10年前のこと

10年前のこと。

とあるサーキットイベントで私は管制室に入っていました。タイムスケジュールの管理や、スタッフさんへの指示や、フラッグを出すタイミングなどを判断してオフィシャルさんたちに指示するためです。

セッションの終わり間際、管制室のスタッフさんが「いま最終コーナーを立ち上がった車両からチェッカーにしますね」と言いました。

その車両のドライバーは常連のお客様で、そのセッションは遅れてコースインしていたのを私は管制室から見ていたので、『もう1周、走らせてあげよう』と考え、「その車両の次からチェッカーにしてください」と管制室のスタッフさんに伝えました。そうすることで、そのお客様は1周、多く走れます。

チェッカーが出ていないメインポストを駆け抜けたその車両は、1コーナー手前で何かの車両トラブルが発生し、1コーナーの立ち上がりのアウト側にクラッシュしました。

その車両からチェッカーにしていれば、メインポストから減速し、クラッシュすることはなかったと思います。このことを話した人はみな「それはあなたのせいではない」と言いますが、私が、ある意味忖度をしてチェッカーのタイミングを指示したことがクラッシュを引き起こしてしまったと私は考えています。

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「クルマは時速1kmでも動いたら事故のリスクがあります」と、私が主催するLet’sCircuit!の中で話します。それは公道でもサーキットでも同じです。そのリスクを「負えない」のなら、クルマなんて乗らない方がいいし、ましてやサーキットなんか走らないほうがいいと、私は思います。

でも、『サーキットを走りたい!』『クルマと思い切り走りたい』という情熱とか、欲求とか、沸き上がった感情を我慢して否定して、サーキットを走らず、有限の時間を過ごすことが幸せなのかと思うと、私は違うと思います。

だから、もしマシントラブルやヒューマンエラーが起きたとしても、リスクは極限まで減らしたいし、財産や命を失ってほしくはないです。

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