マックの物語(1)
僕が読書教室をオープンしたのが2005年2月14日、
そして、彼と出会ったのは2007年だった。
マックが初めて教室に来たのは
3月18日の日曜日、よく晴れた日でした。
お母さんに連れられたマックはうつむきかげんで
無口な少年でした。
「お~、よく来たね!。何読もうか?」
「・・・」
「ビートたけし知ってる?これ結構おもしろいぞ!」
「・・・」
僕は、思い切りから回りしている、少しは反応してくれよ。
マックは中学生の時に1年くらい不登校になったらしい、
しかし最後の1年間は頑張って通い、この春から
定時制高校に通学するということだった。
お母さんの説明では軽い対人恐怖症で
何に対しても無気力で特に文字が大嫌い。
何でもいいから突破口が欲しかった、
そんな時にボクの教室を知った。
教室内の一通りの説明をして、
読書の効用などありきたりな話をした。
返事をするのはお母さん、
マックは終始うつむき、時折
寂しそうに斜め上方をあてもなく
眺めている。視線は定まらない。
何を見ているんだろう。
僕の教室の読書の仕方は
プロの朗読家が読んでくれた
CDを聞きながら読むという、
子どもの頃の「読み聞かせ」の
ようなスタイルをとっている。
このCDをパソコンに入れて、
速度を調整することができる。
0.5倍~8.0倍、1倍は普通の人が
会話をする速さ。2倍とは単純に
その倍、普通の人が追唱(頭の中で繰り返す)
できる速度、つまり左脳がたえられる
のは3.0倍まで。これをこえると右脳が
頑張らないと対応できない。
マックはパソコンに少し興味を示した。
「おっ、マウスの使い方うまいじゃん」
(何でもほめてやる、そんな気持ち)
「ええ、まあ・・・」
「パソコンよく使うんだ?」
「ええ、まあ・・・」
(おい、おい他に言葉知らないのかよ。)
「まあ、とにかく本選ぼう。何がいい?」
「・・・」
「ビートたけし分かる?」
「ええ、確かテレビで・・・」
「よし!これ菊次郎とさき、これにしよう」
「はい」
おっ、元気のいい声だ、やる気になったな。
いや、いや、いや返事をしたのはお母さんだった・・・(汗)
一人で張り切っている俺(笑)
マックがすごすごと作業を始めた。
そして1倍速でビートたけしの「菊次郎とさき」
を読み始めた。