イタリアでテスラをインキーした話➁
ローマ到着とまさかのトラブル
ローマへ向かう道中、充電トラブルに見舞われましたが、なんとか落ち着いて対処し、出発から約10時間後にようやく目的地へ到着しました。
初めて訪れるローマの街は、鐘の音が響き渡り、石畳が続く風景が広がっていました。これまでテレビでしか見たことのなかった光景が目の前にあり、移動中も遺跡が次々と現れるたびに、感動が止まりませんでした。
到着後、まずは彼女の友人が「旅行中に食べた中で一番おいしかった」と勧めていたパスタの店へ向かうことにしました。本場のローマで味わうパスタへの期待が膨らみ、心が弾んでいました。
駐車場探しに苦戦
しかし、ローマには日本のようなコインパーキングがほとんどなく、基本的に路上駐車が主流のようでした。そのため、駐車できる場所を探すのに思いのほか時間がかかりました。
20分ほど探し続けた結果、ようやく停められそうな場所を見つけました。ただ、そこは車の通行が多く、スピードを出して走る車も多かったため、慎重に駐車を終えた後は、すぐに車を降りて歩道へ移動しました。
その瞬間、思わぬ事態が起こりました。
テスラのカードキーを車内に置いたまま、ドアを閉めてしまったのです。
まさかのインキー
テスラに詳しい方なら、「スマートフォンのアプリを使えば解錠できるのでは?」と思われるかもしれません。しかし、今回はレンタカーであり、事前にアプリの設定などの説明もなかったため、その方法を利用することができませんでした。さらに、車の仕様上、カードキーを中央部に置かないと起動しない仕組みになっていたため、運転中もずっとその場所に置いたままになっていました。
扉を閉めた瞬間に気がついたものの、すでに後の祭りでした。これまでの人生の中でも、ここまで強い絶望を感じたことはありませんでした。
過去に日本で一度だけインキーをしてしまったことがありましたが、その際は電話一本で簡単に解決することができました。しかし、ここはイタリアです。前日に「閉店時間よりも早く店が閉まる」という洗礼を受けたこともあり、今回の件もスムーズに対応してもらえるのか、不安が募るばかりでした。
とりあえずパスタを食べることに
気が動転し、何をすればよいかわからない状態でしたが、とにかくどうしようもないため、まずは予定していたパスタを食べることにしました。
「こんな状況でパスタを食べに行くのか?」と思われるかもしれませんが、他にできることもなかったため、気を落ち着かせる意味でも予定通り行くことにしました。
お店は人気店のようで、行列ができていました。並んでいる間にレンタカー会社へ電話をかけましたが、英語が得意な彼女がいるにもかかわらず、なぜか僕が最大限の英語力を駆使して「インキーしてしまった」ことを伝えることになりました。
電話口のスタッフは「わかったよ!」と気軽な口調で対応し、新しい電話番号を教えてくれました。しかし、その番号にかけてもなかなかつながらず、何度かけても状況は変わりませんでした。
ようやく注文したパスタが運ばれてきましたが、焦りと後悔で味を感じることはできませんでした。「なんてことをしてしまったんだ」と後悔しながら、ただひたすら電話をかけ続けることしかできませんでした。
ゲームセンターの店主の助け
パスタを食べ終えた後も状況は変わらず、持ち帰り用のパスタを持って車の場所へ戻ることにしました。当然ながら、鍵は開かないままでした。
どうすることもできず、近くの人に助けを求めることにしました。そこで、近くにあったゲームセンターの店主に声をかけてみることにしました。
店主の方はとても親切で、話をしっかり聞いてくれた上で、レンタカー会社へ電話をかけてくださいました。しかし、警察には対応してもらえないとのことで、結局警察を呼ぶことはできませんでした。
その後、1時間半ほど電話をかけ続けてくださいましたが、たらい回しにされるばかりで、事態は一向に進展しませんでした。何度も電話がつながりそうな気配があったものの、途中で切れたり、対応してもらえなかったりで、状況は悪化するばかりでした。
現地時間23時になり、店主の方も「もう店を閉めなければならない」と申し訳なさそうに伝えてくださいました。僕たちもお礼を伝え、車の前で作戦会議をすることにしました。
レッカー車の到着と日本人の助け
ようやく電話がつながりましたが、相変わらず長時間待たされ、たらい回しにされる状況が続きました。そんな中、突然「今からこの車を取りに来るそうだよ」と言われました。
「なぜ?」と疑問に思いましたが、おそらく僕たちの説明がうまく伝わらず、「車が故障した」と誤解されてしまったのではないかと思いました。そのため、レンタカー会社がレッカー車を手配してしまったようでした。
レッカー車がやってきた
僕たちが本当に伝えたかったのは、テスラはアプリで管理されており、遠隔で鍵の解除が可能 だということだった。しかし、それをレンタカー会社の支店へ正しく伝えることができず、レッカー車が到着してしまった。
しかも、パスポートは車の中にある。
レッカーのスタッフに「車は壊れていない」と伝え、テスラのバッテリーを見せてもらったが、なぜか理解してもらえなかった。
そして、鍵の開かないテスラにフックのようなものをかけ、ギギギギギ… と音を立てながら無理やり引っ張って積み上げていく。
すると、その衝撃でテスラの非常警報が発動し、プー!! という爆音がローマの街に鳴り響いた。
ただただ、呆然とするしかなかった。
その様子を見ながら途方に暮れていると、先ほど電話で話した日本人の方が駆けつけてくださいました。ローマでは違法駐車によるレッカー移動が頻繁に行われており、レッカーされた場合は指定された場所へ行けば車を返してもらえると教えてくださいました。
今日はすでに遅い時間だったため、とりあえずホテルを手配し、明日レッカー先へ向かうことになりました。すべての荷物とパスポートが車の中にあるため、落ち着いて休めるかどうか不安ではありましたが、どうすることもできないためホテルへ向かうことにしました。
ホテルの予約は中国人の方と日本人の方が直接電話をして取ってくださいました。さらに、日本人の方が車でホテルまで送ってくださることになり、至れり尽くせりの状況でした。
ホテルに到着後、翌日のことを相談したところ、「僕は明日休みだから一緒に行くよ」と言ってくださいました。本当にありがたく、申し訳ない気持ちでいっぱいでしたが、心から感謝し、お言葉に甘えることにしました。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。次回、最終回です。