74.実家のCD棚探索記2:世界各地のCDショップで手に入れた音楽
実家のCDラックから発掘第二弾。今回は世界各地のCDショップで手に入れたCDを紹介してみます。
2000年頃、友人がワールドミュージックのインポーターをやっていてちょっとお手伝いをしていました。一緒にイベントに出店したり、ライブの準備をしたり、アルバムの歌詞を邦訳したり、トルコのフェスを見に行ったり。そんな中でワールドミュージックの多様さ、新鮮さに触れてDIGるようになりました。で、世界各地に旅行した時には現地のCDショップに行って店員に「何が面白いですか」とレコメンドを聞いて手に入れたCD達です。やっぱり日本にいると現地の情報って得づらいんですよね。非英語圏は特に。ブラジル音楽は多少情報が入ってきますが、インド、タイ、その他アジアとか、あまり情報がない。やはり現地で知ったCDは日本で普通に音楽をDIGってるとなかなか出会わないCD群です。
ではまずはトルコ、イスタンブールで手に入れたCD。2002年か2003年だったと思います。
バーラマ(サズとも)という弦楽器の奏者が3人で組んだトリオで、インストゥルメンタル。バーラマは6弦ないし7弦のギターとマンドリンの中間のような形をした楽器で、少したわんだ音がします。
このアルバムがすごくよかったんですよね。独特の響きがあって。自分でも弾いてみたくなってバーラマを買って持って帰ってきました。ただ、チューニングが独特でその後上達していませんが、、、。
このアルバムの音源、レーベルが公式チャンネルでアップしていました。いい時代になったものです。
いわゆるトルコの伝統音楽なのですが、このアルバムは特に洗練されているんですよね。この後いろいろとトルコ音楽は聴いてきましたが、いまだにお気に入りの1枚。ただ、日本語圏でこのアルバムを取り上げた記事はほかに見たことがありません。
改めて調べてみたらアーティスト名がBengi Bağlama Üçlüsü(ベンギ・バーラマ・トリオ)。それぞれ名がある3人の奏者が組んだ、いわば「スーパーギタートリオ」のバーラマ版のようですね。リリースしているレーベルはKalanMüzikで、イスタンブールのインディペンデント・レーベル。1991年に設立されたレーベルで、この作品は1999年のリリース。少数民族を含めたさまざまな伝統音楽をリリースしているレーベルで、今ではトルコ政府が自国の文化を広めるための広報CDとして配布などもしているようですが、一時期はクルド人のCDを出していた(1980年のトルコのクーデター後に法律が可決されたため、特にクルド語(分離主義者と見なされる)では、少数言語での歌が禁止された)ため、1992年にクルド音楽のリリースにより、創業者が法廷に送られた過去もあります。なかなか気骨がありますね。
続いてモンゴル。これは比較的最近で2016年です。ウランバートルのCDショップで手に入れた3枚。
モンゴルは国内に独自の音楽シーンがあり、いわゆるグローバルヒット(たとえばマイケルジャクソンとかビヨンセとか)だけでなく、自国のCDも流通しています。むしろCDショップだとそうしたほうが前面に出ていたり。日本にいると邦楽/洋楽というくくりがありますが、自国の独自の音楽シーンがある国は数少ないので、モンゴルぐらいの規模でそうしたシーンがしっかり確立されているのはむしろ希少。独立独歩の精神というか、やはり大モンゴル帝国を築いた自負を感じます。
ただ、絶対的なアーティスト数は少ないので、比較的ロングセラーになるそう。国内の有望アーティストの新譜、となると年数枚とかなので、数か月とか数年単位で「注目盤」扱いされるようです。この3枚は「注目盤」ということでディスプレイされていましたが、それなりにリリースされて時期は立っていたはず。1店舗しかCDショップに行けなかったので(そもそも店舗数もあまりない)、この店の方針なだけかもしれませんが。
まずは左上、「The Lemons」。
モンゴル国内ではとても人気のあるバンドのようで、このPVも200万回以上再生されています。「モンゴルらしさ」はあまり感じず、そうだなあ、中国ロックやK-POP、J-POPに近い、洗練されたアジアンポップスを感じます。
The Lemonsは2004年結成、2006年デビューで、デビューアルバム「RED」はモンゴルで初めて成功したロックバンドのアルバムだったそう。2021年現在までに4枚のアルバムをリリースしており、私が手に入れたのは3枚目で2015年リリースの「Ⅲ」。上の曲はこのアルバムから彼らの代表曲です。2019年にはSXSWにも出た模様。
続いて右上、A-SOUND。
これは邦楽、歌謡曲にも通じるバラードですね。
soundcloudにページがありました。けっこう全体的にはシティポップスというか、日本の音楽の影響も感じます。
最後が真ん中のNatsagiin Jantsannorov。モンゴルの大物作曲家で、これはなんだろう、TVか映画のサントラなのかな。アルバムタイトルが「burkhan khaldun」ですが、これはブルカン・カルドゥンという地名(山の名前)でチンギス・ハンの故郷にして墓所ともいわれ、聖地とされている場所です。
大河ドラマの主題歌のような雄大な音楽ですね。最初はオーケストラからスタートしますが途中からホーメイ(喉笛)も入ってきて一気にモンゴルらしさが増します。伝統音楽。
続いてインドネシア、バリ島に行ったときに手に入れたもの。たぶん2007年とか2008年ごろだったと思います。
まずは「Nyanyian Dharma 2」。これは「Nyanyian Dharma」というプロジェクトの2作目のようです。主催者はDewa Budjanaで、インドネシアを代表するロックバンド「GIGI」のギタリストにしてリーダー。2007年リリース。
ジャケットの通りどこか母性を感じるというか、スピリチュアルな作品。実際に何かのチャリティーなのかな? Dharma(達磨)チャント(聖歌)というプロジェクトですし。独特の透き通った感じがするアルバムでした。
インドネシアからもう2枚。上がPeterpan。インドネシアでは非常に人気があるバンドだったようです。
その後、メンバーチェンジを経てバンド名も変わり現在は「Noah」という名前で活動中。驚いたのは、このアルバムを北関東のハードオフで見つけたことがあるんですよね。インドネシアの方が売ったのでしょう。日本での知名度はほとんどないと思いますが、インドネシアでは900万枚以上を売り上げるビッグアーティスト。なんとなくスピッツみたいな感じ? ですかね。
下がDewa 19。先ほど紹介したGIGIのギタリストも同じ名前ですが無関係。こちらはバンドです。
手に入れたのは2004年リリースのアルバム「Laskar Cinta」。もともとDewaという名前でしたが、このアルバム以降「Dewa 19」を名乗るようになったとのこと。アルバムタイトルの書体がアッラーに似ていた? とかでイスラム防衛戦線(Front Pembela Islam)と揉めたそうです。国が違うといろいろありますね。2000年代初頭のラウドロックサウンド。あまりPeterpanとDewaは「インドネシアならでは」感は薄いですね。アジア感はありますが。
本日最後は日本のバンドで。沖縄、那覇市の桜坂劇場で入手したアルバム。桜坂劇場は那覇市内の劇場というかライブハウスで、書店やカフェも併設。書店というかヴィレッジヴァンガードのようなさまざまなコンテンツを売っていて独自のレーベルも持っています。その独自レーベルからリリースされたアルバム。
マルチーズロック
沖縄県那覇市の栄町市場を拠点に活動を行うマルチーズロックは、1997年、ボーカル・ギターのもりとを中心に結成された。パンクロック、ブルース、フォーク、ジプシー音楽、沖縄民謡、etc。あらゆる要素を貪欲なまでに吸収したその音楽は、沖縄という深いルーツを感じさせながら、ユニバーサルな広がりを持つ。
魂を吐き出すようなもりとの歌声も相まって、どこにもないオリジナルな輝きを放っている。本作『ダウンタウンパレード』は、彼らの3枚目のオリジナルアルバム。時間をかけてライブを通して練り上げられてきた楽曲からは、生々しくも力強いバンドの息づかいが感じられる。
全体的にソウル・フラワー・ユニオンの影響を感じますが(誰か関係しているのかな)、この曲が個人的にはツボ。沖縄でしか歌えないロック。
以上、いくつかの旅の思い出をCDと共に巡ってみました。現地でなければ出会えない音楽というものも、まだまだある気がします。
それでは良いミュージックライフを。