アコンカグア5日目:問題発生
2019年1月25日(金)
雪がない
BCでの最後の朝を迎えた。そしてC1へ向けて旅立つ前にようやくメディカルチェックを受けることができた。心拍数、血圧、SpO2という血液中の酸素量も問題なかった。
テントを畳んで、すべての荷物を持ってC1のカナダへ移動する。(必要なさそうな食料もあったので、INKAの倉庫に置かせてもらった)
昨日と同じ行程だ。3時間くらいかけてC1まで登っていく。
道を覚えてるわけではないし、完全な一本道というわけでもないけど、昨日よりも安心して登ることができた。
終盤の岩場を抜けると、大きく開けた場所に出る。ここがC1カナダだ。
昨日よりも早く登ることができている。体が順応してきているおかげだろう。
昨日デポしておいた荷物を回収して、平らな場所を探して、さっそくテントの設営を始める。テントの設営はBC到着初日に、疲れ切った状態でやった以来だったけど、難なくできた。
これからご飯を作ったり、明日の分の水を作らないといけない。今まではBCのINKAの食堂テントで水やお湯をもらうことができた。トイレもあった。
ここから先は、毎日、自分で雪を溶かして水を作らないといけないし、排泄分もゴミ袋に入れて持ち歩かないといけない。
もちろん雪を溶かして、水を作る経験なんてしたことがない。世界中を旅してきて、お腹を壊した経験は1回しかないけど、
雪水を飲んで、お腹を壊さないだろうか、それが心配だ。
アコンカグアは岩山だ。そしてここは標高5,000mのキャンプ1カナダ
夏と言えど雪が積もっているべきなのだが、今シーズンは暖かいためか雪がない。
雪を探さないといけないのだが、C1を見渡す限り雪はなく、上のほうも見る限り雪がない。
僕は昨日来た段階で、このことに気づいておかなければいけなかった。
近くにいた白人の女性に声をかけてみる。
僕「水を作りたいんだけど、みんなどこで雪を手に入れてるの?」
女性「ここには雪はないよ。C2に行かないと雪はないわ。あとどれくらい水持ってるの?」
僕「あと1リットルくらい。明日の分はないな」
女性「ちょっと待ってて。あとで水持っていってあげるよ。あなたのテントはどこ?」
そう言って、彼女はテントまで水2リットルを持ってきてくれた。
命をつなぐ貴重な水だ。水を作るには雪だけではなく、貴重なガスも消費する。彼女には感謝しかない。
向こう側の山にはあんなに雪があるのに、アコンカグアにはほとんど雪がない。
こうして僕は当初の予定を変更して、
明日、無理やりキャンプ2のニド・デ・コンドレス(標高5,500m)に行かないといけなくなった。
キャンプ2のニドもここから3時間くらいの行程だが、まだ行ったことはない。明日は水を作ってそのままC2で寝るので、テントや寝袋などを背負って行かないといけない。
途中、雪道になっているかもしれないので、アイゼンも必要だろうか。ダブルブーツとアイゼンも荷揚げしよう。
食料が足りなくなったら、また取りに下りてくればいいか。
本当は、あと1日はC1で順応してC2に登る予定だったけど、予想外の出来事だった。まぁまだ体は大丈夫だろう。
サミットプッシュまで
気になっているのはサミットプッシュをする日だ。このペースで登っていくと水曜日にはC3コレラから山頂へのサミットプッシュをすることできそうだ。
だが、昨日の天気予報だと水曜日からしばらく天気は荒れる。となると環境が整っているBCまで戻るのが、定石。
標高の高いところに長期間も滞在していると体力を消耗するからだ。
ただでさえ山慣れしていない、体力もない僕だ。1回のサミットプッシュにすべての力を出し切って登頂したい。
経験のある人や、登頂した今なら、あのときこうしていればというアイディアがいろいろ出てくるが、このときの僕は圧倒的に経験不足でどうすればいいか全くわからなかった。
夕日がキレイだ。
日が落ちると極寒の世界で外に出る気にはなれないが、空を見上げるとまるで宇宙にいるような、星が降ってくるような、
そんな星空を見ることができた。