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Vito Ricci - I Was Crossing A Bridge
本作はニューヨークを拠点にする現代音楽〜電子音楽家Vito Ricciが1980年代前半にリリースしたアルバムとカセット作品を集めた編集盤になる。ノーウェイブ以降のニューヨークシーンとどの程度リンクしていたかは分からないが、バレアリック〜アンビエントの流れに直結するサウンドは2020年代のアンビエントスケープとつながるようなサウンドに感じられた。
The Ship Was Sailingは、冒頭からドローンと軽めのディレイの組み合わせで本作のエクスペリメンタルな要素が凝縮されている。わずかに低音で示されるミニマルなラインと高音のドロップが1980年代エクスペリメンタルミュージックらしい雰囲気をもっていて心地よい。
Hlooywoodは、エモーショナルなコード進行にパーカッションの組み合わせが後年のダウンテンポ〜ローファイビートに繋がる様式を感じる。とてもモダンな楽想が印象的だ。
Cross-court (Get It)は、Old School系のビート感とボイスパフォーマンスやフィールドレコーディングを織り込んだエクスペリメンタルな音響が入り混じる。Talking HeadsとEnoの作品のように、一つ一つは制作当時のコンテンポラリーな手法なのかもしれないが、パーツが組み合わさって醸し出される質感に圧倒される。とても素晴らしいアプローチだと思う。