24/11/20 【感想】ガラスの橋
ロバート・アーサー自作傑作選『ガラスの橋』を読みました。
「ガラスの橋」というミステリ短編のタイトルだけは見覚えがあるという方も多いのではないでしょうか。かくいう僕も、乱歩も愛した名作短編との噂だけは知っていました。
全体的な感想としては、作者自身が様々なタイプの作品を集めたと語っている通りバリエーションが豊かでしたね。特にオチの方向性に多様性があったのはよかったなあ。ただそれと同時に当たり外れも結構あった印象です。
それでも、様々なタイプの作品が並んだことでそこに通底する「作者の味」のようなものが浮かび上がっていたのは良かったと思います。
ただ、原文のせいなのか訳のせいなのかはわかりませんが、文章がぎこちなくて読みづらかったかな…。
個人的ベストは表題作「ガラスの橋」、次いで「真夜中の訪問者」。
以下は個別の話のひとこと感想です。話の核心には触れないようにしたつもりですがあらすじには触れていますのでご注意ください。
マニング氏の金の木
大金を着服した銀行員が逮捕される直前に、とある住宅で新しい木の株を植えるその下へ金を隠します。彼が服役後にその金を取り戻そうとする顛末を描いた話。佳作です。
極悪と老嬢
ミステリマニアの老嬢がギャングを振り回すのは面白いんですが、なんだか小さくまとまってしまった感があります。
真夜中の訪問者
たった6ページの切れ味。僕の愛する夢野久作の傑作を思わせるような秀作です。
天からの一撃
不可能犯罪もの。本作以降に出た同様のトリックをすでに読んだことがあることを差し置いても、文章のもたつきでだいぶ損していたと思います。
ガラスの橋
雪の山荘を訪ねていった女性がそのまま消失、足跡は山荘へ向かうものだけで出てきた足跡はなし。このシンプルな不可能状況を解き明かす一編。
雪に覆われた凍てつくような寒さの山中で石段を登っていく山荘での人間消失、証言は麓の人間の目撃証言、というセッティングがふるっています。美しいタイトルと相まって、トリックミステリの芳香にあふれた秀作です。
住所変更
クリスチアナ・ブランドのような味わいの佳作。タイトルがいいですね。
消えた乗客
なんかバタバタしてるなあ…。一応走行中の列車からの人間消失を扱っているのですが、見せ方がずっともたついていた印象です。
非情な男
アイデア◎。
一つの足跡の冒険
「精神を患って自分がシャーロック・ホームズであると思い込んでいる男から証言を得るため、ワトソンとベインズ警部(『最後の挨拶』に収録の短編で登場)のフリをして彼に質問する」というくだりが面白い。それだけにとどまらないヒネリも一応ある佳作です。
三匹の盲ネズミの謎
この話に80ページ近くも?