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WEリーグは短期的な施策に頼るのではなく、徹底したデジマによる顧客育成に注力すべき

先日(9月21日)、WEリーグ開幕戦「ちふれASエルフェン埼玉×日テレ・東京ヴェルディベレーザ」を観戦するため、熊谷スポーツ文化公園陸上競技場に足を運びました。実は、WEリーグを観戦するのはこの時が初めてで、女子サッカー自体も澤穂希選手が現役時代のなでしこジャパン以来でした。

最近、WEリーグは競技よりも経営面で注目を集めている印象があり、理事長(チェア)が交代するニュースなどから、実際の会場がどんな様子か気になり、試合会場へ観戦に行ってみました。

引換券窓口に長蛇の列

グルメフェス併催で、スタジアム周辺は非常に盛り上がっていました


熊谷陸上競技場は熊谷駅からバスで約20分の距離にあります。当日はグルメフェスも開催されており、会場周辺は賑わいを見せていました。


このフェスは自体も絡んだイベントだと思われ(キッチンカーうまいもん選手権)、サッカーの試合と相乗効果を狙ったものに感じました。こうした外部の協力を得ることは、クラブが限られたリソースでイベントを運営する際、非常に効果的だと思います。


一方で、チケット窓口には長蛇の列ができていました。しかし、これは事前に配られた「引換券」を入場チケットに交換するための列だったのです。

昔のプロ野球を思い出す

引換券の交換でチケット窓口は長蛇の列


この光景を見て、かつてプロ野球球団で働いていた頃のことを思い出しました。当時も、新聞社が配布した引換券を手に、窓口で並んでいた観客が多くいたのです。実際、私が手にしたこの引換券も、蕨市役所のエントランスホールに置かれていたものでした。


この試合の観客数は1,673人と発表されました。その中、引換券を使って来場した人がかなりの割合を占めていたと推測できます。


その場は凌げても、次にはつながらない

蕨市役所のエントランスホールに置かれた観戦引換券

WEリーグの課題として「集客」がよく挙げられます。引換券を配って観客を呼び込むのは一見良い施策に思えますが、重要な視点が欠けているのです。それは「誰が来場したのか分からない」ということ。連絡先すらわからなければ、再度の来場をお願いすることもできません。これはその場しのぎの施策であり、次につながらない最大の問題点です。

次につながる仕組みが必要

応援ハリセンが配布される等で盛り上げる工夫も◎

各クラブはファンクラブを作り、ファンとの関係性を強化しようとしています。また、リーグ全体で統一のチケットプラットフォームを導入し、販売を一元化しています(ただし、一部のクラブは例外)。ファンクラブ入会やチケット購入を通じてファンとの接点を持つことができますが、引換券で来場するような「ライト層」との接点がうまく築けていないのが現状です。


引換券を配り続けるだけでは、次回の来場につながる可能性は限りなく低い。この施策がスタンダードであるなら、まるで目の粗いザルで水を汲んでいるようなものです。効率的かつ継続的な集客とは言えません。

WEリーグの現状を見据えて


現時点では、多くの観客がチケットを購入して観戦する状況ではないと推測されます。そのため「もっとマスメディアに取り上げてもらえば」という意見もよく耳にします。もちろん、リーグやクラブはメディア露出を増やす努力を続けるべきです。しかし、メディアに取り上げてもらうことをコントロールするのは難しいという厳しい現実があります。

また、メディア露出は目標達成のための手段の一つであって、それ自体がゴールではありません。最終的なゴールは「興味を持ってもらい、会場に足を運んでもらい、WEリーグに関わる経済活動を促進すること」です。したがって、まずは自分たちでコントロールできる情報発信ツールを強化するべきでしょう。メディア露出は単発的で効果が見えにくいので、ファンとの接点をしっかりと築き、継続的にアプローチすることこそ最優先です。

顧客育成こそWEリーグ生き残りのカギ


家族連れ・親子観戦が目立っていました

今回の引換券施策も、少し工夫すれば異なる結果になったかもしれません。たとえば、引換券にはQRコードを印刷し、個人情報の登録やLINE登録を促した上でチケットを渡す、などの方法です。来場を促すだけでなく、ファンへの情報伝達のつながりを構築することまで考慮した施策であれば、もっと効果的だったと感じます。

ファンクラブ会員になってもらう、LINEの友だち登録をしてもらうなど、試合後にもクラブが継続的に情報を届けられるようにすることが重要です。今回の施策では、その点が十分に考慮されていなかったのが惜しいところです。

お手本はJリーグ


参考にすべきは、近年のJリーグです。JリーグはJリーグIDを軸に、ワントゥーワンマーケティングを徹底的に行い、ファン層の拡大を進めています。JリーグIDで得た個人情報をもとに、無料招待や優待企画を行い、地道にファンを育成しています。その効果は一見地味かもしれませんが、着実に成果を上げています。

WEリーグや各クラブの内部事情は詳しく知りませんが、もし私が中の人ならば、Jリーグと同じようにデジタルマーケティングを活用するだけで良いと感じます。マスメディアの露出やスター選手の登場による一発逆転を狙うのではなく、時間をかけてでも顧客データを集め、ワントゥーワンマーケティングのPDCAを回し続けることこそが、WEリーグが集客面で最優先すべき施策だと、今回の現場体験を通じて強く感じました。


以上。ありがとうございました。

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