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23/09/30 花蓮(2) 未来スイーツおじいさん
朝、ホテルを出て、駅に向かってレンタサイクルを漕ぎだしました。新たな一日に向かって漕ぎだすペダルは期待を乗せて軽く…軽すぎないか!?
あれ、まさかバッテリー復活してる!?
昨晩最後完全にウンともスンとも言わなくなってたんですが…。
なんだかよくわかりませんが動いてくれる分には全然良いので、勢いよく花蓮駅に行って返却しました。
さて、今日はバスツアーに参加します。花蓮周辺の観光スポットはかなり散らばっているのですが公共交通機関を乗り継いでという形が難しいそうなんですね。そこで縦谷花蓮線という観光スポットを巡るバスツアーを教えてもらいました。
①慶修院
日本式の寺院。
同僚いわく「日本人が行っても何も楽しくないと思う、僕が日本で行ったどの寺社仏閣もここより良かった、隣のソーセージ屋に行った方がいい」だそうで、そこまで言うことなくない!?と思うのですが。
…まあ、50分も滞在時間が用意されてるのは持て余しましたね…。
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というわけで隣の香腸(中華風ソーセージ)屋へ。
「全世界最好吃」と看板に書くだけのことはあるうまさでした。
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香腸は生のニンニクと共に供されてニンニクをかじりながら食べることが多いのですが、ここは荒く刻んだニンニクが肉に練り込まれているのが特徴。
またその他のスパイスも効いていて肉汁滴る焼きたてのソーセージを盛り立てていました。
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どういたしまして…。
ちなみにここで買ったソーセージをそのままバスに持ち込んだ客がいて車内の治安が一発で終わりました。
②鯉魚潭
湖です。
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湖畔の散策路をのんびりゆっくり歩きます。
雲がかかったり晴れたりするのがちょうど良く、雲の切れ目から指す光が向かいの山や湖面にランダムなコントラストをくれるのが飽きませんでしたね。
…いやすいません嘘ですここ100分もあったので飽きました。一人で来るところじゃないんだろうな…。
③花蓮観光糖廠
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かつての製糖工場が今は観光スポットになっています。
この観光スポットになりぶりが並大抵でなく、入ると大音量で歌謡曲が流れ、場内は土産物屋や飲食店が立ち並び、人・人・人がごった返し…この凄まじい「商業」の圧に思わず気圧され、僕は尻尾を巻いて逃げ出すと近くのコンビニにお茶を買いに行きました。
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ここのコンビニ、大自然を背景に建っているのが良かったですね。自然に対して文明が築いた橋頭堡のようでもあり、悪趣味なアンマッチでもあり、ダンジョン前の村のようでもあり。
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また、付近には製糖工場が稼働してた頃の施設がそのまま残されていて、雰囲気がありましたねえ。
当時の工員向けの散髪屋さんなんてとても良い。
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さて、この工場に来られた際にはなんとしてでもやっていただきたいことがあります。
それは、土産物屋で売ってるこの餅を食べることです。
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これ、めっっっっちゃくちゃうまかったです!!
基本的にはただの餅部分の分厚い大福なんですけど、なんでかわからないくらいにうまかったです。
④雲山水
同僚いわく「human made forest」。
自然のきれいな広い公園なのですが、ゴルフができないこと以外は大体ゴルフ場といってしまえばそれもその通りって感じ。
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すごく絶妙な場所におもむろに椅子が置かれていたりします。計算し尽くされた自然。
僕はどちらかというとここへ繋がってる道路の方が好きでした。
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⑤ふたたび花蓮駅
おつかれさまでした!最後はバスの中で拍手が起きました。一日でいっぱい観光地をまわれて、充実のツアーでした。
昨日も書いた通り駅からホテルのある市街地まではかなり離れているのですが、今日は歩いて戻ることにしました。
もうすでに1万2000歩も歩いているのになぜそんなことをするかというと、道中に行ってみたいお店があるから。
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「炸蛋葱油餅」という食べ物なのですが、同僚はこれが大好きなのだそうで。
そして昨日の刺身に引き続き、店が隠れている!銀行の横の路地を入るとひっそり屋台が出ています。
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そして果たしてこれがめちゃくちゃうまかった!!
僕が台湾に来てから食べたものの中でもトップ10に入るかもしれない。
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醤油ベースのソースが絡んだ揚げパンで同じく香りのついた油で揚げた卵をくるんでるだけなんですけど、べらぼうにうまい。思わずすぐさま同僚に「これを台北で食べる方法はないのか」と聞いてしまいました。
幸福指数を大幅に上げて、さて夕食へ。
「鵝肉先生」というガチョウ肉のお店に行きました。
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暴れてやったぜ!
ガチョウの胸肉ともも肉の盛り合わせ、ガチョウの大腸と生姜のスープ、空芯菜の炒め物。そしてこの注文を持っていく途中に近くの席の人が白飯を頼んでるのを見かけていてもたったもいられなくなり白飯。
正解でした!ガチョウにネギだれをのせてソースにつけると、白い飯が進むのなんの!!なんなら写真はもうそこそこ進んだ後で恐縮です!!
いやー、おかずで白飯を食べるってなんだか久々にやった気がする…もちろんお弁当とかはよく食べてるんですが、白い飯だけ盛られたお椀を左手に持つって久しぶりかも。
駅から歩いて40分、ホテルに戻った時にはクタクタに疲れていましたが、心地良い満足感がありました。
…そして1時間ほどしたら甘いものを食べたくなりました。
夜市に歩いて行けるんですよね、せっかく花蓮で過ごす最後の夜なのだし夜市も行きたいな…。
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行きました。
名物の「泰式香蕉煎餅」をいただきます。
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直訳するとタイ風バナナパンケーキとでもなるのでしょうか。味は「バナナの天ぷら」に近い。そして僕はバナナの天ぷらが好きなんですよね!
見た目ほど重くなく、気持ちよく食べられました。
食べ終わった頃、同僚からLINEが来ました。
台北にも葱油餅はあるのだが炸蛋ではないとこのと。しかしそれと同時にもう一つ情報が。なんでも彼の奥さんが学生時代を花蓮で過ごしていたらしく、オススメのお店を教えてくれるのだそう。
せっかくなのでおすすめのスイーツを食べに行ってみることにしました。いまスイーツを食べたばかりなのに。
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というわけで「五覇焦糖包心」に来ました。
渡辺直美さんも来たらしく写真がデカデカと出ていたりします。
そして。
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これがそのスイーツなのですが、何かわかりますでしょうか。わかりっこないと思います。
これはあえて言語化するならば「かき氷のクレームブリュレ」。
豆花と団子、豆や仙草ゼリーにかき氷をかけた台湾ではよく見かけるものなのですが、そこに練乳をかけてキャラメリゼするという工程が加わり全く異次元のものになっています。
このスイーツ、恐ろしく凝っている。団子も9種類のフレーバーから日替わりで5種類を使うそうなのですが、5種類がちゃんと入るようにするために「お玉でゴソッとすくってよそう」ということができなくなったおりやたらと手間をかけています。そして極め付けはかき氷の上からキャラメリゼするという狂気の工程。網目模様を作るに至っては想像もつきません。
この恐ろしく凝ったスイーツ、おじいさんがゆっくりと作っているんです。若者が伝統的なスイーツに変化を加えておしゃれにアレンジとかじゃないんですよ。なぜかおじいさんがこれを作ってる老舗なんです。
そしてその味はというと、何にも似てない。
もちろん部分部分は分かります、豆花が入ってますし緑豆があります、かき氷はコーヒー味、煉乳がキャラメリゼされてクレームブリュレのような味になり…これらが合わさった味をどう形容するかというと、手持ちのいかなる表現も届かない。なんか今の時代のスイーツとは思えない食べ物です。未来のスイーツを食べてる気分。AIが考えたメニューみたい。
食べ終わった頃、おじいさんが「あげる」といってクレームブリュレかき氷のストラップをくれました。
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ほんとになんで??
こんなに凝ったスイーツを作ってしかもグッズまで作っちゃう凝りよう、ただごとではない。
このスイーツ、なんというか、あまりに飛躍してるんですよね。既存の豆花やかき氷から進化を2,3ステップくらいすっ飛ばしている。進化の途中の化石が見つかっていないミッシングリンクのような食べ物。
なぜおじいさんが突然これを作るに至ったのか…もしかすると、彼は未来から来たのではないでしょうか。
未来から来た彼がなんらかの理由で帰れなくなり、未来のスイーツをなんとか現代の技術で再現しているのではないでしょうか。
目的はもちろん、偶然この時代に遊びに来た未来人に見つけてもらうことです。未来のスイーツを出し続けていれば未来人はその違和感に気づきコンタクトしてくるはず、そして未来へ連れて帰ってもらおうとしたのではないでしょうか。
しかしこのお店はもう長いそうです。未来へ帰ることを待つうちに彼はすっかりおじいさんになってしまった…それでもまだ、未来の誰かに届く日を待ちわびてこの未来スイーツを作り続けているのでしょう。
もし未来の方がこのnoteを読むことがありましたら、どうかおじいさんをタイムマシンで迎えに行ってあげてください。
もしタイムマシンの起動にあのストラップが必要でしたら、僕が預かっていますので取りに来てください。