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『ダサかっこいい』の概念

近頃、世間を賑わせている『ダサかっこいい』ことDA PUMP。
3年半ぶりの新曲『U.S.A.』が絶妙なダサさと圧倒的なかっこよさにより6/9現在YouTubeでの再生回数が508万回(6/19現在1000万回突破)と超絶的な支持を得ている。
まだ聴いていない方は一度聴いてみて欲しい。

私自身、昔からDA PUMP の事が好きと言うわけでない。
言ってみれば「にわか」だが、馬鹿にしている訳ではないので許してほしい。

さて初めに私が受けた印象は「ダサい」だった。
それは、今回のCDのジャケットを見た時だった。

時代を完全に無視した超然的配置。
一瞬、時代に置いていかれたのか、時代を置き去りにしたのか分からなかった。
どんな曲なのかYou Tubeで聴いてみたら、初めは笑ってしまうくらい「ダサい」と思ったのだが、繰り返し聴いていると印象は逆転していった。

●ISSAの歌唱力

●ダンスのかっこよさ

●ノリ易い曲調

●ダサい歌詞

まずはDA PUMP唯一の結成メンバーであるISSAの歌唱力である。
ダンスを踊りながらあの高音を崩れることなく歌い上げている。
昔と比べても歌唱力は落ち込むどころか、上達している印象を受けた。
自身をセンターに置き、歌に集中するわけではなく、グループ全体の一体感を演出するためにダンスは手を抜かない。
非常にかっこいい。

そのダンスだが、振りがダイナミックでかっこいい。
メンバーそれぞれに個性があって見ていて気持ちがいい。
特に私が気に入っているところは、「U.S.A.」のところだ。
上手く言葉で説明できないが、こんなダンスをISSAの歌と一緒に踊れたら最高に楽しいのだろうな、と羨望する具合に気持ちが良い。

曲調はダンスも相まって一度聴けば耳に残るサウンドだ。
この曲はJoe Yellow -『USA』をカバーしたものらしいが、このダンスミュージックを見事に自分たちのモノにし、尚且つ日本人に焦点を合わせたものになっているように感じる。

上記の元の曲を聴いていただければ分かると思うが、『だけれど僕らは地球人』の『地球人』は完全に空耳ではないか。
『どっちかの夜は昼間』も当たり前だろ、とツッコミたくなるバカバカしさだ。

ジャケットと歌詞のダサさとは裏腹に精巧な歌唱力とキレの良いダンスが相まって『ダサかっこいい』の極地を演出している。
近頃、アイドルが小難しい歌詞の曲を歌っているのを耳にするが、歌詞のかっこよさを度外視してかっこよさを演出することは非常に困難を極める。
かわいさとかっこよさを掛け合わせたアイドルとダサさをかっこよさで覆したDA PUMP とは比較の対象にならないぐらいの素晴らしさがある。

『ダサかっこいい』の境界線

一口に『ダサかっこいい』といっても、どの程度が『ダサかっこいい』と言えるのだろうか。
『ダサい』と『かっこいい』の割合は具体的には3:7ぐらいだと考える。
たとえば俳優の菅田将暉だが、彼のファッションは一般人が着こなすには厳しいものがある。
髪型にしても彼にしか許されない何かが存在していて、一方的に片方に占拠されないバランス感覚が備わっている。
それは世間の評価だったり個の才能だったり、一般人には備わっていない何かだろう。
彼が『ダサい』と評価されないのは、世間一般に彼の存在が認識されていること以上に彼の役に対する情熱や存在感が『ダサい』の追随を許さぬほど圧倒的に凌駕しているからだろう。
が、今回のDA PUMPは『ダサい』が先行していた為、『かっこいい』が追い越す必要があったわけだ。
見事に『ダサい』を追い越した現在、そのギャップの振り幅に心を掴まれているのである。

この形容詞を二段に構えた表現方法はいくつか存在する。

アンガールズの『キモかわいい
今となっては一般的だが、アンガールズのそれは非常に考察が難しい。
かわいいの部分が全く分からない。
したしながら、このような俗称で呼ばれていた頃のネタ『ジャンガジャンガ』はオチがお互いに衝突してどっちつかずの状態を演出していた訳だが、あの何とも言えない空気感や表情は愛嬌があったのかもしれない。
これも割合は7:3に納まると思うが、大事なのは結語を何で締めているかだ。

倖田來未の『エロかっこいい
現在、「エロかっこいい」は衰退の一途を辿っている。
近頃、脱ぐ音楽家やエロさを前面に押し出した歌手に対して曲や歌での勝負を避けていると非難の的になり易い傾向にある。
エロさに対する一般的な主張だと思われがちだが、非難する彼らに音楽の評価をする気は毛頭無く、基本的には彼女たちの身体をしっかりと眺めた上で自らの卑しさを隠蔽するために一般性を装っているのだ。
ネットニュースの的となり易い『エロ〇〇』だが、「音楽で勝負したら?」「身体でしか表現できない奴」などと非難するコメントが山ほどある裏側ではちゃっかり恩恵を授かっているわけだ。

今回の『ダサかっこいい』は現在まで上記のような象徴的人物がまだ存在していないように思う。
過去に栄光を掴んだ彼らが「ダサい」を真剣に取り組んだ結果、「かっこいい」が構築された。
マイナスの要素からプラスに転じることはそうそうにあることではない。
現代の日本にとって失敗は一生付きまとうレッテルである。
犯罪でもない不倫を個人間の反省から社会的制裁にまで格上げする世の中である。
ISSA自身も度重なるスキャンダルでグループの存続が危ぶまれた時期もあっただろう。
しかし、彼は諦めずに音楽とダンスと歌という原点で再臨した。
潜在的なダサさをジャケットで植えつけられ、PVのかっこよさですべてを吹き飛ばしてゆく。
ダサかっこいい』とは過去の栄光に縋ることなく、一途に前進し続けた者が切り開いた逆転劇なのである。
大勢の観客を前にしていた過去とは裏腹に、現在はショッピングセンターでリリースイベント。
一度輝いた男の再起を世間は期待しているはずだ。
もう一旗揚げてほしい。

2018/06/09 紅白出場を祈願して

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