23/03/02 スリーピング・マーダー
昨日東京で春一番が吹いたそうです。納得感あり。
冬の最もいいところのひとつは、春が来ることですね。
アニメ「虚構推理」を作業用BGMにしているのですが、僕の大好きなスリーピング・マーダー編に入って嬉しいです。スリーピング・マーダー編は虚構推理という作品の最高傑作だと思っています。
以前ちょっと語ったのですが改めてお話させてください。
この虚構推理という作品は「実は超自然的な存在がいる世界で、そのことを知らない人向けに現実的な『虚構の推理』を行う」というところに最大の特徴があります。
そんな中にあってこのスリーピング・マーダー編では、まず最初に「自分は過去に妖狐と契約して妻を殺してもらった」と富豪が探偵役に明かします。既に犯人はわかっているのに、探偵は何をするか。
富豪はかつて強権的な経営者であった妻による専横を防ぐため、その妻を怪異の力で殺害します。
ですが病に冒され余命1ヶ月となった彼は、その妻との間の子どもたちは母親(つまり死んだ妻)の死の真相を知る権利があると考えました。また暴力によって現実を変えることには報いがあるのだと身をもって子どもたちに教えたいと考えたのです。端的に言うと「父は母を殺めた、そしてその報いを受ける」ということを子どもたちに伝えたい。しかしその殺人自体は妖狐によって行われたため、彼は自分の殺人を立証することができないのです!
そこでこの作品でこれまでもやってきたように、探偵が妖狐の殺人に「富豪が犯人だ」という現実的な「虚構の推理」を行う…のではないんです。
富豪は自身の子どもたちに「父による殺人を証明せよ」という推理合戦をさせ、探偵はその推理合戦の審判として招聘されるのです。探偵のミッションは、彼らが現実的な真相に辿り着くように議論を誘導することなのです。凝ってるでしょう!?
既に虚構推理の最初の方やアニメ1期を知ってる人はここでピンとくるかもしれません。そう、この構造って一番最初のエピソードである「鋼人七瀬」と一緒なんですよね。現実の人たちに現実的な推理を議論させ、それを誘導するという展開は「鋼人七瀬」の再演です。
ただ、「鋼人七瀬」の時点では、事件はある種「どうとでも言える」ものでした。現実的な解釈もオカルト的な解釈も、どちらもありうる事件でした。
「スリーピング・マーダー」ではそこが大きくブラッシュアップされていて、事件そのものが不可能犯罪になっているのです。
妖狐の力を借りた富豪は自分がアリバイを持っている時間帯に妻を殺害させました。これによって「現実的な推理合戦」そのものがひとつのハウダニットとして食べごたえのあるものになっているのです。本編を虚構推理の到達点だと感じるのはここです。
……というのが、この「スリーピング・マーダー」のすごさの半分です!!
ここからねー、もっとすごいんですよ。もう大好き。アニメの続き楽しみだなあ。