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アコンカグア7日目:C2高度順応
2019年1月27日(日)
登頂計画
今日は休息と高度順応、サミットプッシュするための情報収集をする日にする。
BCで聞いた天気予報だと水曜日からしばらく天候が荒れる。通常の登山ペースで登頂を狙うなら、明日はC3コレラに滞在してその翌朝にサミットプッシュをするのが、理想。
だけど天候がそうはさせてくれない。
黄色いダウンを着ているのが、Dario
去年、アコンカグアを登頂したりアンデス山脈の山々を登っているらしい。背が高く185cmはあっただろうか。
青いダウンを着ているのが、Deigo
50代後半くらいだろうか。ブエノスアイレスの大学で教授をしているらしい。Darioは教え子だそうだ。
Darioは英語が話せないが、Diegoが通訳しながら去年のアコンカグアの話をしてくれた。
去年、Darioが登っていた時期も天候が荒れていたらしく、このC2で7日間も滞在した。アコンカグアは20日間の滞在しかできない。そして1週間天候が荒れるなんてことはよくある。
登山は実力だけではなく、運も必要なのだ。
そして7日間待機して、C2からサミットプッシュをして、またC2に戻ってくるルートで登頂した。
C2からC3は、荷物を背負って3時間程度の道のり。サミットプッシュの軽装備だったら2時間ちょっとくらいだろうか。C3から山頂、そしてC3までの下りは12時間程度かかると言われている。
C3は風が強すぎて、寝ることができないという情報もあった。なので、できるなら僕もC2から一気にサミットへ行きたいと思ってはいるのだが、ただでさえ体力のない自分が、この標高で14時間以上行動できるのだろうか。
C2のレンジャーによると、やはり水曜日からしばらくの間、天候が荒れる。天候が回復するのを待っていたら、もしかしたら僕のアコンカグア挑戦は、このC2で終わるかもしれない。
二人は明日の早朝、サミットプッシュをするそうだ。
近くにいたグループは、水曜日にサミットプッシュをするらしい。別の方法で天気を調べているんだろうか。
僕の体調を考えると、明日C3に泊まって、その翌日の水曜日にサミットプッシュをするのがベストだが。天候が心配なのと、昨日切れてしまったガスがC1にデポしてある。それを取りに行かないとC3で滞在することはできない。
なにもかもが一日、ベストなタイミングからズレている。そしてこの1日が順応できていない体へ大きな影響を与えている。
明日、C2からサミットを狙うのもアリだが、C3にも行ったことのない、道がわからない状態で、ライトの明かりだけで時間通り登れるのか。
しかも一人で。
夜の登山経験なんてもちろんない。気温はマイナス15℃くらいだろう。体感気温はもっと低い。そんな中、登山した経験はもちろんない。
14時間歩いた経験もおそらくないんじゃないだろうか。しかも空気は地上の半分だ。
いろいろなパターンを考えるが、圧倒的に経験が少なすぎて何も決断できない。
決めた
二人と一緒に明日の朝、正確には深夜2時
サミットプッシュをする。
C2に到着してからまだ1日しか経っていない。入山8日目でのサミットプッシュ。誰がどう見ても、サミットプッシュするには早いだろう。
このときの心境は、登れればラッキー、行けるところまで行って、無理せず戻ってこよう。そう思っていた。
だがアコンカグアに来る機会なんてそうそうない。何十万円も払って、日本からはるばる地球の裏側までやってきたんだ。
もし山頂を目の前にしても、同じように判断できるだろうか。
冷静に「撤退」という判断ができればいいのだが。
エベレスト
そういう状況に陥ることもあるだろうと、日本を出る前に「エベレスト」という映画を見てきた。
1996年に起こった、エベレスト遭難事故を映画化した物語だ。
日本人女性で2人目のエベレスト登頂者の難波康子さんが登場する。彼女はエベレストに登頂して世界七大陸の最高峰を制覇した。
だが、彼女は下山中に吹雪に巻き込まれて亡くなる。
撤退時間が迫っている中、山頂を目の前にして撤退するかどうかの決断を迫られるシーンがあった。
一度の登山費用で5万ドル以上はするだろう、二度目のエベレスト挑戦で山頂を目の前に諦めきれないアメリカ人男性がいた。時間が過ぎているにもかかわらず、登頂を目指してしまった。登頂後、同じく吹雪巻き込まれて帰らぬ人となった。
植村直己もそうだ。厳冬期のマッキンリー(現デナリ)に世界で初めて登頂して、下山中に消息不明となった。
登山での事故は、下山中に起こることが多いと聞く。
登山は登るだけじゃないんだ。生きて帰ってくるのはもちろん、五体満足で帰ってこないといけない。指先や足が凍傷になる可能性だって大いにある。
エベレストで亡くなった栗城史多さんも凍傷で指を落としている。
明日、登頂できないにしても
天候が回復して再チャレンジする日が来ると信じて、一度はC3より上に行って体を順応させておきたい。
そしていよいよ、南米最高峰へのサミットプッシュを迎える。