24/10/24 【感想】言語学バーリ・トゥード Round 2: 言語版SASUKEに挑む

川添愛『言語学バーリ・トゥード Round 2: 言語版SASUKEに挑む』を読みました。

以前ここでも感想を書いたRound 1の続編です。
今回も「倒置法が与える効果」を理屈だてようとしたり、その例としてジョジョの印象的なフレーズが出てきたりとキャッチーで楽しい。
「空条承太郎 本日中にきさまを殺す わたしの幽波紋スタンドで!」はちゃんと修正後のものを使っているのに対し「なっ! 何をするだァーッ」は原文ママだったりときめ細やかな配慮(?)が光ります。
(※「幽波紋」が正しい表記だが古い版では「幽波絞」になっていた)

言語学という学問の勘違いされやすさや「誰でもいっぱしのことは言えそうに思いがち」であることの生むSNS上での厄介ごとへのにじみ出るような愚痴もまた面白いのですが、それが結実したのがタイトルになっている「言語版SASUKE」という発想。
SNS上での野良試合だとルールも審判もなく誰が本当に言語学が強いのかわからない。また言語学者は「言語学における強さ」が知られていないのでナメられる。というところから言語学者や在野の言語学者気取り等々を東京ドームに集めて言語学版SASUKEをやろうというネタでひと盛り上がりする回は面白かったです。

個人的に好きだった回は、チンケなYahoo!ニュースの見出しで見かけるようないわゆる「釣りタイトル」の手口を理論的に説明する回、「7.【コント】ミスリーディング・セミナー」。
本来ニュースタイトルはニュースの内容を分かりやすく伝える、つまりなるべく読者の中で意味のブレが生じないようにするべきなのですが、むしろあえて読者を勘違いさせるようなタイトルをつけて興味を引く手法の具体的なパターンが語られています。
本書…というか筆者のスタイルは前作から一貫してそれらの言葉の使い方について是か非かを語るのではなく「そういう現象」と捉えて現象を解き明かすもので、これもちょうど良い距離感で読みやすかったです。