【自家製麺の匠】寡黙にバミー麺を作り続けて50年以上
ふだん、僕はあまり公に話すことはないけれど、実はけっこうな「麺好き」です。
タイ料理界でいうとクイッティアオ、バミー、カノムジーン、クイジャップ、クイジャップユアン、パッタイ、カオソーイ、ミーホッケンと、あれやこれやと食べ巡った軒数は星の数。
クイッティアオにいたっては、語源ともなった粿条(グオティアオ)を求め中国の潮州まで赴き、英語もほとんど通じない現地で麺料理を食べ歩いて記事にしたこともありました。
この記事をご覧いただければ、麺への愛の深さがご理解いただけると思うのですが、そんな僕が以前から抱き続けていた願望がありました。
麺作りの現場が見たい。
工場などでの麺作りも見たいのですが、もっとも興味があるのは自家製麺を作っている現場です。
米麺を自家製で作っている店はほとんどありませんが、バミー麺なら「自家製麺」をうたっている店はけっこうあります。
以前から胸の奥でくすぶり続けていた己の願望を、そろそろ叶えたい。
そうして発案したのが、本記事「自家製麺の匠たち」というタイトルの企画です。
自家製の麺を提供する店にお邪魔して、匠たちの技やこだわりを見聞きさせてもらい、出来上がった麺をいただく。
麺好きにとってこれほどファンタスティックに満ちた企画がありますか!
世のすべての麺好きに捧げる「自家製麺の匠たち」。
第一回目に登場していただくのは、毎朝6時から自家製のバミー麺を作る70歳の匠です。
ほぼ毎朝、自家製バミー麺を作る匠の姿
僕が店に到着したのは6時10分。
2階へと通してもらうとすでに麺作りは始まっていて、小麦粉と卵を混ぜた素地を機械に投入し、攪拌しているところでした。
「使っている小麦粉はこれとこれの2種類。卵は鶏卵ではなくアヒルの卵ね」
齢70歳という匠は、年齢による衰えなどまるで感じさせることなく、撹拌し終えた生地を作業台の上に移動させていきます。
「この竹の棒を使って生地を伸ばしていくんだ」
使用する太い竹は中国産。タイ産の竹はすぐ割れてしまい使い物にならないため、わざわざ中国から取り寄せていると言います。
生地の上に竹の棒を乗せ、片足をひっかっけ体重を乗せて伸ばしていく。
伸ばした生地は機械を通してさらに薄くし、製麺機に入れて麺に仕上げていきます。
ここからは匠の生い立ちや、彼が営む店舗について紹介していきます。
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?