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連載:メタル史 1980年②Iron Maiden / Iron Maiden
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1980年はN.W.O.B.H.M.(New Wave Of British Heavy Metal)ムーブメントが高まり、一気に様々なバンドが世の中に出た年とされていますが、その中で最も象徴的な1枚を選ぶとしたら多くの人が選ぶであろう1枚。80年代、いやメタル史を通じて最重要バンドの一つであり続けるIron Maidenのセルフタイトルを冠したデビュー作。ジャケットに描かれたミイラ化したパンクスはEddie The Headと呼ばれジャケットごとに様々な変態を繰り返し、メタル界で最も知名度があるキャラクターとなりました。
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彼らが最初にデビューを行ったロンドンのThe Cart&Horsesに飾ってあるパネル
右端がスティーブハリス、それ以外のメンバーはすべてデビュー時とは異なる
1975~76年、ベースのスティーブハリスを中心に結成されたバンドは幾多のメンバーチェンジを繰り返しながらギタリストのデイブマーレイ、ボーカリストのポールディアノを獲得。そして1978年の大みそかに4曲入りのデモテープを録音します。北ロンドン、キングスベリーにあったバンドワゴンというクラブを主宰していたニール・ケイのもとに届けられ、ケイがバンドワゴン(ヘヴィメタルサウンドハウス)で定期的に流すようになります。ニールケイはメタルDJとして知られる人物で、当時、一般のラジオ局ではほぼかかることのなかったヘヴィ・メタルという地下音楽を自らのクラブで流し、多くの若者を虜にしていった人物。N.W.O.B.H.M.の初期の震源地とされる人物と場所です。こうしたバンドワゴンでIron Maidenのデモテープが話題となり、後にサウンドハウス・テープとしてリリース。5000本のデモテープが完売。1979年12月にEMIと契約を結び、晴れてメジャーレーベルからリリースされたのが本作です。
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左からクライブバー(Dr)、デイブマーレイ(Gt)、ポールディアノ(Vo)、デニスストラットン(Gt)、スティーブハリス(Ba)
出典
Iron Maidenというバンドはベーシストのスティーブハリスのビジョンを具現化するために作られたバンドです。ハリスはメインソングライターであり、楽曲のビジョンを持っていた。彼のビジョンを具現化するために初期は多くのメンバーチェンジが繰り返され、このアルバムの録音時もプロデューサーが2人クビになります。3人目のプロデューサーであったウィル・マローンがクレジットされていますが、実質的にはあまり機能していなかったとハリスは後日語っています。当時まだ存在しない音像を求めていたIron Maide、ハリスらしいコメントです。次作「Killers」からは80年代を通じてタッグを組むことになるマーティン・バーチがプロデュースすることになり、ハリスのビジョンが一気に具現化していくわけですが本作はその前日譚。13日間という(メイデンの他のアルバムと比べると)短い期間で録音され、後のメイデンとは異なる荒々しいプロダクションです。
※はじめて当連載に来ていただいた方は序文からどうぞ。
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メタル史 1980-2009年
1980年から2009年までの30年間のメタル史を時系列で追っていきます。各年10枚のアルバムを選び、計300枚でメタル史を俯瞰することを…
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