坪井遥

編集者/マーケター。外資コンサル、ハフポスト、BBC、TikTokを経て、現在潜行中。個人的な文章をつらつらと書きます。

坪井遥

編集者/マーケター。外資コンサル、ハフポスト、BBC、TikTokを経て、現在潜行中。個人的な文章をつらつらと書きます。

マガジン

  • コンテンツ過剰摂取

    坪井が体験したコンテンツの紹介や感想や批評っぽいもの

最近の記事

穢れの先で

10年前、千人単位のホールをパンパンの満員にしていた天才アーティストが、目で数える限り200人も客がいない小さな会場で歌っていた。 声量こそ落ちていないが、天賦の武器だったハイトーンもロングトーンも出なくなっていたし、 デビューしたての頃、少しでも鋭い言葉が耳に触れたら自害でもしてしまうのではないかというような繊細さと壊れやすさを湛えていた彼が、2024年の今、MCで酒と金の話ばっかするようになっていた。終盤とか曲の終わりに「つかれたよー!」って叫んでたし。 CDのめっち

    • speechless

      No matter how much time I spend to learn the arts of the languages and the ways to express the feelings/emotions, it has always been difficult to describe what I think accurately. I even dream a lot if I just had 3 yrs old-like vocabularies

      • 愚かさと、赦すこと

        話題になっている『Don't Look Up』という映画を見た。 登場人物の誰もがどこか愚かで、大小さまざまに罪を犯す。それらは許されたり許されなかったりするのだが、とある罪の告白を許した人の表情がやけに印象に残った。 一瞬の驚きのあとに、安堵と諦念の入り混じったような顔。一息おいて、精一杯の作り笑いとハグ。人が人を赦すときの、きっとほぼすべて。 自分はあの人物のように人を赦せているだろうか。そう思いを馳せずにいられなかった、あの繊細な面持ち。 告白と懺悔のあとコンマ数

        • 知らない美的感覚をわかりたい話

          ネイルを見せてもらいながら「見せると女性には『かわいい』って言われて大人気なんだけど、男性はわからないって顔をする。そういうもんだと思う」と言われて、まあ確かに「かわいい」の正確な感覚はわからなかったし、そういうもんだとは思うのだが、その「ネイルがかわいい」の体系をわかりたいんだよなと思ったりもする。 逆に俺も、ある年の夏に狂ったように観ていた『日本統一』シリーズとか『仁義なき戦い』シリーズとかのヤクザものVシネに漂う魅力をわかってもらえるかというとそんな自信は1ミリもない

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        • コンテンツ過剰摂取
          2本

        記事

          ハイタッチを3回

          親族が集う新年会があって、その帰りに5歳児に「ばいばーい」と手を振ったら、とことこと満面の笑みで近づいてきてハイタッチを3回された。めちゃくちゃほっこりした。 これは単に子供好きの延長なのか、血縁がより深い思い入れを呼び起こしているのかわからないけれど、奇妙な感慨を抱いた。 願わくば10年後もハイタッチを求められる従叔父であれたらいい。難しいかなあ。(174文字、10分)

          ハイタッチを3回

          前ステの話

          格闘ゲーム用語で「前ステ」というのがある。「前ステップ」の略で、「リスクを取って相手の懐に潜り込み、リターンの高い技につなげる」行動を指す。この前ステってやつがとても苦手だ。ゲームでもリアルでも。 友達多いよね、とよく言ってもらえるけれど、「前ステ」を決めて友人を作ってきたわけではなくて、ただ単純に新しく友達ができる機会の数をこなしてみただけだ。新しく出会う人への前ステ、知り合った人への前ステ、仲良い人へのさらなる前ステ。どれもリスクを嫌って踏み込めないのは、あまり民族性と

          前ステの話

          イチから生き直す

          裏切りの2021 新年早々から暗いことを書くけれど、2021年はいろんな人を裏切ってしまった年だったと思う。 もちろんこれまでも人に迷惑をかけることは多い人生だったけれど、自分がかろうじて守っていた底が抜けたような感覚。仕事に穴開けたり、人間関係にヒビを入れたりするような、大きなやらかしがあった。 そしてそれは何より、自分の自分自身に対する期待を裏切ることでもあったかもしれない。 相変わらず読み書きの能力は低位安定したままで、回復はのろのろとした歩みのままだ。 読みの方は

          イチから生き直す

          編集者が日本語運用能力を失うとどうなるか

          あなたは見出しを読んで、URLをクリックし、 1行目に目を走らせたあと、今この文節を読んでいる。 その能力を、僕は失くした。 何を失ったのか昨年あたりから予兆はあった。 公私問わず、もらった連絡が頭に入ってこなくなった。LINEの瞬発力には定評があった自分が気づけばボトルネックになることが増えた。 読む書籍の数も極端に減ったが、これは学生時代が異常だったし、仕事で文章アホほど読んでるし、ということで気にしていなかった。 ある時期から、異変が起きる。 文章を目で追っ

          編集者が日本語運用能力を失うとどうなるか

          宿題はまだ解かれていない

          2016年のことをよく覚えている。 所属していた媒体はちょうど年1の国際編集長会議を開いており、俺の上司を含むお偉方は開催地のイタリアにいた。 俺は東京のオフィスで速報を回す仕事をしていたが、彼ら彼女らが米大統領選を見守る様子は、社内のネットワークや各々のソーシャルメディアアカウントで頻繁に共有された。 予想を覆す結果が少しずつ確たるものに近づくにつれ、落胆の色が濃くなっていく。当確が打たれた頃には、1年の達成を言祝ぐはずの会議の場は、まるでお通夜のようになっていた。 い

          宿題はまだ解かれていない

          優しさか冷たさか

          いろいろな外部刺激を自分に与えようと試行錯誤したのが奏功したのか、少し脳が覚醒してきたのを感じる。何か物事を受け止めた時に、きちんと思考が働く感覚。この数ヶ月失われていた感覚だっただけに安堵するところがある。 言い換えると、よしなしごとにたいして「言えること」が増えた、ということでもある。noteやソーシャルメディアもその発露の一形態だ。 ただ、「言えること」が増えたことは、「言いたいこと」が増えることとイコールではない。 人に何かを伝えようとすれば、何を伝えるか(wh

          優しさか冷たさか

          ラブレターに近しい何かとしての「解説」

          「解説が本編を超えるぐらい良すぎるから読んでみろ」と友人にとある文庫本をおすすめされて読んでみた。書くだけではなく読むことにも少しリハビリが必要なようで、20ページぐらいの短い文章を、週末をかけて少しずつ、少しずつ読んだ。 書籍の解説は、ラブレターに近いものがある。敢えて本職でない書き手の例を挙げるのもなんだが、南海キャンディーズ山里亮太の『天才はあきらめた』にオードリー若林正恭が寄せた解説文なんてその極みみたいなものだ。 ラブレターと違うのは、送る先が愛する人ではなく読

          ラブレターに近しい何かとしての「解説」

          仕事を辞めた

          11月30日をもって前職を退社した。「次」を決めずに辞めるのは人生で初めてのことだ。 さすがに仕事を辞める前後には心身の負荷がかかるものだったらしく、それに将来への不安も相俟って調子を崩した。何もできない週末の夜、床に臥したままラーメンズの「器用で不器用な男と不器用で器用な男の話」を流していたら、なぜだか知らないけど号泣してしまった。何度も見てオチも知っていたはずなのに、ぼんやりした頭で思い出せずにいたら、小林賢太郎の慟哭に不意打ちを受けた。 30も超えて浮き沈みあるまま

          仕事を辞めた

          ドッジボールのような

          20200722 連休前最終営業日。なるべく早めに色んなこと整理しようと思いつつ、結局各所とボール投げ合ったりしながら夕方まで。こんなもんかなと思いつつ反省しつつ。週明けの宿題も結局ちょっと残っちゃうし。 パーソナル。背中と三頭筋の日。連休はトレーニングを入れなかったので、週明け体重増えてたらすみませんと布石を打っておいたら「そうなってたら来週再来週ぐらいで取り戻すんで大丈夫です。連休はあまり心配せず休んでください」と言われ、安心するような来週以降の嵐を心配するような。

          ドッジボールのような

          労働者のプライド

          20200721 少し早起き。じわりじわりと寝る時間も起きる時間も早くしている。つもり。 パーソナル。胸と三頭筋の日。大体筋トレの上げられ具合でコンディションがわかるようになってきた。今日はぼちぼち。 ミーティング1つ。今週が3日しかないから5日分を3日で、とはならなそうだけれど、その分のしわ寄せは俺の場合来週から再来週にかけてきそうな気配がする。今から対ショック体制をとらなければ。 サラッと見の原稿を1本、がっつりめを1本。 秘密兵器がついに出荷されるとの情報を得

          労働者のプライド

          息を止めて深く潜れ

          20200720 少し早起きしてしまい、戦略的に二度寝。 先週末に仕込んでおいたことがいくつか良い知らせとなって帰ってきていてちょっとテンションが上がる。金曜から月曜ほっておくだけで破壊的な数字のメールやら何やらが届くが、いなせるだけの気合は湧いた。 勢いづいて、苦手な書類仕事をいくつか。 「好きな仕事」はもちろんあるし「苦手な仕事」もあるのだけれど、こと「嫌いな仕事」に関しては、それに臨めるテンションや気合と、あとはしっかりとした時間の余裕があるかに大きく左右される

          息を止めて深く潜れ

          ズレた間の悪さも

          20200719 ギリギリで朝と言われる時間に起きる。 休みの日だから平日に進めることの貯金をしておきたい、という気持ちと、やるべきことをやらないでいいのが休日じゃないか、という気持ちとがせめぎ合ういつもの日曜日。大体の場合は後者が勝つし、今日もご多分に漏れずそうだったのだけれど。 用事で外出して、真心ブラザーズを聴きながら帰る。 小学生の頃にはえらい勢いでCMソングに使われていたし名曲揃いなのだけれど、いつしか自分の中のヘビロテから外れて、ちゃんと聴いたのはもう15

          ズレた間の悪さも