41.2000年代のジャーマン・メタル = POWERWOLF
POWERWOLFは2005年デビューのパワーメタルバンドです。人狼や吸血鬼をモチーフにしたビジュアルで、コープス・ペイント(白塗り)ルックスが特徴。前回紹介したオカルト・メタルにも属するゴシックで重厚な世界観を持っています。
ジャーマン・メタルと言えば本来的には「ドイツのメタル」という意味ですが、日本だとHelloweenを筆頭とするキャッチーで共に歌えるメロディーラインを持ったオールドスクールなパワーメタルの印象が強いでしょう。代表的なバンドはHelloweenのほかにBlind GuardianやGrave Digger、Rage、Running Wild、Gamma Rayなどでしょうか。80年代、90年代初頭にデビューし、今でも現役で活躍しているバンド群です。POWERWOLFはその系譜につながりつつ、2000年代デビュー組として新時代の空気も感じるバンドです。
他にも音楽大国ドイツのメタルシーンにはさまざまなバンドがいます。今日はいわゆる「ジャーマン・メタル」に限らず、2000年代にデビューしたドイツ産のバンドをいくつか紹介していきましょう。音楽性に共通項は少ないですが、やはりメロディセンスに「ドイツらしさ」を感じます。2000年代以降、ヨーロッパのメタルシーンは北欧からどんどん新しいバンドが出てきていますが、ドイツのバンドは北欧のバンドに比べるとよりメロディーの展開は控えめながら曲の作りが精巧で、スピードチューンよりもミドルテンポでぐいぐい押してくる曲に魅力がある印象があります。
まずはエクリブリウム (Equilibrium)、2005年デビューで、ゲルマン神話などをモチーフにしたエピック(物語)・メタルやフォーク・メタルに分類されるバンドです。メロディックながらそれが「泣き」よりは「雄々しさ」の方に行くのがジャーマン感があります。かっちりとメロディーも完結するんですよね。きちんと最後まで歌い切る、というか。なお、このバンドは以前、BEER METALの記事でも取り上げました。何しろビールの本場なので、ドイツのバンドは酒飲みの歌も多いです。TANKARDもドイツのバンドですね。
続いてオブスキュラ (Obscura)。2008年デビュー(自作Demoを含めれば2003年デビュー)のミュンヘンのテクニカル・デスメタルに分類されるバンドです。今までの2バンドに比べると疾走感強めで重厚感は減りますが、やはり雄々しさを感じるコーラスと、展開が複雑ながらも強い連続性を感じるかっちりとした曲構成など、ドイツ感があります。
リーヴズ・アイズ(Leaves' Eyes)は2004年デビューのバンドです。2016年にボーカルが交代し、新Voがフィンランド人なのでやや北欧的な一面もあります。テーマも北欧神話やヴァイキングについて歌っています。とはいえ、曲作りはドイツ的で、かっちりと完結したメロディです。ドイツのメロディは予測しやすいというか、予想外の展開があまりありません。あるべきところに収まる気持ちよさ、というか。それがバリエーションの少なさに感じてしまうこともありますが、その整合性がドイツの魅力だと思っています。
最後は少し今までと毛色の違うバンドを紹介します。ジ・オーシャン (The Ocean)は2004年デビューのバンドです。今度は重厚というよりダークでヘヴィーな音像ですが、途中からやはり雄々しさを感じる「歌える」メロディーも出て来るし、プロダクションのクリアさや各パートの整合性にはドイツらしさがありつつ、ちょっと「ずらした」不協和音的なメロディーもあり、新鮮です。9分を超える大曲です。
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