たんぽこ/森 昭彦
たんぽ、たんぽこ、たんぽんぽん
ててっぽ、ごげぁこ、けぇぼんさん。
タンポポの愛称は留まるところを知らぬ。その由来がここまで分からなくなると、なんでもアリなような気がする。自分だけの名前をつけてみるというのも楽しい仕事になるだろう。おそらくは、よく似た方言がすでにあるのだ。方言の語感のバリエーションは、それこそ世界中に、数え切れぬほど存在するのである。
写真:シロバナタンポポ
タンポポの名前の多彩さは〝学名〟にも現れる。セイヨウタンポポなぞ、原産地のヨーロッパではどれほど少なく見積もっても1,000種以上の学名(マイクロスピーシーズ:小種)に分類される。日本の道ばたでもって、あなたが高らかに「これはセイヨウタンポポです」と宣告するもののうち、70~90%以上が「純粋なセイヨウタンポポではない」という事実も付言しておこう。かくいうわたしも、胸を張って「純粋なセイヨウタンポポを見たことがあります」などとは口が裂けても言えない。
タンポポたちは、DNA情報の取り扱いにつき、よく言えば「自由度を高めた種族」で、率直に言えば「DNAなど、どーでもいい」という奔放ぶり。世界中でDNA解析を進める研究者たちが、「タンポポが、わかならない……」と嘆息をついている。
生命世界ではフツーの〝規格外〟
中世ヨーロッパの修道院では、薬草を育てる庭園技師がこう嘆いた。「ミントの数は、星の数ほども」
それでも数百種である。そのほとんどが人工的な改良品種。
ハコベ、カタバミ、タネツケバナなど、お馴染みの大血統たちですら、世界でせいぜい数百種。この点、セイヨウタンポポは、
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