24/12/07 並行世界のパーティー

諸々の買い出しに出かけたついでにデパ地下の惣菜屋で派手な弁当を買って帰りました。
3x3の9マスに区切られていて、うち2マスは繋がっていてすき焼き丼。他の7マス中3マスにエビチリ・有頭エビマヨ・有頭エビ揚げのなんか甘いソースで絡めたんのが入っています。8分の3がエビ。
その他にマカロニサラダとかローストビーフなどなどが入っていたのですが、これらを食べていると無性にパーティーにいるような気持ちがしてきます。実態としては自宅でYoutubeを見ながら弁当を食べているだけなのに、口だけがパーティーにいる。並行世界の自分がパーティーで意地汚く皿に盛った料理を食べているのが口だけこっちの世界の僕にも反映されているような感じ。


『荒木飛呂彦の新・漫画術 悪役の作り方』を読みました。
タイトルには「悪役の作り方」とあるのですが、もちろん悪役の作り方もトピックとしては出てくるものの内容としては「漫画家になる人のための、漫画の作り方」がメインです。

まず漫画というものの構造として、「テーマ」が真ん中にあってそれを実体へ結びつける3本の柱として「キャラクター」「ストーリー」「世界観」があると説明しているのですが、ここの考え方がまず面白い。
というのも、この3本だとレイヤー順としては世界観が一番ベースにあってその上にキャラクターやストーリーがあるように思うじゃないですか。でも荒木先生はまずキャラクターだというんですね。先にキャラクターを作り込んでいくとその造形から世界観が見えてくるし動機からストーリーが生えてくるようなイメージ。そして何より連載漫画としてはキャラクターが前面に出て読者を引っ張っていかないといけない。新連載を持たせてもらった新人漫画家がいきなり世界観を提示して読者について来てもらうというのはとても難しい。
冒頭のここで早くもわかるのが、この本はフィクションの構造解説ではなく「職業漫画家の制作術」なのだということ。コンテンツを分解して説明してくれるのではなくて、ここにあるのは「職業として漫画作品を連載する」ことの方法論なのだと言葉ではなく心で理解できました。

「テーマ」と「キャラクター」の話は以降も太くこの『漫画術』を貫いていて、ブレてはいけない部分、臨機応変に変えていっていい部分などの「連載術」としても語られていきます。非常にプラクティカルで、荒木先生が本気で職業漫画家としての仕事の技術を包み隠さず伝えてくれていることが伺えます。変な話、「アーティスト」として作品の話をすることだってできたと思うんです。でも、本書はそれではなくて手を動かし編集とやり取りしながら雑誌に毎週漫画を載せて読者に読んでもらってお金を稼ぐ仕事としての制作の話がある。

「ジョジョ」を始めとする荒木作品の大ファンとしては「確かにここはこのようにして作られていたな」としっくりきますし、実際にジョジョのキャラクターたちがどのような考えでデザインされていたかの話もたくさん出てきてファンとしては嬉しい限り。
やっぱり荒木先生のエッセイは間違いないですね。非常に良いものを読ませてもらいました。