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Mathbonus - Voices

オレゴン州の音楽家Mathbonusによる2019年作。Fenneszのヒット作を思わせるノスタルジックな和声をミニマルミュージックの中に差し込んだ電子音楽の上品な響きが素晴らしい。本作は同年3月にリリースされているが、Bandcamp上の本人のメッセージは「もしあなたがこれを読んでいるなら、私もあなたもこの冬を乗り越えたのだろう」(if you're reading this we both survived the winter)という1行のみが記されている。とても静かでエモーショナルな作品を支えるにふさわしいテキストだと思う。

冒頭のHarmonic Specterは、2つのコードがひたすら繰り返されるミニマルな構成だが、ノイズまじりのエレクトロニカ的なエディットがゆっくりと質感が移り変わる中でとても美しい。和声に包囲される感覚が心地よい。

Foundation Daggersも構造は冒頭曲と似ているが、わずかな旋律が単音で示される部分もあり、一層エモーショナルな雰囲気がある。リバースを活かした音の質感はサイケデリックフィーリングもある。折り重なる音の柔らかさがサウンドへの没入感を伴ってとても美しい。

Radio Damageは、ドローン的なネオクラシカルの構図だが和声の移り変わりはどちらかというとポップス寄りのアプローチもある。ノイズを伴いながらエレクトロニカ系な音響の中でさまざまな表情を見せる
様に惹き込まれる。

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