24/03/17 【感想】変な絵(小説単行本)
雨穴『変な絵』を読みました。
上記の出版社ページによると「長編小説」「国民的スケッチ・ミステリー」だそうですが、『変な家』と同様に連作形式となっています。
『変な家』とは出版社が別なんですね(そっちは飛鳥新社)。いま調べて初めて知りました。
ジャンルとしてはミステリ小説、方向性としてはいわゆる「意味怖」になるというのも『変な家』と同様。
ただ『家』の方は間取り図から物理トリックを推理するというアクロバットをやっているのに対し、本作で扱う「絵」は元々「人間の行った表現」です。何かを伝えようとして描いた絵からそれを読み取るという心理的な話になってきます。
僕のミステリの好みでいうと心理ミステリって全然刺さらないんですが、この2作品に関しては別。絵の読み解き、面白かったです。
ブログにアップされた複数の絵を読み解く第1章「風に立つ女の絵」が一番作り込まれていて完成度も一番高いように感じましたが、第2章「部屋を覆う、もやの絵」も子供の描いた絵を推理するという構図や謎解きの気持ちよさ、そして全体に仕掛けられたツイストも効いていて良かったです。
ただ、小説としては残念に感じられるところも多かったです。
第2章以降では「真相を知る人物の視点に切り替わり、地の文で真相を全部独白して終わり」のパターンが多用されるのですが、これがイマイチでしたねえ。そうせざるをえない事情もわからないでもないのですが、紙面にご当人がいきなり出てきて全部口で説明して終わりというのはなんだか味気ない…。