「C'MON C'MON」
マイク・ミルズ監督の「カモン カモン」。
子供達とのインタビューによって浮かび上がってくるのは、この世界の問いに対する態度であり、言語化された実感だ。
アメリカという多様な人種が一緒に暮らす地で、子供達は世界の都合や大人たちの接し方に対して少なからず疑問を抱き、こうあってほしいと、こうありたい、こうあるべきと確かな見解を、見事に言葉にする。
その言葉は驚くほど純度が高く、鋭利で、それでいて柔らかく繊細で、嘘偽りのない世界や大人に対しての分析の結果だ。
それを受けて、僕ら大人はどう答えるか、という、それ自体が集合体として一つの問いになり、投げかけられる。
インタビューって面白い。
あらかじめ問いを用意して、自分が予想していた回答の時もあれば、思いも寄らないアンサーが返ってくることもある。
その時にいかに軌道を、返ってきたボールの勢いを損なわないような角度で打ち返すか、つまり回答によって、より相手の核となる部分を引き出せるような問いをいかに重ねていくかがインタビュアーの使命となる。
普段のコミュニケーションもこのように、問いと回答、問いと回答の繰り返しによって成り立っている。
1ターンで終わることもできるし、何ターンも気持ちの良いキャッチボールが続くこともある。
問いを投げかけられた側も、自分の考えを言語化し相手に伝えようとすることでモヤモヤしていたものがクリアになり、新しい自分に気付けたりもするだろう。
良い問いは、良い対話を産み、良い人生を育む。
僕にも6歳と8歳の息子がいる。
日々子供達と接しているけれど、彼らとの対話でどこまで核となる部分を引き出せているだろうか。
僕は子供達に対して、良きインタビュアーを担いたいと思った。
子供達は本当に思っていることを大切にしている。
自分が今何を感じているかに対して誠実であり、あらゆる方法でそれを周囲に伝えようとしてる。
アウトプットの仕方さえ覚えれば、湧き上がる欲求や情熱はすぐさま行動に直結する。
絵を描きたいと思えば紙を広げて描き始めるし、踊りたいと思ったら踊り出す。
すぐに、どこでだって。
でも大人になるとそうはいかなくなる。
大人になると、自分が感じていることに誠実になってあげられなくなる。
それはなんでだろう。
世界が用意した規範や、周りと同じでなければおかしいといった相対評価の中で長く過ごしすぎたからか。
子供から大人になって、何かを失ったわけじゃない。
どうやれば良いのか、忘れているだけなんだ。
自分が人に言葉や態度を投げかけた時には、素直な反応を示してほしいと思う。
同じように、自分の中にある問いや欲求に対しても、できるだけ純度が高いままで、素直に外に出してあげたいと思う。
そのやり方は、子供達の方がよく知っていると思う。
でも言葉を知らなかったり、表現のアプローチが豊かすぎて、大人はそれに気付けない、違う捉え方をしてしまうこともあるだろう。
分かってあげられてないな、と思う。
子供達に対しても、自分に対しても。
もっともっと、注意深く観察して、ありのままを素直に受け止めたいと思う。
なんとなくそれってアートの鑑賞に近いのかな。
湧き上がる感情やら何やらをありのまま表現しているものに対する態度として、同じかもしれない。
子供達は常にアートしてるな。
見習うべきだ。
時に大人と子供、師弟は入れ替わる。
さて、それじゃあ、話の続きをもっと聞かせてくれ。
良いインタビュアーになるから、思うがまま話してくれて構わないよ。
より良い世界にしたいのなら、一緒に世界を作る仲間なんだから、仲良くやろう。
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