向田邦子×久世光彦=「麗子の足」
「この岸田劉生が描く麗子の像はもちろん複製ですが、これは父の一番好きな絵なのです」
麗子像の好きな紀田家の父(佐藤慶)は肺病でサナトリウムに入院してもう長い。残されたのは、母(加藤治子)、長女礼子(田中裕子)、次女貞子(今井美樹)、三女節子(速水昌未)の女ばかりの四人一家で、父の不在はこのシリーズの定番の家族形態となる。
舞台は昭和10年10月の東京、阿佐ヶ谷。母は医者一族の出であったらしく、一家に出入りする従兄弟の總一郎(永島敏行)は軍医中尉、「麻布のお爺ちゃま」祖父の