samatsu.

93年生。静岡文化芸術大学芸術文化学科卒。静岡市在住。学生時代に現代美術と演劇に傾倒し…

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93年生。静岡文化芸術大学芸術文化学科卒。静岡市在住。学生時代に現代美術と演劇に傾倒し、「書く」ことのよろこびを知る。身体や音楽、その他どんな表象にも代えられないことばそのものをみつめるために試行錯誤中。ライフワークは観る・書く・ガムラン。モットーはつよく・あかるく・うるわしく。

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平成は終わり、わたしは大学院を辞めた

 タイトルの通りだ。わたしは本日をもち、大学院を中退する。手続きはおそらく済んでいるとおもう。本当は、退学ではなく除籍がよかった。  「除籍」、「抹籍」というのはどちらも退学の一種であり、大学側による処遇を示す。除籍は今回の私のように期日までに復学手続きを行わなかったり、学費の未納が続く場合などに、それまでの取得単位などと含め大学内での履歴が削除される。抹籍はさらに重大で、たとえば罪を犯した場合などに下される処分であり、入学まで遡ってすべての記録が消去される。除籍の場合はたい

    • 他者の悲しみを消費する者たち

      『窓の外の結婚式』 原作:柳美里 演出:堀川炎 芸術監督:平田オリザ  これは、日本における「ケア」観念の欠如による加害の連鎖の物語である。  利賀創造交流館のおおきなブラックボックス。舞台下手には洗濯ロープがゆったりと張られ、大きな白いシーツがかかっている。中央手前にダイニングテーブル、イスが向かい合わせに2脚、背もたれのない二人掛けのチェアが1つ。下手奥にスタンドライトが置かれている。上手には流し台。そして中央上手よりに、白い格子窓がぽつんと浮かんでいる(正確には、黒い

      • 良い夜のためのソネット

         良い夜、というものが、わたしを迎えなくなって、どのくらいになるのだろう。わたしが夜を迎えるのではない。人が夜を迎えるのではない。ほんとうは、夜のほうが人を迎えにくるのだ。  けれどわたしには夜は来ない。もうずっと、まるで遠い昔にそう定められたみたいに。  わたしには、ほんのわずかなことばの芽だけがある。人よりほんのわずかできるだけで、勉強のできない人間、そういう、ほんのわずかな才能だけが、わたしに持たされた全て。わたしが「持ち得た」とももはや思えない。「持たされた」、という

        • 記録042

          誰も見ていなくても書く。誰かが見つけてくれるのを待つのではなく、ただひたすらにわたしのために書く。わたしの慰め、歓び、悲しみのために書く。そういう風に書いていくと決めよう。 きょうの病院でようやく診断がおりた。わたしは不注意優勢型のADHDである。 かつては、おそらく私は「ややそういった傾向がある」だけで発達障害とまではいかなくて、認知特性も視覚がやや弱いので相対的に聴覚がやや強いというだけで特別なにかが弱かったり何かが強かったりするわけでもなくて、わたしは、少し弱い人間、な

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        平成は終わり、わたしは大学院を辞めた

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          記録041

          2月の記録を読む。3月に結婚し、4月からぽつぽつと仕事を始めた。2ヶ月半続いた展覧会のバイトが本日終わった。暇な日も忙しい日もあったが、概ね充実していた。やはり人と関わり、人と話す仕事でないとわたしにはできないのだろう。今ここにいる、目の前の誰かのためにはたらいていたい。典型的なADHDだ。今月からジムにも行き始めた。全然まったくモチベーションが上がらず、膝も痛い。いつまで続くのかわからないけど、とりあえず水に入るのだけは心地よいので、頑張れる限りやっていきたい。来年2月には

          人住まうところに夜叉の棲む~人ならざるものへの餞について

          『夜叉ヶ池』 演出:宮城聰 出演:SPAC  これは、おんなとして生きることの絶望と、少しばかりの慰めについての物語である。  さらさらと水の流れる音、小鳥のさえずりが聞こえる。萩原晃と妻の百合がゆっくりと紗幕の奥に浮かび上がり、百合は互いの手首に赤い布を巻きつけ、晃が「水は、美しい」と語ると、共に川へと身を投げる。観客が驚く間もなく、スクリーンにエンドロールが流れる。「夜叉ヶ池」と銘打たれ、俳優の名前が出そろい、そしてもう一度、冒頭部分の舞台設定が説明されていく。これから

          人住まうところに夜叉の棲む~人ならざるものへの餞について

          わたしは蒼夜

          回ってく ゆっくりゆっくり私の体 廃屋 ゴミ溜め 錆びた工場 めくるめく巻物 ゼンマイ仕掛けのドールハウス くるまはどこまで行けるのか?心配してない高速代 わたしだけのかなしみ追いかける 人魚は泡に わたしは塵に 誰もいないパーキング 自分の顔をぐるぐるさわる ほんとうに行ってしまったの?回ってく ゆっくりゆっくり私の心 窓ガラス 冷めた金属 舗装されたアスファルト そして海へとかえっていく だれもいない みんないる たくさんある なにもない 夢のようにあぶくを浴びて きらき

          わたしは蒼夜

          記録040

           仕事をやめて一か月が経つ。なんにもしていない。何にも。書けることがほとんどない。書こうと思うこともほとんどない。新しいゲームを買ったとか、お金が底をつきそうとか、そういう些末でなんでもないことしかない。  母は厳しく古式ゆかしい人なので、「金の切れ目は縁の切れ目」なのだという。一言言わせてもらうと、そんなわけあるかい。金がなくなったくらいで友達は減らないし恋人と別れたりしない。そんな資本主義の権化みたいなことが起こってたまるか。素直に「あなたに帰ってきてほしいのよ」となぜ言

          記録039

           読むのもしんどい、書くのもしんどい、動くのもしんどい、起きるのもしんどい、なにもかもが億劫でしんどい。まちがいなく抑うつ状態である。  昨年12月末で仕事をやめた。ついに、ついに待ち望んでいた日々がやってきた。朝はゆっくり起きて、同居人を送り出し、家事をして、ゲームして、読書する。そういう日々を少しだけしたいと思っていた。お金がないからほんとうに少しだけ。けれど、年末ごろからずっと体調がよくない。正月明けからはどんどん酷くなっている。朝どころか昼過ぎまで眠り、なんとか起きだ

          記録038

           わたしより優れた誰か。わたしより優れた部分を持つ誰かの、その優れた部分が憎い。わたしが持たないものを持っていることがとてつもなく妬ましく羨ましい。  という下書きが残っていた。恐らく少しばかりマイナスに振れたので、それを増幅させてなにかを書こうとしていたのだと思う。  こういう気持ちすら、いまはきれいに均されて、わたしのなかにあるのは、ただひと握りの砂のようなまどろみ。いっときあらわれた黒いきもちを、なんとか捕まえて伸ばして拡げて、やっと日記を書けるだけの質量にしている。

          記録037

            睡眠覚醒のリズムはどうですか、という主治医の質問に、ああ、はい、えっと、大丈夫です、とか、いつも適当に答えてしまっている。ほんとうは上手くいってない日が多い。特に入眠が難しい。最後の最後までスマホを手放せなくて、電源ボタンを押して床に伏せて置くという簡単な動作がいつまでもできない。このごろはセカンドオピニオンを擁するべきか、ずっと悩んでいる。   日中、あまりに眠いのを注意されるようになってきた。まずいな、とぼんやり思っているものの、もうあと数ヶ月だし、とたかを括っている

          記録036

           重度の鉄欠乏です、と言われた。あまりに眠気が凄まじく、立っていてすら眠ってしまうから、職場近くの内科へかかった。本当はその病院の脳神経外科への受診のつもりだったのだが、採血の結果は、フェリチンと血清鉄の不足だった。フェリチンが貯金で、血清鉄が財布。ヘモグロビンやほかの値は帳尻合わせで正常値を出しているだけで、ほんとうは火の車みたいな状態ですよ、と言われた。  わたし、血液まで貧乏なのか。めちゃくちゃショックだった。そんなことがあるか。ふつうは不眠になるんですが、眠いのはどう

          記録035

           日々が、少しずつ少しずつ崩れている。寝てしまう。どうしても、なにをしても、職場でかなりの時間、寝てしまう。それが本当に嫌だ。いやでいやでたまらないのに、どうしても、立っていても、睡魔に勝つことが出来ない。情けなくてつらいから、仕事に行きたくない。それでも行かなくてはならない。それが本当に苦しい。  少し前から久しぶりに躁転している。たくさん頭が回って、ことばがばらばら出てきて、寝なくても大丈夫で、なんでもできる気がしてくる。けれどそれはから回っているだけだし、ことばは散逸し

          記録034

          1週間が早い。夜になると熱が出るのが、もうずっと続いている。どうせ自律神経だろうと厭な気もちになる。 きょうはひどく不思議なことに、月曜日にも関わらず憂鬱さがなかった。布団から出るのは大変に苦痛な作業だが、きょうこそ行きたくない、とあたまが悲鳴をあげることはなかった。細々とした仕事をもらっていて、暇でなくなったからだろうか。それとも週末、友人と遊び、そして芝居をみたからだろうか。そうだったらいい。週末の楽しみが、平日のわたしを生かしてくれる。でもそんな生活、長く続けたくはな

          記録033

          前回の記録から、もう半年が経っている。わたしは相変わらず眠るのが下手で、更にスマホ依存が著しく進んでいる。特に日曜の夜は酷い。月曜日が来るのが怖くて怖くて、ずうっと液晶の明かりに照らされている。それが癖になってしまって、眠くて布団に入るのに、布団に入った瞬間目が冴えてきてしまうようになった。まずいなと思う。 仕事も相変わらず、1月から新しく入った人よりミスを出している。それを主治医に話して、薬を増やしてもらった。薬は好きだ。飲むだけで人間になれる。新しく入った人がおしゃべり

          トウキョウ・デッドエンド

           これを書くのはわたしのため。わたしのような悲しみを背負っただれかのためにじゃない。わたしのかなしみのため。わたしのかなしみにわたし自身が少しでも寄り添い、そしてそのかなしみを少しでも癒すため。けれど、そんなことはできないのだと知っている。  私の生まれは石川県の中都市。中都市といっても人口10万人と少しの、ぎりぎりの中都市。両親は理髪店を営んでいて、父はその3代めだった。わたしは生まれてすぐに私立の保育園に預けられた。わたしの学歴の中で、私立だったのはここだけだ。理由は明

          トウキョウ・デッドエンド