2021年2-3月のベストトラックス
2-3月のベストトラックスを振り返ってみます。アルバム単位ではなく「トラック」。曲単位のベストです。2月半ばからMetallica全アルバムレビューを行ってからベストトラック振り返りをやっていませんでした。まずは2-3月。計23曲。この時まで書き溜めていたアルバムレビューがあったので時差があったのですが、Metallicaレビューの途中でほぼ在庫が尽きたので、4月以降はリアルタイムのレビューになっています。この時まではしばらく前に聞いたものをアップした記事も多い(だから2020年ベストに入れたアルバムが入っています)。
ジャンルとしてはけっこうカオスですね。特に年末、ベストアルバムを選ぶために集中して激烈系の新譜を多めに聞いたのでいろいろなものが聞きたくなってバラエティが増えています。旧譜も増えていますね。途中、レバノン、パキスタン、トルコ辺り、中央アジア~中近東を結構掘っています。後、大曲が多い。9分越えの曲が6曲もあります。これだけで1時間(!)。やや長めですが楽しんでもらえれば幸いです。ジャンルに統一感はありませんが、世界各地の様々な音楽とロックの融合、といったテーマでしょうか。意外に通底するメロディがあるような気もします(選んでいる人間が同じなので好みが出たのでしょう)。
各曲の解説とアルバムレビューへのリンクです。
4 Step Into You 4:04
コード展開が進行する、これは歌モノ的なコード感
最初からコードが結構進行している、コードカッティングがそのままリフになっている
ボーカルが入ってくる、ちょっとブルーオイスターカルトっぽいメロディライン
歌い方が穏やか、ああ、「冷たい狂気」か
このバンドからはあまり狂気は感じない、喜怒哀楽を含んだ平常、日常、といった感じがする、等身大というか
その描き方が「なるほど」と思う
何気ないメロディ、だが轟音というか、音の塊でかき鳴らされる
音の塊はヘヴィ、いろいろな音が飛び回る、ボーカルは淡々と歌っているが存在感はある
ギターリフも入ってくる
★★★★★
11.Varangians 3:56
牧歌的なフレーズ、伝統楽器、バグパイプだろうか
明るめのメロディ、メジャーコード、今まではマイナー感が強かったが雰囲気が変わった
戦闘が終わったのか
と思ったらグロールが入ってきた、ここで怪物かよ笑
これ味方のドワーフか何かなのか、いや、ファンタジーじゃないのか、単に味方の海賊かもしれん
じゃあ女声ボーカルはなんなのだ、妖精なり人魚なりかな
そういえば歌を歌う女声の妖精とか人魚はバイキングにけっこうあるな、たいてい海に引き込まれるが、海の乙女
後はヴァルキリーか、戦乙女
曲は勇壮に進行、クラシックの合唱曲のようでもある
これは突き抜けていていいなぁ、伝統音楽的な色合いが特に強いが、メタル的なエッジも入っている
この音像はこのバンドらしさかも、NightwishよりEluveitieに近いが、もっと伝統色が強い
★★★★☆
1.A Whisp Of The Atlantic 16:31
波の音、ピアノの音が入ってくる、やや不協和音
そこからクリーントーンのギター、アルペジオ、ピアノと絡み合う
和音がクリアになり美しいメロディを奏でる
ところどころやや和音が崩れる
ドラムイン、ボーカルも入ってくる、中音域でクリーントーン、ゆるやかでプログレ的な音像、抒情的
ギターが入ってくる、ノイズ成分が増す
刻み感が強くなりヘヴィネスが強調される、ボーカルもグロウル気味になるがメロディはある
クリアトーンに戻りメロディアスなパートへ
ピアノが入ってくる、美醜、儚い音とゆがんだ音が交じり合う
クリアトーン、グロウル、ギター、サウンドレイヤーの足し引きでかなり展開していく、ここまでは同じメロディモチーフ
場面が変わる、よりリズミカルなパートへ、ドラムが四つ打ち的な、ボーカルも歯切れよくグロールを吐き出す
ややバイキングメタル的な、蛮勇なパート
ギターがメロディを奏でる、そこから展開してボーカルがメロディアスに
ちょっとVAI的なフレーズがギターで入る、無国籍というか、不思議な響きだが心地よい
全体としては和音は美しい、キラキラしたキーボードの音もところどこに入ってくる
ツーバスが激走し、じっくりと盛り上がるボーカルメロディ、コーラス
そこから激走のグロール、ブラックメタル的なパートへ
また美しいコーラスへ、この美醜の切り替えは極端だが流れるようにつながる、これはこのバンドの個性
グロウルパートもギターやキーボードのメロディは豊富で、音もやや丸めなので残虐性もありつつ美しさは消えない
そこから静謐なパートへ、管楽器も入ってくる、サックスだろうか
美しいピアノの旋律、そこからギターが入ってきてアグレッションが強いヘヴィパートへ
リフはサバス的なドゥーミーな響きから美しいツインリード
色々な要素が絡み合う、歌メロはドゥーム
ドゥームからのファンタジックなメロディへ、クリーントーンとグロウルがまじりあう
メタルのさまざまな要素をうまく組み合わせている、作編曲が上手い
各楽器隊はそれほどテクニックでは押してこない、全体のうねりがあるし、曲展開はこれだけ複雑でありながら自然に流れていく
スクリームが入り、勇壮というか盛り上がる、パワーメタル的な音像に
こういうスクリームをするとは
と思ったらプログレ的な音世界に、変拍子が入りやや無調の、フュージョン的なギター、Flower Kings辺りの
もちろんもっとエッジは立っているが
さらに展開してアップテンポ、ツービート、スラッシュリズムに美麗なコーラスが乗る、美麗なコーラスは主旋律
なんだこれは、凄いな
間奏前のコーラスとグロールが交互に出てくるパート
さらに速度が上がり、グロールながらメロディ感が増す
クライマックスから音圧が減り、民俗的なメロディ、ボーカルが中音域でメロディを紡ぐ
曲の出だしにあったパートに戻る、幻想的で穏やかなパート
音が止む、終曲したかと思ったらSEのつながりからピアノが音を奏でだす、ジャジーな、(フュージョングループの)Fourplayのような落ち着いた雰囲気のパートに、なんだこの落差は
どういう描写なのだろう、思い出をジャズが流れる酒場で語った、みたいな設定なのか
最後、1分半ほどジャジーなパートが続いて終曲、なんだこれ、北欧ギャグなのか、、、クオリティは高いがこのパートは謎
演奏できうる限りのあらゆるジャンルをぶち込んでみる、という挑戦なのだろうか
いずれにせよいい曲、「プログレ」というくくりで今年ベストに近いかも
プログレ・メタルだとHakenのマシンメサイアほどの緊迫感、超絶技巧によるせめぎ合いはないが、純粋なプログレとして名曲
★★★★★
10.Deep Down
ややヒップホップ的なドラムサウンド、とはいえちょっと古いサウンドだな、90年代的な
意図的なのだろうけれど、お、そこにブラスの音が入ってくる、キーボードっぽい音
リバイバル感、2020年のリバイバルサウンドをさらに進めたような
古いけれど新しい音、この曲のサウンドメイキングは面白い
これをポールマッカートニーが出しているというのが凄い
ずっと革命児みたいな人ではある、実際に革命を起こし続けたかはさておき、ペルソナとしては革命児
新しいことをずっとやってきつつ、どこか浮き立つような、サイケでポップな空気感がある
音が若々しい、なんだこれ、面白いな
これポールの曲とは言われないと分からないんじゃないか、6曲目と10曲目は目新しい
なんだっけ、長いタイトルのアルバム、裏庭のクリエイションみたいなのもけっこう実験的な音は感じたが
こういう「あらためて今の黒人音楽に向かい合う」みたいなのはなかったなぁ
これはNEWあたりから入ってきた要素か
何かなつかしさと新しさがある、ジャネットジャクソンのベルベットロープみたいな空気もあるなぁ
ローレンヒルとかアレステッドデベロップメントとかジュラシック5とか
でもポールという
これがベストトラックかな
★★★★☆
3.Uusi Teknokratia
リードトラック、フルートの音が響き印象的
それとポリリズムのギターリフ、ベースとドラムが絡み合う、これはイタリアンプログレ感が強い
PFMにもこういうポリリズムの曲があったような
音像でいえばOssanna(オザンナ)に近いのか
ボーカルは呻き声、歌心はないのでボーカルが入ってくるとイタリア感はなくなる
あまり他に似ていない、この反復感はクラウトロック的ではあるのだけれど、フレージングとか、ボーカルの狂気性はやはり北欧、フィンランド
なんだか日本語のようにも聞こえるな、歌舞伎役者が見栄を切る口上のような響き
緊迫感が続く、しかしどうしたらこういう音像にたどり着くのだろう
どこかでやけくそになったのだろうか
音の反復とか重ね方、展開の仕方はセンスがある
でも、こういうバンドって「表現したい願望」があって、この音像が「これだ!」とたどり着いたものなのだろうか
それとも「オリジナリティ」という未踏の地を目指して結果としてここにたどり着いたのだろうか
結果として不思議な、自分たちの手を離れたものが生まれていくのだろうか
ジャンル的にはクールでダークな音像のハードコアなのだろうか
うーん、なんというかフレッシュさはある、初期衝動というか本能的、ボーカルは
演奏、特にリズム隊には理性を感じる
とか書いていたら間奏部ではかなり熱を帯びてきたな、バンド全体が走り出す
ただ、暴走はしない、統制されている
きしむような音、いや、ガラスの空間にこだまする様な音か
不思議な音世界だが、インペリアルトライアンファントよりは全体的な不協和音感は少ない
ネプチュリアンマキシミズムよりは曲は分かりやすい
・・・今年はけっこう先鋭的な音楽を聴いたなぁ
この辺りは「体験」として面白い、いわゆる「歌」とか「演奏」とか「曲」というより「体験」
★★★★☆
01.Angel of Darkness
ここから第二章へ
アコギのアルペジオとコーラス、バンドが入ってくる
これはリードトラックでMVにもなってたな
民謡的なメロディ、そうそう、歌謡曲と言ったが、民謡的でもある
まぁ、そこはけっこうシームレスなのかもね、日本的なメロディというか
なお、民謡も西洋音楽だからね、明治~大正に作られた曲が多い、西洋音楽を日本人なりに解釈した、というか
だから、イギリスのロックにちか、あれもアメリカの黒人音楽(ブルース)をイギリス人が解釈して生まれたものだから
絵で言えば、日本の浮世絵をヨーロッパの画家が解釈したのが印象派だし
そういう「異文化を自分たちで解釈する」ことで新しいものが生まれることは多い
伝統的なもの、血肉となっているものに対して新しい刺激を得て客観性を得られるのかな
従来の型から異なる視点を持って脱却を図り、そこから一つ新しい型が生まれていく
とはいえ、価値観とか好みがすべて変わることはないからね、結局作っている人の審美眼とか基準を培ったものは伝統的な環境だから
なので、ハイブリッドのものが生まれる
日本のメタル、というのもそういうもので、70年代HRを日本人、歌謡曲・民謡土壌の人たちが解釈したわけだ
GSもそうだけれどね、エレキブームからのビートルズを代表とするブリティッシュインベンションを解釈して生まれたもの
だいぶ話がそれた、曲が展開している、歌メロが美麗になっている
この曲もさまざまな要素、アイデアが詰まっているなぁ
プログレ感もある、プログレもジャパニーズプログレというジャンルがあり同じような、、、
おっと、終曲
★★★★☆
6.Shuriken Showdown
今度は手裏剣か、ツッコミたいがそろそろ「好きにしてくれ」という気分になってきた(良い意味で)
ほほえましい
どの曲もテンションが変わらないんですよ、まぁ、疾走感は一曲目が今まででは一番全力感があったけど
かといって聞き飽きない、なんだろう、似た感じなんだけど
心地よい音像が続いていく
ポップス好きな人はたぶんテイラースウィフト(新しいインディーフォークっぽい2作じゃなくて昨年以前ね)のアルバム聴くと心地よいんだろうなぁというのは分かるんですよ、個人的には好きでも嫌いでもないんだけど
同じようにパワーメタル好きなら流していて心地いいアルバムだと思うなぁ
あ、スクロールやグロールなどのエクストリームなアグレッションやダークでゴシックな感じはほとんどないのでそれをメタルに求めてる人には合わないと思うけれど
おお、この曲は微妙なマイナー感がいいねぇ、サビのメロディは哀愁もある
歌詞が「手裏剣ショウダウン」なのがアレだけど、通だねぇ
★★★★★
4.עץ שנופל
幽玄なパーカッションの響きから
ピアノとギターが入ってくる、少しベースがルート音にテンションをかける
フルートが入ってくる、優雅な密林、生い茂った何かを感じる、都市かもしれない
いくつもの要素が絡み合った構造物、美しいメロディが重なり合う
女声ボーカルが歌メロを囀る
この曲はブラジル音楽(MPB)的な感じも少し受ける、メロディが流麗
独特のコード進行、メロディ感、Lola Marshも流れるようなメロディがあったなぁ、イスラエル的なメロディってこういうものなのだろうか
この曲はフレンチポップス感もちょっとあるなぁ、コード感が変わるところとか、ちょっと語尾が鼻に抜けるところとか
密度と深度が濃い良曲
★★★★☆
7.Phantom 04:36
雰囲気が変わりバラード的、歌メロの印象が強い
ボーカルが歌い上げる、バッキングはジェント的だがインド的、パキスタン的バラード
BloodywoodのYaadでも感じたが、なんというか山岳地帯っぽいメロディ、雄大さと登っていくようなメロディがある
途中から場面展開して言葉が小刻みになっていく、雰囲気が変わる、浮遊する様な
ドラムの手数は多い、これ一人でやってるのか、パーカッションはないよな
手数が多い、先ほど書いた通り「速い」というより「細かい」
ポリリズム感が強い、タブラ的(あそこまで高速、どこまでも時間を分割していく感覚まではないが)
ギターが刻む、カッティングとリズムがポリリズム
この辺りの緊迫感の作り方は中央アジアの伝統音楽にも通じるな、HaSsaKとか
やはり曲構成というか、発想の原点が西欧とは少し違う気がする
当然、国が違えば音楽シーンも違い流行も違う、自然と耳に入ってくる音楽が異なるから影響が出る
★★★★★
5 Ghoom
かなり瞑想的な曲
少し展開はあるがゆったりしている、とはいえ単和音で引っ張る感じでもない
きちんとメロディはロックの曲としてコード進行ともども展開する
ヌスラットファテアリカーンのスワンソング(西洋のアーティストとのコラボライブ盤)をもっとバンドサウンドにして進化させたような
その分、音数は減っているけれど
途中から世界観が深まる、やや伝統音楽職が強まる
これだけミニマムな構成で音世界を作りあげるのは大したものだ
カッワーリーは多くの歌唱者がかかわる、パーカッションも大人数だ
バンドのオーケストレーションを活かしている
★★★★☆
1.Piya 05:46
空間的なピンクフロイド的なギターからスタート
ボーカルが入ってくる、音世界が変わる
瞑想的な、ラーガのメロディ、中央アジア歌唱
音は静謐
ギターが入ってくる、ギターはエッジが立っていてプログレメタル的
変拍子のドラムが入る、プログメタルにアラブ歌謡というか瞑想的なメロディを穏やかで伸びやかな声が歌い上げる
良い声、この辺りの中央アジアと西洋音楽の要素の組み合わせが凄いな
歌メロも良い、インプロ的ではなくきちんと構築されていてポップなエッジがありつつメロディに媚びたところがない
自然さ、真摯さがある、色で言えば白、白い壁と日差し、乾いた空気
ギターソロは空気を換える、少しテクニカルなギターと連打されるドラム
ドラムはリズムが小刻みに刻まれる、やはりタブラ的な影響、マスロック的な影響も多少あるかも
ところどころの連打が強い
★★★★★
1. Mayusee 09:11
ラジオをつけるスイッチの音、ノイズと共にナレーションと古い映画音楽、軍楽的な音が流れる
ノイズが続き、キーボードの音が響く、ギターが入ってくる
空間的なギター、Faraz Anwarだな
リズムが変わり、ややファンキーに跳ねる、リフが入ってくる
意外とミクスチャー的なスタート
歌メロはパキスタン的、ミクスチャーではあるが、節回しと、言葉の響きが違う
ふとムスクの香りを感じた、お香というか インドやトルコの香りを思い出す
記憶を呼び覚ますとはなかなか濃厚な音らしい、なにがそう感じるんだろう
何かギターの音色がちょっと焦げた感じがする、うーん、説明しづらい
歌メロが展開し、ラーガ(北インド音楽の旋法)のような、、、自由な音階になる
戻ってリフに、ヘヴィでミクスチャーなグルーブだが、全体としてはプログメタルか
音はややリバーブがかっていて古さはあるものの2000年代の音、それなりにモダンだしプロダクションもパキスタンということを考えると予想より良好
西欧のバンドに比べると低予算だと思われるが、パキスタン国内にはそれなりに録音スタジオがあるのだろうか
映画産業とか盛んそうだからな、映像もやっているバンドマンが多いようだし、それなりに設備は整っているのだろう
ギターソロはけっこう弾きまくっている、ツインリードなのだろうか
ドリームシアターの後、たくさん出てきたテクニカルプログレメタルの流れにあると思うがメロディが独特
あと、ギターソロの音色がちょっとスティーブヴァイっぽいというか、フュージョン系の音色
けっこう特徴的な音をしている
最後、同じリズムで同じフレーズをかなり繰り返す、酩酊的、ちょっとスペーシー、スペースロック的
★★★★☆
10 Blue Motel 4:51
ゆらめくコード、ゆったりとしたリズム
ブルーモーテル、か、憂鬱なモーテルだろうか、本当に青いのか
ホテルカリフォルニアよりももっと本質的な諦念というか、清々しさ
キャリア絶頂期でスターだった若者たちが諦念を歌ったホテルカリフォルニアもそうだが
半ば隠遁した78歳が歌う諦念、郷愁は凄味というか透明感がある
こちらはその分アクがないけれど、純化された郷愁のような
★★★★★
9 Citizen Herd 9:58
これ、LPだと2枚組に分かれている、それほど長いアルバムでもないはずなんだが
全部で1時間ないぐらい、1枚組にもできたはずだが2枚組にしたのは意味があるのだろう
実際、ちょうどよく感じる、音の密度が濃いから15分おきぐらいに休憩(盤をひっくり返す作業)が入るのがちょうどよい
この曲は浮遊感がある
途中からメタル的な質感のあるリフに、ただ、どことなく緩さがある
ちょっと中東的、北アフリカ的なフレージングを弾くキーボード
ユーモラスでもある、なんというかちょっと胡散臭い、変なSEも入る、ザッパ的
キーボード、ハモンド的な音でソロ
音が絡み合う、けっこう間奏で表情が変わる
これは面白いな、長尺曲なんだがいわゆるプログレの手法とはまた違う
長さを感じさせない、という点では似ているのだけれど
いろいろなパーツが出てきて世界観が変わっていく
ちょっとエレクトロニカ的というか、反復する電子音、この辺りも2020年にも通じる
こういう音像は2010年代前半にはすでにできていたのかなぁ
だんだんと盛り上がっていく、心音が停止したような、高音が続き去っていく
終わりかと思ったらまだか、静謐なパートへ
哀愁のトランペット的な音が入ってくる、ボーカルが戻ってくる
祈りのような、オペラティックというか、歌い上げる感じの声、バリトンだがそんなに「いい声」というわけではない、そういう発声法をしているだけ
この辺りが人を食った感じというか、本気だかなんだか分からない、Zappa的
ボーカルパートで終曲、やけに壮大
★★★★★
5.The Undertaker 5:38
アルペジオとギターメロディ、メタリカのバラードみたいなスタート
とはいえメロディセンスはクラシカル、ウルフホフマン色が出ている
そこからベースの刻み、安定したドラムに
おや、ディスコみたいな曲だな、一定のリズムにメロディアスなボーカル
あるいはホラー的というか、Powerwolfとか
雄たけびコーラス、こういう「展開しないボーカルライン」と「コードの展開」でサビを盛り上げる手法が本当に上手い
メロデス的でもある、メロデスの源流ってもしかしたらAcceptなのかな
ボーカルが一定のメロディ(あまり音程が変化しない)で、コードパターン、ギターの方が変化して開放感がある、みたいなのはこのバンドの持ち味だよな
間奏、かっちり一定の小節ですべての楽器が着地する、こういう「着地感」はドイツらしくて好ましい
カラスの鳴き声で終わり、カッコいいな
UDO在籍時のような曲、だんだん「らしさ」が出てきた
★★★★☆
10.Sincerely Yours 3:39
ドタバタと走りながら言葉を詰め込んでいく
ハードコアマナー、音像はかっちりしている
なるほど、メタルコアというのは音像がかっちりしているハードコアか
で、そこにちょっと前衛的だったり、音の浮遊感とか、メロディアスになるとニューコアか
メロディックメタルコア、でもいい気もするが、、、
このアルバムは比較的オールドスクールなメタルコアなのだろう
ボーカルメロディにメロディ様子は薄い、ギターには適度なメロディがある
メインボーカル×コーラス隊の掛け合いがかっこいい
お、Die! Die! Die!だ、Manowarか!
悪くない、いやむしろ良いね
ややホラー風味なエンディング
★★★★☆
6 Khwaab
打って変わって穏やかな音像に
瞑想的
伝統音楽色が強まった、だんだん盛り上がってくる
うん、ヒンディーロックとしても完成度が高い
もうちょっとリズムが暴れまわる、暴虐性という意味ではなくタブラとかの「細かいリズム」という意味で、といいのだけれど
けっこう聴きやすく、シンプル感があるが
とはいえそれは「洗練されている」ということだな、音が洗練されていて破綻がない
この曲はいいなぁ、メタル色は薄目、もっと普遍的な「ロック」的な音
後半ちょっとアップテンポになるが、あくまで「ロック」の範疇、そんなにザクザクしたリフは出てこない
面白い、凄いなこのバンド
途中、見事なボーカルパフォーマンス、声を震わせながら音程が上下する
ギターソロならぬ「ボーカルソロ」
こういう「楽器をボーカルでやる」のは北インド音楽の特徴、口ドラムとか、この音程移動もシタール的だし
この曲はアルバムの流れの中でハイライト感が出てくる
アグレッションは(前半の曲に比べると)やや薄目ながら色々な要素がうまくかみ合っている
後半に向けて盛り上がっていく、そうそうこれ
「後半に向けて盛り上がる」が北インド伝統音楽とかカッワーリーの醍醐味なのだ、陶酔感というか
★★★★★
4 I Saw A Car 3:39
ザッザッとした行進的な、足を踏み鳴らすリズム
曲は「車を見た」という歌いだし
何だろうこれ、戦車だろうか、どこか緊迫感と哀切さがある
マイケルジャクソンにこういう曲合ったなぁ、HIStoryにはいった新曲で
ヴァースだけリズミカルで、ブリッジからコーラスはメロディアスに舞い踊る
緊迫感が高いブラックモアズナイトというか、ルネサンスというか
音数で空間を埋める感じではなく、シンプルで隙間もあるのだが編曲自体は凝っている
さまざまな音やメロディが絡み合っている
リフもしっかりある、ギターリフ
★★★★☆
10.Maçka Yolları 3:40
うねるベース、軽快なリズム、カッティングギターも入ってくる
不思議なディスコサウンド、エキゾチック人力ディスコ
踊れるな
これはクオリティが高い、スリリングだけれど抑制されていて、洗練されている
耳を奪われる、音程がやはり独特だし
トルコだとislandmanも洗練されたジャズロックだが、Altin Gunも負けていない
こちらも新世代トルコバンドの旗手だな
イスラエルのPinhas&Sonsといい、こういう洗練されたスリリングさはこの辺りのバンドはうまいね
★★★★☆
7.PERSONAL SHOPPER
機械的な、加工された音像、テクノ的な
裏声で進む、かっちりしたジャーマン感
勢いのよいコーラスが入ってくる、面白いなこのアルバム
どの曲も緊迫感があるがメタル的語法には頼っていない、歪んだ音、ディストーションではない緊迫感
さまざまな音色、ジャーマンテクノの冷徹な感じも受ける
やや暗黒的なテクノ・プログレ・ロックというか
この曲10分近くあるのか、大曲
途中で語りが入る、やや瞑想的な、チャントが後ろで微かに聞こえる
さまざまな商品名やサービス名が連呼される、タイトルと言い、消費文明、社会がテーマかな
四つ打ちが入ってくる、ダーク・トランス・プログレッシブ・ロック
ダンサブルなコーラス、複数の声が絡み合う
★★★★★
1 Inside The Gage 11:13
歯切れのよいリズムでリフがスタート、少し流れるようなメロディというか、中東・アラブ的なフレージング。ミラスにも近いものを感じる。リフからシーンが展開してアルペジオに、ボーカルが入るまでにけっこう展開する。ややYESのような、スティーブ・ハウのようなアルペジオ。ボーカルが入ってくる。ボーカルはコーラスと絡み合う、このあたりのボーカルが絡み合うのも中東感がある。ボーカルは熱量がある。こちらもイタリアのフロンティアレコードからのリリース。なので、爽やかでメロディアスな要素がボーカルパートにはある。ただ、そこまでキャッチーさはこの曲にはない。メロディアスだがやや難解。長尺曲だけあり、シーン展開が激しい。パキスタンのTakaTakにも近いものを感じる。途中、じっくりと尺をとってギターソロに入っていく。ギターソロは中東的。
ギターソロ終わりから、別のリフ、跳ねるようなリフが入ってくる。このあたりはいかにもプログメタル的というか、ややポンプロック的な展開。キーボードソロが入ってくる。キーボードの音色はメタル色は薄めでネオ・プログレ、ポンプロック色が強い。いいなこの曲。歌メロもいい。
★★★★★
1 Last One Turn Off The Lights
ブギというか、ノリの良い曲。このバンドらしい少し湿り気のあるメロディがたまらないキラーチューン。英国ロックの佳曲。今作の掴みはOK。ちょっとビハインドスルージドアを思い出した。
★★★★★
6.Pappa Med Vetorätt = Pappa (With Right Of Veto) 4:30
原始的な、雄叫びのような声が入る曲。面白いなこれ! イタリアンプログレのOSANNNA的な、土着的、呪術的なものも感じる。ギターソロがサンタナ的。ラテンで粘り気があるということ。どうして北欧からこういうのが生まれるんだろう。狂乱が収まり、終わったかと思ったら、落ち着いた中で雄叫びは続く。なんとなく和的なものも感じる。ペンタトニック・スケールが祭ばやしを想起させるのかな。
★★★★☆
それでは良いミュージックライフを。