カスタマーサクセスとは#1-3
#1-2ではなぜリテンションモデルが生まれたのか。について「利用者側」「サービスプロバイダー側」「業界」のトレンドを詳細にわかりやすく説明してくれていました。
第1章で最後のセクションとなる#1-3ではリテンションモデルが全ての企業にとって不可避であることについて時代の潮流から理解していきます。
参考図書
1-3 リテンションモデルが日本に意味するところ
①従来の勝者の競争優位性は価値を失う
・デジタル時代の競争部隊はリテンションモデルにシフトしなければ生き残れない
・今起きている事は過去に起きた事と全く異質であることを理解する必要がある。過去の衰退は全て「新しいモノ」が「古いモノ」と入れ替わったに過ぎない
・これまでのモノ売り切りでは、あるプロダクトが価値ゼロになる危機的な状況に直面したとしても、経営者がモノの新旧交代の潮目を正しく見極める事が出来れば従来の競争優位性をテコに挽回・復活することができた
・従来の勝者の競争優位性の3つの代表は
①効率よく統制のとれた既存サプライチェーン基盤に対する取引優位性
+モノ売り切りモデルは、よいモノを企画・開発→製造→保管→輸送→販売というプロセスが根底にあり、自社プロダクトを中心にこのプロセスを効率的にコントロールする手法を追求し、投資してきた
+物理的なモノがゼロになる事はなく、モノの運び手やリアル店舗は必要。むしろリアル店舗は素晴らしい顧客体験を提供する場としてより重要な顧客接点に進化しつつある
+勝者にとっての問題は、進化した顧客接点の新たな担い手が既存サプライチェーンを支えてきた企業ではない可能性が高いということ
+つまり、勝者はかつて行使できた既存サプライチェーンへの取引優位性を失い、代わりに新参の競合と肩を並べて新顔のサプライチェーン各社とゼロから関係構築する必要がある
②情報の非対称性に守られた経済取引のコントロール権
+「経済取引の選択権が利用者へシフト」とほぼ同義
+従来は自社プロダクトの良い所をアピールし、知らせたくない情報の露出を抑える事ができた
+今は個人的なモノ体験を素直に語るコメントはネット上に溢れている
+モノの実体験に基づく一次情報に加え、従来はモノと切り離されていたサービスや企業活動そのものについても、知れ渡る事になった
+勝者こそ都合の良い情報コントロールは不可能になり、ターゲットに対して最適なメディアで最適なメッセージを伝える手法を身につける必要がある
③モノ自体への知覚価値に基づくブランド力
+「世の中の値付け標準が成果ベースへシフト」と密接に関連する
+近年はモノを所有する価値が薄らぎ、体験から得られる成果が重視され、従来の価格・品質・デザインというブランド方程式は効力を失う
<①②③のまとめ>
・モノ売り切りモデルでは、可能な限り大ヒットする商品を開発し、可能な限り早く固定費を回収するために競争優位性を総動員して競合より優位に進める事が成功方程式だった
・リテンションモデルにおける強さの秘訣は「プロダクトを買ってくれた利用者が、それをどう使い・どんな成果を得ているのかを深く理解し、カスタマーに成功を届けることで、それ無しでは生活/仕事にならない状態にしている」こと
引用:カスタマーサクセスとは何か――日本企業にこそ必要な「これからの顧客との付き合い方」 ISBN 978-4-86276-268-9 C0034 P62~68参照
<①の所感>
もうほとんどカスタマーサクセスの定義が出てきていますね。
#1-2でもまとめると言いながら相当量の引用でしたが、#1-3も同じです。
#1-2の内容を、よりプロバイダー側に絞った内容にしてくれています。これから新しい事業を推進しようとしている人には必読パートです。
②モノづくりの世界にも大波がやってくる
・モノづくり勝者が最も注目すべきは、モノづくり自体はなくならないが主導権を握る座は失うという点
・リテンションモデルで利用者が重視するのはサービスの担い手
・従来の勝者がモノづくりだけでなく「優れたサービスプロバイダー」になればリテンションモデルでも勝者になり得るが、そこには二つの大きなハードルがある
①モノとつながったコトデータを膨大に取得し続ける(利用者もそれを許している)
+画期的なサービスを創るには利用者のコト事情を深く理解するために「モノ」×「コト・成果」の膨大なデータが必要だが、従来の勝者はそれを取得してこなかった
②コトデータを活用したソフトウェア(コト・成果)の提供
+売った後も機能を最新・最適化し続けること
+ソフトウェアを基軸としたモノづくりから着手しなければ一朝一夕で既存ビジネスを変える事はできない
引用:カスタマーサクセスとは何か――日本企業にこそ必要な「これからの顧客との付き合い方」 ISBN 978-4-86276-268-9 C0034 P69~78参照
<②の所感>
従来型のビジネスを変える事はかなり難しいと思います。いわゆるイノベーションのジレンマです。シュリンクはするが売上・利益共にゼロでないモノをある日変える勇気はなかなか湧いてこないと思います。
曲がりなりにも回っているビジネスの裏には、人や仕組みのリソースがあり、それをリコンストラクションすることはかなりの痛みを伴います。
人員を減らしたり、今ある資産を一気に処理したりと大改革が必要です。
だからこそ新しいビジネスモデルを最初から据えた新参者が少ない資本でスモールスタートでき、利用者に直接評価してもらう事で加速度的に成長する構図が成り立っている、と理解できます。
スタートアップやスモールビジネスの台頭背景まで整理している内容に満足です。
③日本企業は成功の自縛を解く必要がある
・リテンションモデル発展に伴うビジネスモデルの変化はサブスクかクラウド事業かどうかが問題の本質ではない
・重要なことは、デジタル時代の競争舞台がリテンションモデルへとシフトしており、そこから逃れる事はできないという事実
・モノづくりの勝者が「データがとても重要だと分かりました。自社プロダクトにセンサを付けて可能な限り多くのデータを取得し、取得したデータはサービス企業に共有し新しいサービスを作ります」と言う事が多いが、これこそがモノ売り切りモデルの典型的なマインドセット
・モノ起点の発想は、まずモノがあり、そこからどんなデータを取得でき、どう活用(収益化)出来るかを考える
・リテンションモデルはカスタマー起点。カスタマーが実現したいコトや成果・成功は何か、それにはどんなデータが必要かを考える
引用:カスタマーサクセスとは何か――日本企業にこそ必要な「これからの顧客との付き合い方」 ISBN 978-4-86276-268-9 C0034 P78~81参照
<③の所感>
かなり煽ってくる内容ですが、これだけ筆者である弘子ラザヴィ氏が危機感を持っている証左なのでしょう。一方で日本に活力を注入したいという想いすら感じます。ギリギリミレニアム世代である自分も責任を感じます。
「失敗を恐れずチャレンジしなくては」
そんなマインドを抱かせてくれる内容でした。
いよいよ次回から【第2章 カスタマーサクセスとはいったい何か】です。楽しみです!
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