【ち○ちんの手術をした。】#3 〜要予約〜
僕の命運を託す泌尿器科は決まった。
いざ、予約だ。
シミュレーションは完璧。
電話をかけ「初診なんですが、ちんちんの先に出来物がずっと有って、それを一度診てもらおうと思って。」そう伝えるだけ。
スマホで検索し、画面に表示された泌尿器科の電話番号の部分をタッチする。
「....プルルルッ...ガチャッ、○○泌尿器科です。」
電話に出たのは女性だった。
『あ..女性かっ.....』
僕は、ほんの一瞬、怯んだ。
長年染み付いた童貞はそう簡単に拭えはしない。
どんな形であれ、女性との電話は緊張するのだ。
しかし、予約をするだけの事。造作もない。
「すみません。初診で、診察の予約をしたいのですが?」
どうだ!!!!!
女性を相手に、この端的で無駄の無い言い回し!!
つい先日童貞を捨てた男とは気付けなかっただろっ!!!
「はい、予約ですね。どうされました?」
「あ、えぇーっと、...ちn.....」
.....言えない。
芸人という仕事柄、人前で”ちんちん”と言ってきた回数は数知れない。
結構長く童貞だった僕は【”ちんちん”と言う系の仕事】も多くこなし、その芸人の中においても”ちんちん”と言ってきた回数が群を抜いて多い自負もある。
ライブで目の前のお客さんに向けて、
テレビでお茶の間の人々に向けて、
ネットで全世界の人類に向けて、
その四文字を言ってきた。
しかし、電話越しの女性に向かってその四文字を言った経験など一度も無い。
....恥ずかしいが言うしかない。
...ここで逃げられない。
..腹を括れ。
『よし!!!』
「あ、えぇーーっとぉーっ、陰茎の包皮の先端に直径9mm厚さ5mm程度の脂肪の塊と思われる物が幼少期からあり、可能であれば手術による切除をお願いしたく、明日の空いているお時間で診察していただくことは出来るでしょうか?」
MAXダサかった。
「なるほど...いつ頃からあるんですか?」
淡々と話は進んでいくが、恥ずかしさを隠すために医療ドラマの台詞のように説明したことにより恥ずかしさがバレてしまった今、もう電話を切りたい。
「えっっっと、中1くらいにはあったので、21年くらいですかね...」
切りたい。
「21年、すごいですねぇ〜。」
切りたい。
「ははっ..」
切りたい。
「それでは、明日の16:00からはいかがでしょう?」
「あっ、じゃあ、そこでお願いします。」
「はい。かしこまりました。それでは....ガチャッ。」
耐えた。
なんとか耐えた。