23/05/14 【感想】パラノマサイト FILE 23 本所七不思議
ホラーミステリーADV「パラノマサイト FILE 23 本所七不思議」をクリアしました。面白かった!
プレイ時間はたぶん10時間に満たないくらい、3晩で一気にクリアしました。思わず夜更かししちゃうようなゲームでしたね。コンパクトにまとまっていることはもちろん、その中ですら面白さがどんどん変化していくことも箸を止まらなくさせるゲームだったと思います。
前々から信頼できる情報筋(友人)から好評は聞こえてきていたものの、ホラーゲームだということで二の足を踏んでいたんですよね。ホラーめちゃくちゃ苦手なので…。
やってみると実際怖くはあったのですけど、ホラーがメインではないし、ちゃんと最終的にゲーム体験につなげるためのホラーであるため全くイヤ~にはなりませんでした。本作においてホラー要素は目的ではなく手段として組み込まれています。
ほら、激辛料理にもあるじゃないですか、辛いけどその辛さも含めて最終的にうまさに収束させてくれる料理と、ただ辛さの絶対量を増やすことを追い求めているタイプの料理と。
ここから下はネタバレ感想です。
上にも書いた通りどんどん面白さのタイプが変わっていきます。なんならゲームが変わっていくと言ってもいい。
冒頭ホラーからの、能力バトルADVになり、そこから本編のミステリーADVが始まるという組み立て。この変形ギミックによってずっと新鮮に楽しめるのですが…いや、それにしても能力バトルADVがめちゃくちゃに楽しかった!!
あの能力バトル特有の頭脳戦のヒリヒリした駆け引き。「一手間違えれば終わる」という緊張感の中で選択肢を選べるのはADVの本懐。で、やっぱりそうなると資料もめちゃくちゃ真面目に読むんですよね。どこに能力のヒントがあるんだ!?って。ゲームに没入させるための仕組みとして最高によくできていたと思います。
あとホラーとしては自分の操作で360度見回すのが怖くてよかったですねー。振り返るのが怖いし、振り返ったときに誰かいるとスゲー怖い。
3人の主人公が解放されてからは、チャート間を行き来しながら進めることにゲーム的な意味があるのも良かったですね。単純にシステム的に特定のシナリオをこれだけ進めるとロックが解放されますじゃなくて、ゲーム内のお話の中で他のチャートを進めてあげないとストーリーが進展しないようになっていたり。
ミステリやADVゲームでよくある、各主人公のシナリオで個別に集まった情報がプレイヤーの中で結びつく気持ちよさ、そしてそれと同時に発生する「君たち一旦みんな集まって話さんか!?」というもどかしさがゲーム的に昇華されてるのが巧いところ。
一本道のシナリオとしては各主人公が集まって話すだけなんですけど、ここで「集める操作」をプレイヤーが行うようになってるのが良いんですよね。
このあたり、「アドベンチャーゲーム」でありながら「メタアドベンチャーゲーム」とでも言うような新しい遊び心地がします。元々アドベンチャーゲームが持っていた「登場人物の行動にプレイヤーが介入する」という性質をゲームシステムとして明文化したというか。
一番好きなキャラは志岐間春恵でした。次いで櫂利飛太。
いやこの2人魅力的過ぎますって!この2人がセットなのゲームバランス壊れてますって!!
特に好きなのが「興家彰吾編に敵で出てくるマダム」。彼女が魅力的すぎて結局これを超える魅力を持った敵キャラは出てこなかったまである。次点で灯野あやめかな。そのあやめも対決するのはマダムなわけで、名勝負製造機すぎます。
マダムは主人公になってゲーム終盤に至っても「殺すこと」が選択肢に残り続けているのが本当に「据わった」キャラですよね。大好き。
マダムがあやめを焼き殺す「志岐間春恵の伝説」ルートはもちろん、話が進むルートにおいても不発とはいえあやめに対して呪詛行使を試みてはいるわけで、一度は本気で殺意を持って引き金を引いているという。
志岐間春恵というキャラクターは、興家彰吾編のバトルにしても自身のルートにおけるあやめとのバトルにしても、命のやり取りの中で人間性の冷たく黒い炎が描かれるため一際強い印象を残します。あやめに能力持ちを見抜かれたときの動揺なども含めて、人間を描く上でもプレイヤーとシンクロする上でもこのゲームだから創れた傑作キャラクターだったと思います。