にしています。「一聴して印象に残るか」という視点で選んでいるので、衝撃の邦楽、と言えるかもしれません。とはいえあまり極端だったりマニアックすぎるものは選んでいない、一定の商業的成功や知名度を持った曲を選んだつもりなので、多くの人に楽しんでもらえれば幸いです。
では、プレイリストをどうぞ。こちらのプレイリストから10曲続けて聴くことができます。
個別の曲解説をどうぞ。
1.川本真琴 / やきそばパン
川本真琴のデビューは衝撃でした。同世代に椎名林檎がいますが、椎名林檎と川本真琴、リアルタイムでは川本真琴の方が衝撃度が大きかったぐらい。ただ、ファーストライブを渋谷公会堂(今のCCLemonホール)で見たんですけれど、ちょっとアイドル的な扱われ方をしていて客層とのギャップがあったのを覚えています。その後の活動とか、寡作っぷりを見ていると本人の中でもギャップが大きかったのでしょう。もっとインディーズでオルタナティブな嗜好の女性SSWだったのがアイドル的に扱われてしまった、というか。今でもマイペースに活動を続けてくれているので、収まるべきところに収まったのでしょう。
こちらはファーストアルバム「川本真琴」からのナンバー。岡村靖幸プロデュースの「愛の才能」で鮮烈なデビューを飾りましたが、デビューアルバムの中で一番衝撃的、且つ、川本真琴の特異性を表していたのがこの曲だったと思っています。「一人ぼっちで屋上 やきそばパンを食べたい」このフレーズがときどき脳裏にメロディーと共に今でも浮かびます。
2.橘いずみ / 失格
「女尾崎豊」とも言われた橘いずみ。尾崎豊と同じ須藤晃プロデュースで、3枚目以降のアルバムは確かに尾崎豊的なアレンジも増えましたが、本質的には日本の女性ロックシンガーの地平線を切り開いた人だと思っています。この曲はいろいろとカバーされていますが、やはり原点は迫力がある。2ndアルバム「どんなに打ちのめされても」からのナンバー。
3rdアルバム以降は橘いずみと須藤晃の2名でほとんどすべての楽器を演奏するようになり、DIY感が強まっていきます。よりアクが強く、独自の音世界はあるんですが、やはりそれぞれのプロミュージシャンを迎えて制作した2ndアルバムが、振り返ってみると一番時代の変化に耐える普遍性を持っていた気がします。他にも良い曲がいろいろ入っていて、名盤特集などで見かけることは少ないのですがもっと再評価されてもいいと思うアルバム。
3.左とん平 / とん平のヘイ・ユー・ブルース
大槻ケンヂがソロでカバーしていたんですよね。70年代、80年代のアングラや強烈な歌を集めてカバーしたカバーアルバム(にしてソロデビューアルバム)「ONLY YOU」に収録されていたナンバー。そこからさかのぼって原曲を知ったという。左とん平は俳優としての知名度の方が高いですが、この曲はハードボイルドなせりふ回しといいクールでかっこいい。歌詞、というかセリフもなかなか沁みる内容です。この時代の少しジャジーでハードボイルドなサウンドはほかにはない色気があります。元曲のリリースは1973年の曲。
なお、俳優の歌シリーズだと、他に勝慎太郎の歌も強烈なものが多いですね。あと、竹中直人もけっこうトンチキな曲をたくさん出しています。
4.野坂昭如 / マリリンモンロー ノーリターン
「火垂るの墓」の作者であり、「おもちゃのチャチャチャ」の作詞者である野坂昭如は実は歌手活動もしていました。歌唱は素人というかアマチュアリズムがあるのですが、人間力というか、彼の生きてきた人生のコンテンツ力、物語が凄味を出しています。一度聞くと耳にこびりつく曲。クレイジーケンバンドが野坂昭如をゲストに迎えたライブアルバム「青山246深夜族の夜」を出していて、そこで初めて知った曲です。他にも野坂昭如は「バージンブルース」という曲を持っていて、こちらは戸川純がカバーアルバム「昭和享年」でカバーしていました。小説、作家としてはもちろん、歌手としてもサブカルチャーに確かな足跡を残した人。
5.友川かずき / トドを殺すな
「3年B組金八先生」の中で劇中歌として使われ、強烈なインパクトを与えた曲。本人が出てきて歌うんですよ。生徒がライブハウスでアルバイトをしているところに金八先生が訪れて説教をする、というシーンで、最初に友川かずきがライブをしている、という。(初期の)金八先生は中島みゆきの「世情」を流しながら教室での乱闘シーンを撮ったり、強烈なイメージを音楽と共に植え付けるのがうまいドラマでした。この曲を聴いた金八先生(武田鉄矢)が「かきむしられるような歌だねぇー」。いやその通り。
この曲は初出は1976年のアルバム「肉声」から。特にシングルカットされたわけでもない曲ですが、インパクトが強く、金八先生での起用に繋がったのでしょう。
6.SUPER CHINPANZEE / クリといつまでも
謎のバンド、SUPER CHINPANZEE。まぁ、見ての通り謎でもなんでもなく桑田佳祐ですね。KUWATA BANDのメンバーによるおふざけ曲。桑田佳祐のディスコグラフィーの中でもいとうせいこうとリリースした日本初期のラップ曲「ジャンクビート東京」(Real Fish名義)と並ぶ”知る人ぞ知る曲”ではないでしょうか。こちらはそれなりにヒットしたし、一度聞くと忘れないので知っている人の絶対数は多そうですが、なかなか今では話題に上がらない曲。このネタをもう一度、サザンで盛大にやったのが「マンPのGスポット」ですね。放送コードをかいくぐってそれなりに流されたようです。まぁ、放送禁止にはできないですからね、表立っては。あと、そもそもここで分割されている単語は放送コードにひっかかっていないかも。どちらかといえば医学的表現でしたからね。この曲で一気に知名度が上がったんじゃないでしょうか。
7.オメでたい頭でなにより / 金太の大冒険
言葉を区切ることで放送コードをかいくぐってしまえ! という発想の原点ともいえる曲。もともとは名古屋のヒーロー、つボイノリオによる1975年の楽曲。つボイノリオはこうしたネタ曲を大量に出していて、放送禁止歌の権威(?)の一人です。名古屋では絶大な知名度を誇り、彼の曲「名古屋はええがよ!やっとかめ」は名古屋市民なら合唱できます(嘘)。
その曲をラウドロックバンドの「オメでたい頭でなにより」がカバーしたのがこのバージョン。より緩急が(極端に)強調され、得体の知れなさ度が増しています。元曲も味わい深いので、気に入った方は原曲も調べて聞いてください。カラオケにも入っているので3次会に最適です。
8.筋肉少女帯 / 日本印度化計画
日本のサブカルチャーに大きな爪痕を残している筋肉少女帯、そして大槻ケンヂ。大槻は自虐的に自分たちを「ポヨヨン印度ブー」と紹介していたことがありますが、その「印度」にあたる曲。他にポヨヨンロック、元祖高木ブー伝説というヒット曲があるので、その3つを合わせて「ポヨヨン印度ブー」ですね。何気に演奏がうまく、日本ロック界屈指の演奏力を誇るバンドとも評され、その上に乗る素っ頓狂なボーカルと共に「大槻のボーカルにこの演奏は必要なのか」とメディアから突っ込まれる(ことをMCで大槻がネタにする)バンド。確かに演奏だけ聴くとスリリングなんですが、ボーカルのインパクトが強すぎてなかなか演奏まで耳がいきません。だけれど、演奏がカッコいいから何度も聴ける、クセになる魔力があります。
余談ですが、途中の「エキサイター!」は、Judas Priestの「Exciter」のパロディなんでしょうかね、唐突になぜなんだろう。そういえばオーケンのエッセイでも、この「エキサイターはプリーストオマージュなのか」問題は取り上げられたことがなかった気がします。途中で入る合いの手「ムルギー!」などは実在のカレー屋で、こちらについての話題はよく本人が話している印象ですが。なお、ムルギーカレー(渋谷)にはX JapanのYoshikiもよく来ていたそうで、Yoshikiもカレー好き。ちょっと話がそれますが、Yoshikiのエピソードで「カレーが辛い!」といって東京ドームのリハーサルをやらずに帰った、という武勇伝があります。Hey Hey Hey!に出たときにYoshiki本人がダウンタウンから突っ込まれていました。
9.マキシマム・ザ・ホルモン / 恋のスペルマ
こちらも日本の誇るラウドロックバンド、マキシマム・ザ・ホルモン。ひどい歌詞をさわやかに歌い上げています(途中グロウル、デスボイスあり)。2013年のアルバム「予襲復讐」からのナンバー。非常に緻密にネタ(曲)を作り上げていくバンドで、最近はかなりリリース間隔が空いています。日本のバンドは多作(毎年、あるいは2年に1枚)なバンドが多いですが、じっくりネタを煮込んでリリースする印象のあるバンド。得体のしれないパッケージ作品も多く、糞ゲー(DVDのリモコンで延々と操作する必要がある、数時間かかってクリアするアドベンチャーゲーム。中身はファンサービス満載なのだけれど、操作性は本当に糞ゲーで初期ファミコン感)をクリアしないと見れないDVDとか、奇妙奇天烈な作品をリリースしています。
10.たま / さよなら人類
一時期は国民唱歌ぐらいの知名度があったと思うのですが、今はどれぐらいの知名度なのだろう。やはり名曲ですよね。それまでアンダーグラウンド、ナゴムレコードで燻ぶっていた”たま”が一気にメインストリームに躍り出た奇跡の一曲。この曲で一番知名度が上がったのは「ピテカントロプス」でしょう。
今日は10曲、衝撃の邦楽を選んでみました。パート1ということで、好評ならまた続きも書きたいと思います。それでは良いミュージックライフを。