21/01/20 虚構推理のこと

クレカの引き落とし額が妙に多いので何事かと思って確認してみたら、使った額が妙に多いだけでした。年末はお金使うからね…仕方ないね…。

以前「虚構推理は鋼人七瀬以降が面白い」と書いたのですが、特に好きなエピソードの話していいですか?しますね。しかも2個も。ちなみに僕は漫画版を読みました。

スリーピング・マーダー (漫画版10-11巻)

「二十三年前、私は妖狐と取引し、妻を殺してもらったのだよ」
妖怪と人間の調停役として怪異事件を解決してきた岩永琴子は、大富豪の老人に告白される。彼の依頼は親族に自身が殺人犯であると認めさせること。だが妖狐の力を借りた老人にはアリバイが!
琴子はいかにして、妖怪の存在を伏せたまま、富豪一族に嘘の真実を推理させるのか!?
虚実が反転する衝撃ミステリ最新長編!
(講談社BOOK倶楽部HP内、講談社タイガ版ページより)

展開がまあ読めない読めない。謎解きシーン!ドンデン返し!という、通常は1頭の事件からはひとつしかとれない希少部位が次々出てくる超豪華盛り合わせセットです。単行本1.3冊くらい使った4話構成なのですが、そのほとんどが関係者が集まって過去の事件の謎解きをしているシーンなのでもういわばずっとサビ。特別な日のご馳走。そんなひたすらミステリファンが楽しめるエピソードです。

ギロチン三四郎 (漫画版9巻)

岩永琴子と桜川九郎が出会う次なる怪異は日本にただ一つの処刑装置――ギロチン! だが、どういうわけだか琴子はずっと睡眠中で‥その代わりに、九郎が事件解決に挑むことに‥!?
(講談社BOOK倶楽部HP内、漫画版9巻ページより)

シリーズ探偵もので、容疑者視点で描かれることによって有能な探偵役が恐ろしく見えるやつ大好きなんですよね。ミステリ作品としても見せ方が非常にうまく、ミスリーディングをとても効果的に使っています。ギロチンというモチーフをこれでもかと使い倒し、最後に明かされる動機も素晴らしい。とてもハイクオリティな作品です。

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普通ミステリでは長編と短編を比べると短編のほうが全体に占める「謎と解決」の文量比率が高くなりがちです。長編は捜査やストーリーで膨らませているためです。
しかし虚構推理という作品では複数話にまたがる話では謎解きシーンを虚実組み合わせながら何度もやるため、長くなっても謎解きというおいしい部分の比率が減らない。むしろ短編でも長編でも必要な導入の分量はさほど変わらないため長編のほうが相対的に導入の比率を少なくできるぶん謎解きの比率が高くなるという逆転現象すら起きている気がします。

「虚構推理」では探偵役の岩永琴子が妖怪から情報を集められるため事件解決に必要な情報はササッと回収できるという設定になっています。近年の、普通の推理小説以外にミステリをエンタメに昇華した作品ではこのように「捜査パート」を省略する技術がうまく使われているように思います。「仮面ライダーW」ではキーワードだけ集めればアカシックレコード的なものを検索して真実を収集できるようにしてたりとか。捜査パートはなかなかおもしろくなりづらいですからねー。

あとこのシリーズは絵がきれいなのもいいですね。登場人物のルックスがみんな魅力的。特に目に力があって、ミステリとしての迫力を増しています。