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おいしい酒器。利き酒Vol.8『Ohmine Junmai/火入れ 3粒』
自分の持ち味を最高の形で表現してくれる器。日本酒は、そんな酒器を求めている。
同じ日本酒で、酒器を変えると味わいがどれほど変化するのか。酒器を代えて利き酒する、「おいしい酒器」シリーズの第8弾。
酒器が変わると味わいも相当変化する。
日本酒の美味しさの本質は「味わいの重なり模様」にあると思っているぼくは、普段日本酒をワイングラスで飲む(『リーデル』というグラスメーカの脚なしタイプ)。ワイングラスで飲む理由について詳しくは以下記事の通り。
そんなぼくの個人的嗜好は一旦置いておいて、他の酒器で飲むと味わいや香りが具体的にどう違うのか試してみた、その記録。
1.銘柄選定の基準
今回酒器別のテイスティングに選んだ銘柄は、『Ohmine Junmai/火入れ 3粒』。50年以上休眠状態にあって2010年に復活した、山口県 『大嶺酒造』さんのお酒。
スペックはいわゆる「シンプル純米酒」なんですが、常温あたりで真価を発揮する伝統的な純米酒とも違い、また吟醸酒寄りの香り高い純米酒とも違う味わい。
火入れ(殺菌熱処理)した純米酒とは思えないフレッシュでジューシーな旨みと甘味、各味わいのバランス感と飲み口の柔らかさはほんとに完成度が高いと思い、選定しました。
ラベルデザインもシンプルで品がありカッコいいですよね。スウェーデンのデザインラボでデザインされた、とのことです。
裏ラベルの写真を掲載しておきます。原酒(アルコール度や香味の調整のための加水をしない造り)で、14.5度ですから、徹底した品質管理の様子が伺えます。
2.用いた酒器と選定の基準
今回用いた酒器はこれまでと同じく以下一覧表の5種類。
1)普段は①のワイングラスで飲んでいるので、これがぼくの標準。
2)②利き猪口だけ磁器になるが、これは利き酒の一般「標準」酒器。ぼくの「標準」である①ワイングラスとの差異を知る目的。利き猪口のサイズは①ワイングラスの口先口径と同じぐらいの8勺(1合の8/10)を使用。
3)②以外の素材は全てグラスで揃えた。素材は同じ条件で、形状が違うだけで味わいがどれだけ変化するのかを見るのが目的。
3.酒器別利き酒結果
①ワイングラス 結果:◎
入口は奥の方にマスカットや青りんごを思わせる、ほのかに甘酸っぱい香り。
口に含むとお米の旨みと甘みが口一杯に広がるプロセスの中に、まろやか且つ爽やかな輪郭を持つ酸味がキレイに乗ってくる。
このバランス感がたまらない。
そのままのキレイな飲み口のキレ感。
火入れのシンプル純米酒とは思えないフレッシュな旨み感と、柔らかくキレイな飲み口の中にお米の甘さが優しく表現される。
これは美味しい。
②利き猪口 結果:△
酸味が前に出てくる。
ワイングラスに似てるいるが、飲み口が全体的にやや淡麗になる。
甘さが少し奥にいき、酸味の柔らかさが前に出てくる。
バランス感は決して悪くないが、飲み口が軽快になってしまうのは、旨みと甘味が特徴のこの酒質を適切に表現しているとは言えず、もったいないと思う。
③天開グラス 結果:◎または○
飲み口の柔らかさが出てくる。甘みも酸味も優しい。
飲みやすく、綺麗な飲み口のこの純米酒が表現される。
④カクテルグラス 結果:◎
甘さと、それにまして旨味が広がる。
膨らみ感、ふくよかさを感じるのが意外。
もともと苦味をほぼ感じない酒質のため、嫌味を感じる要素がなく美味しい。
このグラスで飲んで、後口を軽快に感じるのは初めて。
⑤シャンパングラス 結果:△または×
酸味が前面に出る。
この柔らかく旨みのある味わいはこのグラスに合うと思ったが、何故か旨さと甘味が後方へ行くような気がして、バランスが悪いと思う。
4.総評
まず味わいのバランス感がとにかく素晴らしく、完成度の高いお酒だと思いました。美味さも甘みもしっかりとありながら柔らかい酸味のおかげでくどさは全くなく、火入れとは思えないフレッシュでジューシーなお酒。
酒器別では、ワイングラスでの飲み口はもう完璧と言っていい美味しさでした。冷やしても少し温度を上げて常温に近づけてもバランスが全く崩れなかったです。
カクテルグラスでの美味しさは意外。これまでのテイスティングではどうしても入口から苦味がやってきていたところ、今回はそもそも苦味の要素がほぼない酒質のためか、代わりにふくよかさ、まろやかさをより一層際立ててくれたのはカクテルグラスでした。美味かった。
このクセになる旨みと甘みと綺麗でジューシーな飲み口は、日本酒を初めて飲む方から普段飲み慣れている方まで、幅広く支持を集めるお酒じゃないかなと思います。
ラベルも品があって、贈り物にも良さそうですね。
美味しいお酒をありがとうございました。
ごちそうさまでした!