22/09/24 【感想】世界のスープ図鑑:独自の組み合わせが楽しいご当地レシピ317
佐藤政人『世界のスープ図鑑:独自の組み合わせが楽しいご当地レシピ317』を読みました。文字通り世界のスープを集めたレシピ集で、載っているレシピは筆者が集めた情報を元に自分でそのスープを作ったレシピです。
1ページに1つのスープが写真つきで載っていて、材料レシピ、解説がついています(たまに見開き2ページ)。写真がどれもうまそうでそそられ、材料とレシピから味が想像できたりできなかったりしてそのどちらもとても楽しい。眺めていてとても楽しい本でした。
317のスープから特に気になったスープをいくつか抜粋しました。
ビアズッパ (ドイツ)
ビールと砂糖、塩、水を合わせて沸騰させたところに小麦粉と卵を混ぜて泡立てたものを少しずつ注いで作るスープ。それをチーズをのせたバゲットにかけて完成なのだそうだが、すごく面白そう。いつかドイツに行ったら食べてみたい。
フリタテンズッパ (オーストリア)
最初写真を見た時「巻き麩か?」と思った。
甘くないクレープを焼いてからそれを切ってスープの具にするというもので、恐らくより一般的な表記になっていると思われるフリターテンズッペで画像検索すると色々出てくる。
この本に出てくる写真ではクレープをわざわざ巻いてから切っているので、でかい巻き麩のような見た目になっている。
ポトフ (フランス)
上のような異国情緒あふれるスープが並んだあと、フランスに入ると突如オールスターチームが出てくる。ブイヤベース!コンソメ!オニオングラタンスープ(スップ・ア・ルニョン)!ラグー!ラタトイユ!ヴィシソワーズ!トマトのビスク(スップ・ドゥ・トゥマット)!と世界レベルのプレーヤーたちが並ぶ。品数も他の国より圧倒的に多い。
この中で一番興味深かったのがポトフ。牛骨を入れるのが本場なのね。
ミネストラ・マリタータ (イタリア)
材料がすごい。しょっぱなから順に「骨付き牛肉」「鶏肉」「ポークリブ」。牛・鶏・豚の三頭会議が早速実現(ドラマ版孤独のグルメ的表現)。そのうえイタリアンソーセージまで続く。
牛肉にも豚肉にも骨がついてるのはダシが出てうまそうな一方、食べるのはすげえめんどくさそうだな…。
スップ・メ・トラーナ (アルバニア)
このトラーナとは小麦粉とヨーグルトを混ぜて発酵させて作るパスタのようなものだそうで、それをトマトとイタリアンパセリ、オリーブオイルがベースのオーソドックスなスープで食べる料理がこれ。こういうご当地の主食に興味があり、このスープも機会があったらぜひ食してみたいところ。
コトシュパ・アヴゴレモノ (ギリシャ)
ギリシャの食文化を取り上げる番組などでスープにレモン汁を使う光景を見かけたことがあり、強く印象が残っていた。
ホイップした卵にレモン汁を混ぜたものというだけでも難解なのにそれがスープのベースになるというのだからどんな味になるのか想像できない。食べてみたいなあ。
ドマテス・チョルバス (トルコ)
トマト、タマネギ、ニンニクを刻んで煮込むスープ。というと容易に想像がつくのだけれど、刻む前に20分オーブンにかけているのが面白い。この加熱によって糖分がキャラメル化して甘さが増し、燻製のようなフレーバーも加わるのだという。純粋に「うまそうだから食ってみたい」という抜粋。
ヴォーレンス・ネッスルソッパ (スウェーデン)
本書にはイラクサのスープが二度出てくる。これとチョルバ・オヅゥ・コプリヴェ (モンテネグロ) がそのふたつなのだが、そのどちらも筆者が激賞しているのである。載っているスープはどれも筆者が実際に作って食べているはずなのに味の感想が特に書かれていないものが大半なのだが、これらのイラクサレシピでは「とてもおいしい」「この上なく上品で美味」と感想が書かれている。そりゃ気になる。
シャルティバルシチャイ (リトアニア)
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チオルバ・デ・ペーシュテ (ルーマニア)
ドナウ川でとれるコイやナマズなどの淡水魚と野菜、そしてザワークラウトの汁を使って作るスープ。シンプルにおいしそう。
オクロシュカ (ロシア)
ケフィールとクヴァスという2種類のソフトドリンクを使うスープ。
この2種類のソフトドリンクはロシアではコーラより人気があると書かれている。ケフィールはケフィアのこと。クヴァスはライ麦パンを水に加えて発酵させて作る炭酸飲料だそうだが、そういえば以前この炭酸飲料を使ってライ麦パンを作るという逆生成に挑戦している記事を見た覚えがある。酒造法に引っかからないよう苦労していたような覚えが。
パンがソフトドリンクの原料になったりソフトドリンクがスープの原料になったりソフトドリンクから逆にパンを作れたり、アトリエシリーズみがすごい。
ところでソフトドリンク2種のインパクトが強すぎて隠れてしまっているが、さいの目切りにしたキュウリがゴロゴロ入っているのもインパクトが強いスープ。
サンコーチョ (ドミニカ共和国)
上で肉の三頭会議とか言っていたがまだまだ全然序の口だった。
このレシピの材料は「シチュー用牛肉、牛テール、ヤギ肉、ロンガニッサ(ソーセージ)、豚肩ロース、スペアリブ、鶏肉などのミックス」ではじまる。4-6人分のレシピだがこれらのミックスで1.5-1.8kg。しかもすべて一口大に切る。えらいことやで。
恐らく日本で言う寄せ鍋みたく、なんの肉というわけでなく「肉を色々」であることがキモなのだろう。
ソパ・デ・マニ (ボリビア)
タマネギ、ニンニク、セロリと肉を炒めてハーブ、塩コショウを加えてブロスで煮る…というところまでは非常にオーソドックスだが、そこにピーナッツペーストを加えること、そして最後にフライドポテトをのせるのが特徴的なスープ。ヤケクソになった居酒屋のまかないみたいなスープだが、うまそうである。
ハリラ (モロッコ)
上述したように感想は伏せられていることが多い本書の紹介だが、アフリカの中ではエチオピアとモロッコのスープはしきりにうまいと書かれている。素朴な肉と豆のスープなのだが溶き卵を最後に入れるのがおもしろい。以前海外で3,4晩だけモロッコ人がルームメイトだったことがあり、それ以来モロッコは興味のある国だ。
酸菜魚 (中国)
酸味があるカラシ菜の漬物とライギョで作るスープ。「コウケンテツのアジア旅ごはん」で似たような料理を見た覚えがあるが、うまそうで機会があれば食べてみたい。漬物をスープに使うことは今の日本人だとあまりないが、キムチ鍋とかが馴染みがある中だと近い思想になるのかもしれない。
バンタン (モンゴル)
羊肉、水、小麦粉、塩。これと最後の飾りつけの青ネギしか材料は使っていない。細切れにした羊肉とクスクスのようにちねられた小麦粉のお粥みたいなスープなのだが、「正直言ってこれがおいしいのである」と本書では希少な称賛を得ている。
ハリーン (バングラデシュ)
タマネギを炒めてから肉とミックススパイスを加え炒め、水を入れて煮る…ということでカレーにかなり近いように見える。しかしカレーと違うのは小麦や米、豆も一緒に入れて煮るということで、つまりカレーメシでは?
食べてみたい。
エマ・ダシ (ブータン)
ミルクから乳清を分離させた残りのカードから脂肪分がバター、残りがチーズになる。このスープはバターとチーズを溶かし合わせて作るスープということで、いわば同窓会(ドラマ版孤独のグルメ的表現)。なのにカードの頃からは全然雰囲気が違っていて、やっぱり同窓会。普通においしそう。
ジョル・モモ (ネパール)
ここまで拾っているのは大体「いつか機会があったら食べてみたいなあ」くらいのふわっとしたドッグイヤーなのだが、これだけはかなり現実味のある「食べよう」というチェック。
昨今、実態はインドカレー屋であるネパール料理店を首都圏でよく見かけるようになったが、「モモ」はそのメニューでよく見かけるネパール餃子である。
このスープの説明を読むとネパールの餃子はスパイスが強調された独特の味付けになっているそうで、これはぜひ食してみねばと思った次第。
カーリーユートウ (シンガポール)
シンガポール名物、フィッシュヘッドカレー!!
「コウケンテツのアジア旅ごはん」でも見たことがあってそのときから気になっていた。インドのカレー文化と中国の魚の頭を食べる文化が合流してできたまさにシンガポールならではの名物。
カオ・トム (タイ)
タイの家庭でよく朝食に食べられているおじやだそうで、この時点で興味しかない。アジア圏の朝食ってすげえうまそうよねえ。
グアミアン/シャモロ・コーン・スープ (グアム)
鶏肉と缶詰のコーンをチキンブイヨンとココナッツミルクで煮込むスープ。シンプルながらどこか感覚の外にあるようなスープで興味をそそられる。
自分で作ってみるのもいいかも。
ショルバット・ルマン (イラク)
ザクロを使ったスープ。豆のスープの豆みたいな感覚でザクロの粒々が目に見えて入っている。いいのか!?
ラム肉の濃厚なスープなのだそうだけれど、ザクロの酸味や食感がどう絡んでくるのか想像もつかない。
フェセンジュン (イラン)
こちらもザクロを使ったスープだがこちらはザクロのシロップだけを使うそう。このシロップと細かく砕いたクルミがベースの鶏肉のシチュー。これら中近東のスープは巻末に載っているのだが、これまで見てきた世界中のスープの常識が全く通用しない感じがして面白い。
イスラム圏は酒を飲まないことが味付けに影響してるんじゃあなかろうか。
シャクシューカ (イスラエル)
トマトを中心とする野菜をそれぞれから出る水分で煮込み、チーズと卵を加えて半熟にして出来上がり。絶対おいしいやつじゃん。
イスラエルで最も人気のある朝食メニューがそうだが、それもうなずける。