見出し画像

“偶像のプロダクトマネージャー” との付き合い方

これは Product Manager Advent Calendar 2018 の 12/15 用に書かれた記事です。

あらすじ

このポストではプロダクトマネージャーの職務は例に漏れず多岐にわたり、それを正確に表すことは困難であり不毛である、というかなり浸透していて擦り切れた話をいじっていこうと思います。
記事の文末には、プロダクトをマネジメントするにあたって組織で整理すべき網羅的なタスクマップ、その素材となるアンケート があります。アンケートデータは全開示していますのでぜひご回答ください。

今年の PM Conf 2018 から感じるPMの急激な増加傾向

今年の Product Manager Conference 2018 は600名を超える参加者で大変盛況だったと聞いております。2017年の同カンファレンスの動員は300名くらいだったかと思いますので、"プロダクトマネージャー" が急激に注目を浴びたか、または元から認知はしていたプロダクトをマネジメントするべき環境にいる方々が実際にアクションを起こし始めたのでありましょう。

かく言う私も早割で予約して参加させていただいており、参加者の方々(つまりプロダクトをうまくマネジメントしたいと考える方々)となるべく積極的にお話をさせていただいておりました。その中での悩みや課題はざっくり区別すると、

1) プロダクトマネージャーとしての業務経験のスキル不足についての課題感
2) プロダクトマネージャーの役割が組織的に浸透・理解されていないことによる課題感

の2つであります。いずれもこれから個人として組織としてPM業務を高度化していく過程での課題と見受けられます。(私もです)

課題別の対策アプローチ

前者1)のスキルなどの具体的な課題についてはこのポストでは避けまして、2)の組織的な浸透の課題感について触れていきます。

1)の課題感に対して対策は、実践として叩き上げられ汎化された理論やプラクティス、事例などが集合したものでみなさんが日常読んでいる記事や書籍から外部情報を参照するなど演繹的なアプローチで方法を得るのが有効と考えられます。

問題は2)の課題感ですが、これに関しては自社環境における具体個別の課題になりますので他社組織構造が見えない以上、自らの組織で独自に紐解かないことには外部情報を演繹的に持ち込もうとしてもなかなか「いい感じの対策」が見当たらず、結果として「(理想と比較して)ウチの組織はPMに関して理解がなくパフォーマンスが出せない、高みを目指しずらい」という吐露に繋がるようです。

ここでの "組織的な浸透の課題" には、チームビルディングなどのアプローチで解決されるチーム内にある課題も当然ありますが、もう少し組織に根ざした 7Sのモデル で言うところの Structure(組織のヒエラルキーを含むストラクチャ)や、System(制度やシステム)という別の世界の課題として一旦区別します。


自己インプットと対策のズレの可能性

この国内でのプロダクトマネージャー黎明期による増加傾向(体感)の中で、どこかでロールモデルを求めたり、バイブル的な専門書を掲げたりするようなことが、その特性を全部入りにした完全なるプロダクトマネージャーという偶像を群衆の中に作り上げる結果になっていないか、それによって誤った手法で自己研鑽を重ねていないか省察する機会がありました。

そこで「個人・チームの能力」とそれが活動する「会社組織の機能性」の組み合わせでどのような成果が出るかを分けてみました。下図をごらんください。

画像1
目指すべきゴールは明らかにAですが、ここでは縦にリフトするだけでなく右側にシフトするような活動を、惰性や人任せでなく自ら目標を立て進捗させられているか?が重要であります。

つまり、2)の課題を持つ組織においての対策は、How to PM という類の個人・チーム能力向上に効果のあるインプットの他に、組織そのものを変える現実的なアクションを自ら起こさなければ、事業において高い Outcome(成果)は期待できない と考えます。


PM活動で成果を最大化するための組織環境

とはいえ、会社組織の構造を途中から一部でも変えることはボトムアップのアプローチでは難しいでしょう。既存の組織にはこれまでの体験から生まれた文化ともいえる慣性が働いていますし、それが古くからある大企業である場合は困難を極めると思われます。
私のケースだと、2)の課題への対策として以下のようなことを試しました。

・既存組織の一部をいくつかに分け、再構築する企画を提案し実施した
・自社でプロダクトを管理する業務の具体的な定義を作成した

これらのことができたのは運良く環境に恵まれていたのだと思いますが、特に後者は状況で変化のあるものなので、常に状況と状態を見極め改善を比較的短いサイクルで繰り返します。(と言っても年2回程度)


非PMとの連携から自社PM業務を整理する

私の組織は機能別(職能別)組織です。事業別組織の方の景色からは想像しずらいかもしれませんが、特定の業務効率が高まる一方で、それ以外の業務についての理解度はどうしても低くなる性質があります。
そこを組織横断型のプロダクトマネジメント業務として一連の活動をつなぎ合わせて価値を導出するのですが、その際に Pragmatic Marketing Framework というフレームワークを利用し、組織内業務を広域に俯瞰し相互の連携方法の合意形成を励行する、ということを実施しています。

これがPMとしての様々なステークホルダとのコミュニケーションの整理に役に立つのではないかと考えました。

画像2

存在として新しい訳ではないので知っている方は今更感があるかもしれませんが、国外にいくつかあるプロダクトマネジメント界隈の業務コンサル組織といったところでしょうか。ビジネスストラテジ、プロダクトマネジメント、プロダクトマーケティングの37個のブロックからなる広範のフレームワークを提供しています。
それぞれどのような定義なのかは本家サイトか、もしくは こちらのポスト(実用的マーケティングフレームワーク 37項目のメモをご覧ください。

このモデルの特性だけざっくり説明するとこういう構造のようです。

画像3


37個のブロックで自己診断

もうひとつ、Product Management Triad (By Pragmatic Marketing) というサブセットのような存在のモデルがあります。上記URLのブログ記事自体、若干古いのですが今も健在のようですのでついても触れておきます。

画像4

37のブロックは上記のように3つに仕切られ区別されます。ブログ内では特に「Director, Product Strategy」「Technical Product Manager」「Product Marketing Manager」と区別され、それぞれの楕円が重なっている相互に業務連携をする領域のオーナーシップと実行業務の区別についても、組織内で解決すべき対象だと言及されています。

それらを踏まえたうえでの私の結論としては以下です。

組織内のステークホルダとの業務区別を明瞭にし、連携方法について合意を持つことをPMの初期的な目標に置くことが、組織でのプロダクトマネジメントと隣接する業務の理解を高め、事業的な成果を引き寄せる方法になる


このフレームワーク利用すべきである理由とまではいかないのですが、個人的には他職種との会話においては、プロダクトマネジメントトライアングルよりも使いやすそうな印象を受けました。(否定ではなく区別です)


例示 : とある PM の個人スコア

下記は実在しない想像のプロダクトマネージャーのスキルを Pramatic Marketing Freamework でスコアしてみたサンプルです。

画像5

画像6

この方の特徴は下記の2つのテクニカル・プロダクトマネージャー寄りのスキルを高次まで高めているようですね。それ以外にも周辺領域の関連する経験はおありのようです。素晴らしい。採用したいです。

Innovation | 市場優位性を活用した課題解決
組織の顕著なコンピテンシーを活用して、チームの創造的精神を市場問題の解決に集中させます。

Requirements | 製品要件と優先度
適切な製品を構築できるように、ペルソナとその問題点を明確にし、優先順位を付けます。

一方でマーケティング、ビジネススキルは十分に手にいれてはいないようです。このPMはこの後どのようなキャリア方針を考えるのでしょうか?キャリア戦略のためのひとつの羅針盤のように用いることもできそうです。
ちなみに私のところでは組織能力を計測する目的でチームにも適応しています。


最後にアンケート

上述した プロダクトマネージャーのスキルマップ のように多くの人に匿名のアンケート形式で37の質問に答えてもらえたら、そのデータから国内プロダクトマネージャーのスキル傾向が見えるのではないか?それは私だけでなくみなさん興味あるのではないかと思いアンケートを用意しました。
ご興味ある方は回答いただくと面白データが手に入るかもしれません。
回答いただく過程で漏れなく集計データが見られるようになっています。


事業関連のタスクとして広範の定義であるのでプロダクトマネージャーのみならず、プロダクトオーナーやプロジェクトマネージャー、アカウントセールス、カスタマーサクセスマネージャ、マーケター、事業戦略、場合によっては経営企画やエグゼクティブにも回答いただけるとより厚みのあるデータになるかもしれません。

2019/11/13 追記 : スキルマップアンケート結果について こちらの記事 に公開しました

参考文献 | References

Pragmatic Marketing
Market Problems 参考 : https://pragmaticmarketing.com/tuned-in/steps
Win/Loss Analysis 参考 : http://pragmaticmarketing.com/resources/winloss-analysis-checklist-for-product-managers
Distinctive Competencies : https://pragmaticmarketing.com/resources/webinars/discover-your-distinctive-competencies-with-buyer-interviews
Competitive Landscape 参考 : https://pragmaticmarketing.com/resources/articles/doing-market-analysis-easy-right
Competitive Landscape 参考 : https://pragmaticmarketing.com/resources/articles/managing-complex-competitive-environments
Asse Assesment 参考 : https://cdn.agilitycms.com/pragmatic-marketing-v2/Framework-Files/AssetRegistry.pdf
Market Definition 参考 : https://www.pragmaticmarketing.com/resources/webinars/is-that-new-market-segment-right-for-you

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?