24/07/11 【感想】バッタを倒すぜ アフリカで

前野ウルド浩太郎『バッタを倒すぜ アフリカで』を読みました。

ベストセラーとなった『バッタを倒しにアフリカへ』の筆者による続編です。僕もご多分に漏れず前作を読んでハマったクチで、筆者の処女作『孤独なバッタが群れるとき』も読みました。

筆者は昆虫学者で、通称バッタ博士。バッタは大量発生して食料に甚大な被害をもたらすことからその生態の解明が求められ、特に大量発生がたびたび起こるアフリカでは対策センターが設けられています。筆者は研究テーマにバッタを選び、アフリカのモーリタニアでフィールドワークを行いました。現地での体当たりの調査や現地の人々との交流、そしてポスドクという立場の苦悩などがバッタ解説と並ぶ前作の柱になっていました。前野ウルド浩太郎の「ウルド」はモーリタニアでの活躍が評価され現地で授かったミドルネームだそう。

続く本書では研究者としてステップアップした筆者が、それでも諸々のしがらみに振り回されながらモーリタニアのみならずアメリカ、フランス、モロッコなどを渡り歩きながら様々な体験をしたエピソードがダイナミックに描かれています。これが楽しいったら。本筋と関係ないところで熊を見つけてニュースになってるの、面白すぎる。
前作の時点でハリネズミを拾って名前をつけるだけの話に1章まるまる使っていたりしましたが、本書はそれに輪をかけて四方山話がボリューム満点。脱線しまくりです。正直に言うと最初はそれを読みづらく感じたりもしたのですが、次第に楽しめるようになりました。具体的には200ページを過ぎたくらいから。あ、本書は新書ですが600ページ以上あります。
特に各地での人々との交流はどれも心温まるもので、こういう海外生活譚を読むのが好きな身としてはとても楽しめました。逆にフィールドワーク部分の話は前作のほうが豊富だったりするので、併せて読みたいところ。

終盤では全世界を駆け巡った例の病やアフリカで数十年ぶりに起きたバッタの大量発生など記憶に新しい出来事がリアルタイムに描かれ、それに伴い筆者の人生が激動する展開は迫力満点。そして「第10章 結実の時」ではひとつの集大成のような大団円を迎えることになります。これが以前の作品から読んできているファンとしてはやっぱり嬉しかったですね。
サービス精神満点の、楽しい一冊でした。