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Zach Phillips - True Music
Fievel Is Glauqueを率いるZach Phillipsによるソロ名義2025年作。Bandcampにおける本人解説によれば、簡易なマイクロフォンとフリーの音楽ソフトを使ってアパートで深夜に録音されたという。それは、Fievel Is Glauqueの2024年作(Rong Weicknes)とは対照的な制作プロセスになるようだ。不思議な和声を伴って時にラジカルに、時に穏やかに奏でられるささやかなピアノの伴奏と歌を軸に構成された淡い日記のようなアルバムだ。
Tradewindは、シンプルなメロディーの繰り返しがポップさを生み出している一方で、ピアノは間奏など随所にラジカルなフレーズが差し込まれている。それらの無調前夜の20世紀初頭のシュールレアリスト的なピアノのアプローチに惹き込まれる。
Wind That Isn’t Airは、やや早いテンポの伴奏が奏でる近現代風の和声感覚の淡いピアノに断片的なメロディーのレトロポエティックな組み合わせがとても印象的だ。ここでも間奏の浮遊感が素晴らしい。複雑さと親しみやすさが交互に訪れる不思議な楽曲だと思う。
Visitorは、リズミカルなメロディーとピアノが奏でるフィーリングにどこかユーモアが含まれているようなところが面白い。とりとめない会話のようなピアノと歌がとても美しい。