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読書日記『恋と禁忌の述語論理』(井上真偽,2018)
2015年講談社ノベルスとして刊行されたものの文庫。加筆修正されている(らしい)。井上真偽は本書で第51回メフィスト賞を受賞してデビューしている。
主人公である大学生・詠彦(えいひこ)くんが遭遇した事件を、叔母の数理論理学者・硯(すずり)さんに持ち込み、探偵の推理が正しいかを検証してもらうという話。中編3本とエピローグ的1本で構成された連作長編だ。
*以下、詠彦くんが持ち込んだ事件、および硯さんの「検証」重箱の隅をつつくので、ネタバレ注意。
レッスンⅠ スターアニスと命題論理
この事件については、私も硯さんと同じところに引っかかったし、検証にも納得した。
レッスンⅡ クロスノットと述語論理
・「具合が悪い」とオーナーがわかるのであれば顔を見られる可能性が高すぎる。オーナーがレジ打ち等の応援に来る可能性も、その場合は高くなる。そんな危険をおかしてまで、オーナーに罪を着せる方法を取るか?
・もし硯さんの検証が真であれば、携帯に指紋等が付いているのではないか。そしてさすがに鑑識が見つけるのでは。手袋をしてサーブしていれば客にもオーナーにも違和感があるだろう。
・携帯に関してはもうひとつ、パスワード解除問題がある。パスコード、指紋認証、顔認識…最近のスマホだと仮定してだけど、どうやって解除した?
レッスンⅢ トリプレッツと様相論理
・イリナはベッドの上の詠彦くんに飛び乗って起こした。足を怪我してるのに?(私はこの時点でイリナたちは三つ子なのかと思った)
・このトリックは目撃者がいなければ成立しないし、する意味がない。部屋割りは当日決まったはずだし、周防さんが起きているか(=目撃者がいるか)は結構偶然だ。
進級試験 恋と禁忌の・・・・・・?
レッスン1とレッスン2、3の詠彦くんのテンションの差は気になっていた。レッスン1ではある種他人事のような。でもレッスン2、3では、硯さんの検証にオーバー気味に戦慄している。このテンションの差が解題されてスッキリした。
感想
古野まほろの「臨床真実士ユイカ」シリーズを思い出した。ユイカの場合は特殊能力のようなものなので、こんなに複雑な「論理の授業」はなかったけれど。
今回は重箱の隅をつついてみた。硯さんは事実を記号化して公理で解こうとするが、「ひっかかり」に気づくかどうか、その事実に過不足がないかは硯さんの力量によると思った。
しかし、(解説にもあったけれど、)こんな小説を書けるのは井上真偽しかいない。それでこそのメフィスト賞だ。楽しかった。
読了日:2022/12/23