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母の光 #2
9歳の娘が、俺のお袋の顔に似てきたらしい。
お袋は背が高かった。Webで見つけた厚生労働省のデータによると、1944年生まれの女性の20歳時の平均身長は150cm前半だが、お袋は170cmあったらしい。生前のお袋の記憶は台所に立つ後ろ姿しかないのだが、確かに背が高かった。2歳の俺の背が低すぎただけかもしれないけれど。
幼い頃の俺は親父に似ていると言われた。紳士服の仕立て屋だった伯父から、親父の死後に贈られた俺の礼服は「お前は肇みたいに太るだろうからよ」と、親父の体型をイメージして作られたから、いまでも俺にはブカブカなままで、なかなか着る機会がない。
俺は178cmで74kg。親父は168cmで86kg。親父の二の腕やふくらはぎの太さは今でも覚えている。今思えば戦車みたいな体型だった。小学生のころに一度だけ、親父に殴られたことがある。あんな大砲みたいな利き手で殴られたら俺は死ぬか、よくても骨折をしていたはずなのに、涙が出ただけだった。強くなければ優しくなれないのだと、おもう。