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ショートストーリー《もしたむっ!》Osamu.6:もさむとテレビゲーム

 この日出社した「もさむ」は、職場の一角にあるテレビに目がいった。
「あっ修さんだ! おはようございまーす!」
「はよざいます! 修先輩!」
 そのテレビの前にいたのは、同僚の良子と賢太郎。
「おはよう。お前ら何やってんだ?」
 もさむはふたりに尋ねる。
「昨日部屋を整理してたら、懐かしいテレビゲーム出てきたんで……職場のみなさんと遊びたくって持ってきたんすよ!」
 賢太郎はゲームのコントローラーを握ったまま答える。隣にいた良子もコントローラーを握っている。
「おいおい、ゲームなんか持ってきていいのかよ」
「この会社、基本自由じゃないっすか! 休憩時間にみんなで楽しめていいと思うっすよ!」
 賢太郎は笑顔で言う。
「そうか、まあいいか。ところで、何のゲームだ?」
「格闘モノっすよ! 朝イチで会社に来て、さっきから関向と遊んでるんす!」
 もさむはテレビ画面を見る。画面の中には、キャラクターがふたり。ひとりは倒れている。
「でも私、新谷くんに負けっぱなしで……。私も子どもの頃遊んでたものだから、腕には自信あったんだけどなぁ……」
「僕は子どもの頃から無敗だからね! ちょっとやそっとじゃ負けないぞっ」
 賢太郎は胸をドンと叩いて勝ち誇る。
「ほう、お前そんなに強いのか」
「はい!」
「だったら一度手合わせ願おうか」
 もさむは賢太郎を見据えたまま、着ていたコートを脱いだ。
「のぞむところです! 先輩相手だからって手加減しませんからね!」
 賢太郎は気合十分に拳を握り締めた。

「な……な……」
 賢太郎は、コントローラーを握ったまま目を見開いていた。賢太郎の操るキャラクターは、もさむの操るキャラクターに徹底的に叩きのめされている。まったく隙がない。
「これで終わりだ」
 そう言ったもさむがコントローラーをすばやく操作すると、もさむの操るキャラクターが放った衝撃波が、賢太郎の操るキャラクターを吹き飛ばした。勝負ありだ。
「修さん、強い……」
 思わず良子がそうつぶやく。
「ぼ、僕の無敗記録がぁ……」
 コントローラーを落とし、崩れ落ちる賢太郎。
「お前の力はそんなものだったのか」
 もさむは立ち上がり、賢太郎を見据える。
「顔を上げろ。これから俺がみっちり鍛えてやる」
 腕組みをするもさむ。
「修先輩……!」
 賢太郎は顔を上げてもさむを見つめる。
「いやー……鍛えるのもいいけど、仕事もちゃんとやりましょうね?」
 良子は苦笑いをしながらそう言った。

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