見出し画像

Brigitte Fontaine - Pick-Up

ブリジットフォンテーヌの2024年作。あらゆるスタイルに挑戦しつつ、常にラジカルな姿勢を崩さないスタイルは本当に素晴らしいと思う。本作ではネオサイケデリック的な要素をあらためて再構築したようなゴシックサウンドに圧倒される。本人の解説によれば幼少期から恐怖に取り憑かれておりカバーアートはその様子がまさにあらわれていると言う。

Neuf troisは、冒頭の短いトラックだがトライバルなリズムとアラビックな旋律にポエトリーリーディングを乗せた1970年代のブリジットフォンテーヌのアプローチに近い楽曲だ。サウンドはとても整理されており、カオスを抱えた表現者とのギャップがとても印象的だ。

Cantilèneは、カバーアートの幼少期のフォンテーヌにつながる恐怖が歌われている。死を蜘蛛の動きに例える歌詞が非常にエモーショナルだ。楽曲は叙情的で美しいピアノの旋律に惹き込まれる。マイナーコードで柔らかに辿る和声の一方で圧倒的なゴシック感も纏っている。圧倒的な説得力をもった美しい楽曲だと思う。

Le beau tempsは、アルバムのエンディングトラックになる。冒頭のトラックや中盤に差し込まれたトラックと同じようにトライバルなパーカッションが印象的だ。ところが冒頭の楽曲とはサウンドの組み立て方が大きく異なるように感じる。非常に混沌とした質感が覆っている。圧倒的な創作意欲と不思議な余韻を残してアルバムを終える。

いいなと思ったら応援しよう!